テーマのある旅
京都・正寿院の天井画

静寂な空間で芸術に触れる旅 寺社で現代アートを楽しむ

静寂な空間で芸術に触れる旅 寺社で現代アートを楽しむ
お寺や神社は、昔から画家たちが神仏に捧げるために描いた襖絵や天井画などが奉納され、美術品が集まる場でした。そうした歴史もあり、今では現代アーティストによってそれらが生まれ変わったり、新しい作品が誕生したりしています。視聴環境が整う厳かな寺社仏閣でアートを鑑賞する、新たな旅をしてみませんか。
Text:YOSHIE MATSUO(RUNS)

京都府宇治田原町

猪目窓からは春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪と移ろう四季の景色を楽しめる
猪目窓からは春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪と移ろう四季の景色を楽しめる

正寿院

「則天の間」は神仏を祀っていないので、横になっても問題ないのだそう
「則天の間」は神仏を祀っていないので、横になっても問題ないのだそう
4枚の舞妓の画は四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)の横にそれぞれ描かれている
4枚の舞妓の画は四神
(青龍、白虎、朱雀、玄武)の横に
それぞれ描かれている
住所/京都府綴喜郡宇治田原町奥山田川上149
拝観時間/9:00~16:00
休/12/26~1/4、4月第3日曜日、8/17
※その他、行事などにより変動あり
アクセス/電車:京阪宇治線宇治駅から車で約30分
車:新名神高速道路信楽ICから約30分
電話/0774-88-3601

伝統的文様の窓と天井画

およそ800年前に創建された正寿院の客殿には、心を落ち着けて鑑賞できる「則天の間」があります。伝統的なデザインを活かした窓に加えて、2017年3月には、構想から5年の歳月をかけ描かれた天井画が完成しました。まず目に入ってくるのは、ハート型を思わせる、日本の伝統的デザイン「猪目(いのめ)」の形をした猪目窓です。猪目は、約1400年前から厄除けや福を招く意味を込め、寺社などの建築装飾として使われてきました。猪目窓から、天井に目を向けると、ツバキや桃、竹の道など、花と日本の風景をテーマに描かれた160枚の画が飾られています。これは、300年前に描かれた本堂の天井画の復興として多くの日本画家によって描かれました。この中には、舞妓の春夏秋冬の装いを描いた4枚の画が隠れているので、寝転んで探してみて。

正寿院の客殿。天井画や猪目窓も撮影が可能
正寿院の本堂。
江戸時代に描かれた種字曼荼羅(まんだら)天井画がある

滋賀県大津市

比叡山延暦寺

「一文字狸」の伝説をモチーフに描かれた鬼太郎と延暦寺に伝わる大狸
「一文字狸」の伝説をモチーフに描かれた
鬼太郎と延暦寺に伝わる大狸
厳しい戒律を守るために幽霊になった慈忍和尚の姿と鬼太郎たちが描かれた「一つ目僧」
厳しい戒律を守るために幽霊になった慈忍和尚の姿と
鬼太郎たちが描かれた「一つ目僧」
©水木プロ ©TOYOWADO

妖怪とゲゲゲの鬼太郎のキャラクターの共演

10月12日~12月8日まで、比叡山延暦寺にまつわる妖怪と漫画『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターによる「ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展」が開催されます。会場は、迎賓館、延暦寺特別保存建造物として通常は非公開の大書院。大書院は洗練された和風建築で、各部屋の趣に合わせ、「豊和堂」のアートディレクター兼絵師・山田晋也氏と、友禅絵師・平尾務氏が描いた新作7点を含む、約20点の妖怪の日本画が展示されます。例えば西棟・にない堂では、新作の内の1点、「一文字狸」の伝説をモチーフに、大狸と鬼太郎が描かれています。この画は、真っ白な眉毛を一文字に引いた大狸の忠告を聞き、仏道修行のために千体の狸の彫刻を完成させた修行僧の伝説を描いています。同じく、東塔・総持坊では、一つ目・一本足の慈忍和尚と鬼太郎とねずみ男の姿が描かれた新作の日本画「一つ目僧」が登場。この画は、里へ酒を買いに行こうとする僧たちを懲らしめる場を描いたものです。延暦寺に古くから伝わる妖怪と、鬼太郎のキャラクターの共演を楽しみましょう。

比叡山延暦寺にまつわる妖怪と『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターたちが描かれた絵巻物
比叡山延暦寺にまつわる妖怪と『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターたちが描かれた絵巻物
住所/滋賀県大津市坂本本町4220
会期/<前期>10月12日(土)~10月31日(木)
<後期>11月6日(水)~12月8日(日)
拝観時間/10:00~16:00(受付は15:30まで)
休/無休
拝観料/大人1,000円(拝観料以外に延暦寺巡拝料が別途あり)
アクセス/電車:京阪石山坂本線坂本比叡山口駅からバス、
比叡山坂本ケーブル、徒歩で約25分
車:名神高速道路京都東ICから約40分
電話/077-578-0001
大書院には枯山水の庭があり、その下には琵琶湖が見える
大書院には枯山水の庭があり、眼下には琵琶湖が見える

茨城県笠間市

アートギャラリー「桜林館」では年に4回ほど企画展が開催されている。次回は10月20日から現代彫刻家の棚田康司氏の個展
アートギャラリー「桜林館」では年に4回ほど企画展が開催されている。
次回は10月20日から現代彫刻家の棚田康司氏の個展

常陸国出雲大社

境内に併設されたアートギャラリー

境内の建物をリニューアルして造られたアートギャラリー「桜林館」では、“神社で発見・感動 アー!とプロジェクト”と題し、過去・現在・未来へと続くジャパニーズスピリットにあふれた芸術品を展示・販売しています。さらに2020年3月頃まで、境内にある蔵「林彩館」を展示会場兼アトリエとして利用し、制作から展示までを特別公開する「モクモクフー ひたちのくにのもりのなかまたち」を開催。絵画や立体作品を制作する伊藤遠平氏により、常陸国出雲大社周辺に広がる豊かな自然や、森に生息する生き物たちからイメージされた物語を、平面や立体作品として制作し、蔵や境内に展示しています。制作と展示が同時に進行しているため、足を運ぶ度に新しい作品に出合えるでしょう。実際の製作現場を見られる貴重なアートギャラリーかつ、神社の境内という珍しいコラボレーションを体験する1日を。

拝殿の正面に掛けられている大しめ縄は、長さ16m、重さ6tと、こちらも見物
拝殿の正面に掛けられている大しめ縄は、
長さ16m、重さ6tと、こちらも見物
秋田の豪農畠山家の米蔵として使用していたものを譲り受け、移築した「林彩館」
秋田の豪農畠山家の米蔵として使用していたものを
譲り受け、移築した「林彩館」
今後制作されたキャラクターたちは、同社のイメージキャラクターとしてグッズなどでも登場予定
今後制作されたキャラクターたちは、同社のイメージ
キャラクターとしてグッズなどでも登場予定
住所/茨城県笠間市福原2006
参拝時間/8:00~17:00
休/施設により異なる
アクセス/電車:JR水戸線福原駅から徒歩約11分
車:北関東自動車道笠間西ICから約5分
電話/0296-74-3000
おみくじは全部で30種類以上
おみくじは全部で30種類以上
以前は手水として利用されていた「かない鯉」だが、多くの人が自然と手水で手を合わせたことから信仰が生まれたそう
以前は手水として利用されていた鯉の銅像「かない鯉」だが、
多くの人が自然と手水で手を合わせたことから信仰が生まれたそう
ピンク色の鯉が描かれた、ハート型の絵馬も人気
ピンク色の鯉が描かれた、ハート型の絵馬も人気
住所/兵庫県神戸市中央区北野町3丁目12
参拝時間/7:30~17:00
アクセス/電車:JR神戸線三ノ宮駅から徒歩約20分
車:阪神高速3号神戸線生田川ICから約11分
電話/078-221-2139

兵庫県神戸市 神戸北野天満神社

斬新アートの恋みくじで
恋愛成就祈願

合格・学業成就祈願だけでなく、恋愛成就の御利益を授かれるともいわれている神社です。境内には手水の鯉の銅像があり、鯉に水をかけて恋を祈願すると願いが叶うと信じられ、“かない鯉”と呼ばれ守られています。また、この神社ではインパクトのある恋みくじが引けます。黒のゴシック体の文字とインパクトのある言葉の作品で知られる、現代アーティストのイチハラヒロコ氏のおみくじです。吉凶などは書かれておらず、真っ白な紙に「すきなら好きと、言えよ。」などといった、恋愛に対する直球の一言が。あいまいな表現よりも、真っ直ぐな言葉にアドバイスを求めることができると人気です。かない鯉で祈願をして、覚悟を持って、恋みくじを引いてみては。

境内の中央には舞の奉納や神前挙式などが行われる拝殿がある
境内の中央には舞の奉納や神前挙式などが
行われる拝殿がある