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夜遊びも旅のカタチ 恵比寿 NIGHT OUT with カジヒデキ×北山雅和

カジヒデキが恵比寿での
夜遊びを提案する後編は
90年代からこの街で遊んできた
仲間との対談でお届け。
「渋谷系」全盛期の渦中に出会った
グラフィック・デザイナー北山雅和とカジヒデキが
渋谷から少し離れた恵比寿に集合した夜のこと。

撮影/倭田宏樹 取材・文/小林未亜

Vol.2「talk」
恵比寿東公園

90年代に出会った仲間たちで
集まっていたのが恵比寿

北山:出会ったのは93年ぐらいだよね。カジくんがまだブリッジをやっていて、僕がコンテムポラリー・プロダクションでデザイナーとして働いていた頃。僕がコーネリアスの担当になることが多くて、小山田(圭吾)くんつながりで紹介してもらったんだっけ。

カジ:そうだね。その時は一緒に仕事はしてなかったけど、小山田くんとかに付いてコンテムポラリーに行ったりしてた。代官山にあった頃だっけ?

北山:当時は中目黒。トラットリア(ポリスター・レコード内にあったコーネリアス主宰のレーベル。ブリッジが所属)とコンテムポラリーがすごく仲が良くて、打ち合わせと称して、よく夜一緒に飲みに行ったりしてたね。まさにこの界隈で。

カジ:トラットリアが恵比寿にあったからね。

北山:よく遊ぶようになったのはカジくんがソロになってからかな。カジくんが「GREEN ROAD」のジャケットデザインを指名で僕に頼んでくれて、実はそれが独立のきっかけにもなっているんだけど。

カジ:そうだね。セカンドアルバムの先行シングルを北山くんにやってもらって。

北山:98年に独立した頃から代官山に住んでるけど、トラットリアが恵比寿で、当時はコーネリアスの事務所が目黒区青葉台にあったから、やっぱり中目黒とか恵比寿あたりがよかったんだよね。それで見つかったのが代官山。以来この界隈でご飯食べたり、打ち合わせしたり遊んだり。カジくんも恵比寿に一時期住んでたよね?

カジ:ちょっと白金寄りの恵比寿だったけど。あとは中目黒だったり。やっぱり恵比寿が一番遊びに来やすいというか、みんなが集まりやすかったよね。

恵比寿 NIGHT OUT Vol.2「Talk」with カジヒデキ×北山雅和
フットニック恵比寿店(スポーツバー)

高校時代のカジ少年も憧れた
大人の先輩がゆっくりする街

北山:今も髪切ってもらってる人が一緒だよね。

カジ:代官山の「Liike(リーケ)」ね。

北山:実はさっき切ってきたんだけど、そこでも恵比寿の話になって、昔は“いなたい”部分があったなって話してた。東口なんて、ガーデンプレイスができる前はビール工場しかなかったよね。暗くてうらぶれた感じで(笑)。

カジ:その時代に恵比寿のデザイン系の専門学校に通ってたけど、周辺に3畳くらいのアパート物件とかあったもんね。でも20歳ぐらいの頃を思い出すと、ヴィヴィアン・ウエストウッドもあったし、クードゥピエってブランドとか、マチルド イン ザ ギャレットって雑貨屋さんとか、恵比寿~代官山のラインは昔からおしゃれなお店が点在してたよね。

北山:個性のある独立系の店がけっこうあったかもね。

カジ:気分的にはさ、ロンドンのキングス・ロードみたいな感じ。こじつけだけど(笑)。

北山:そういう話に持っていく(笑)?

カジ:イギリスが大好きだから(笑)。

北山:確かに、「ハリウッドランチマーケット」系列の店が点在していたり、個性的な店が並んでる感じが駒沢通りから代官山の旧山手まで続いてて、大人な街って感じがあったね。カルチャーを分かってらっしゃる先輩が、ゆっくりする時に使う街みたいな。代官山に「Bijin」ってヘアサロンがあって。

カジ:あるね。細野(晴臣)さんがそこで髪切っているって情報を、高校の時に雑誌の「宝島」とかで読んで、「絶対Bijinで髪を切ろう」と思って20歳の時に切りに行った(笑)。

北山:おお、すごい。勇気いるでしょ。

カジ:すっごい怖かった(笑)。でも実際、代官山で細野さんとかが歩いてたりするのを見かけたりしたな。だからポリスターが恵比寿にできてよかったなあってすごく思った。

恵比寿 NIGHT OUT Vol.2「Talk」with カジヒデキ×北山雅和
恵比寿 NIGHT OUT Vol.2「Talk」with カジヒデキ×北山雅和

「渋谷系じゃなくて恵比寿系」
主流に反発した者たちが、ここへ

カジ:94、95年くらいに「渋谷系」と言われてたけど、僕らは恵比寿に集まっていたから、トラットリアのみんなで「僕たち渋谷系じゃなくて恵比寿系だよね」ってよく話してたな。それにしてもみんな仲良かったね。ミュージシャンもレコード会社のスタッフも北山くんとかデザイナーの人とかも。

北山:音楽カルチャー周りがみんな大好きだから。洋服もデザインもアートも飲食も含めて。みんな働いてお金貯めて、ロンドン行って、遊んで、ライブ見て、レコード買って、サッカーの試合見て、帰ってきてっていう、まあ同好会みたいなもの(笑)。

カジ:本当にみんな趣味がすごく似てるっていうか、ロンドンがすごく好きでね(笑)。

北山:聞いてる音楽からサッカーのチームまで、だいたい共通言語が多い人たちの寄り合いみたいな感じというかね。僕らとしては当然だと思ってたけど、割と普通のコースを歩んでいくとたどり着けないところで。ちょっと物好きな人が、だんだんはじかれて集まってきた場所みたいな感じ(笑)。

カジ:(笑)。

北山:渋谷辺りで華やかにアメカジファッションを着こなして遊ぶ、“渋カジ”と言われた当時のメインストリームを行く者たちに対するカウンターだったよね。

カジ:確かに。

北山:だからちょっとひねくれてる。メインストリームに対して「分かってたまるか」って思っているような人たちが、渋谷系って呼ばれている人の中には多かったというか、割とこのへんに集まってたね(笑)。

カジ:そうそう(笑)。だから恵比寿なのかな。渋谷とか新宿じゃなくて。

北山:ちょっと斜に構えてる感じがね。

恵比寿 NIGHT OUT Vol.2「Talk」with カジヒデキ×北山雅和

時代と共に街のありようが変遷する中
ずっと残ってほしい店がある

北山:この店(フットニック)も、高田馬場から恵比寿に移転(2001年)してきた頃からよく通ってたよね。

カジ:僕らサッカー好きが集まってね。夜中に海外の試合をリアルタイムで見て盛り上がったり、このフィッシュ&チップスを食べてはUKの音楽やカルチャーの話をしたり。

北山:カジくん、フィッシュ&チップスが冷める。僕は(モルトビネガーを)ドボドボかける方だから、好きなだけかけていいよ。

カジ:フィッシュ&チップスをこうやって本場に近い形で食べさせてくれる店って、日本にあまりないよね。食べやすく小ぶりになってたりして。

北山:イギリスだと魚がさらにでかいんだよね。

カジ:こういう本場に近い感じもこの店のすごく好きなところだな。長く知ってるからかもしれないけど、恵比寿はなくなっちゃった店も多いよね。「ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME~」のPVを撮ったカフェもだいぶ前になくなっちゃったし。最近恵比寿の周りを歩く機会があったんだけど、洗練されたお店が出店し始めたんだなあってすごく感じた。

北山:ターゲットが変わった感じがするね。合コンがしやすい街みたいな感じ。今でも恵比寿横丁って“いなたい”飲み屋街があるけど、あのへんが割と昔の恵比寿っぽい感じがするね。

カジ:そうだね。すごく好きだったお店がけっこうなくなっちゃったから、このお店はなくならないでほしいな。

恵比寿 NIGHT OUT Vol.2「Talk」with カジヒデキ×北山雅和
カジヒデキ
PROFILE
カジヒデキ
シンガーソングライター。1989年に結成したネオアコースティック・バンド、BRIDGEのベースを担当。1992年にポリスター/トラットリアからメジャーデビューし、1995年に解散。1996年にソロデビューを果たし、90年代の“渋谷系”を牽引する存在に。2019年に最新作「GOTH ROMANCE」を発表。DJイベント「BLUE BOYS CLUB」主宰、ラジオのレギュラー・パーソナリティ、音楽フェス「PEANUTS CAMP」キュレーションなど、幅広く活躍中。
https://hidekikaji.net/
北山雅和
PROFILE
北山雅和
グラフィック・デザイナー。コンテムポラリー・プロダクションを経て1998年にHelp!設立。コーネリアス、cero、青葉市子、GEZAN、OKAMOTO’Sなど数々のアートワークを手がけ、音楽シーンにおいて幅広く活躍している。J SPORTSの「Foot!」など、サッカー番組のアート・ディレクション、ロゴ・デザインも担当。“TYPOGRAFFITI” シリーズとして制作、展示を続けているアクリル作品をグッズとしてオンラインストアで展開中。
https://whatishelp.com/

店舗情報

フットニック(スポーツバー)

住所/渋谷区恵比寿1-11-2 アサヒビル1F
電話/03-5795-0144
営業時間/15:00~25:00
※新型コロナウィルス拡大防止の為、営業時間をしばらくの間、下記の通りに変更いたします。
12:00~20:00(L.O. 19:00)
定休日/無休