今月のロマン秘湯

その湯にまつわる伝説やストーリーにロマンを感じる、温泉の旅。今回は、江戸時代さながらの景観が残る日本屈指の秘湯を訪れる。
SCROLL
今月のロマン秘湯 鶴の湯温泉 [秋田県]
鶴の湯温泉宿泊棟のひとつである本陣の前には、降り積もった雪でかまくらが作られる。夜になるとろうそくが灯され、ランプの光とともにあたりを優しい光で包み込む。
今月のロマン秘湯 鶴の湯温泉 [秋田県]
鶴の湯温泉の大露天風呂は、足元からポコポコと源泉が湧き出ているのが特徴。混浴だが白濁しているので女性でも入りやすい。夜は満点の星空が感動的。
今月のロマン秘湯 鶴の湯温泉 [秋田県]
角館武家屋敷通りは、この地を治めていた芦名(あしな)氏や佐竹北家に仕えた家臣たちの屋敷が並び、当時の城下町の面影を残している。冬は黒板塀の武家屋敷やシダレザクラが雪に覆われ、白と黒のコントラストが美しい。

歴史情緒あふれる面影と秋田藩主も愛でた
とろみのある湯に心癒される

秋田県と岩手県の県境にある標高1478mの乳頭山。その麓に湧く乳頭温泉郷の8つの湯のひとつが鶴の湯温泉です。開湯は江戸時代で、寛永15(1638)年に秋田藩主佐竹義隆が湯治に訪れ、警護の者たちの詰所として本陣が設けられました。現在、本陣は宿泊者用の食事処と5組限定の客室となっています。旅の道中で散策を楽しむなら、角館武家屋敷に立ち寄るのがおすすめ。多くの武家屋敷を実際に見学することができるので、江戸時代にタイムスリップした気分になれます。また、角館から鶴の湯温泉へ向かう途中には田沢湖があり、ここにある御座石神社は縁結びのご利益があると有名です。鶴の湯で最も人気が高い湯は、白湯が沸く混浴露天風呂です。青みがかった乳白色の湯にはとろみがあり、肌がつるつるに。陽が落ちて辺りが暗くなると、本陣の前に作られたかまくらにろうそくの灯がともされます。雪景色の美しい冬におすすめの秘湯です。
文/鈴木阿由美

名湯DATA

泉質/
含硫黄ナトリウム・カルシウム 塩化物・炭酸水素泉、ほか
効能/
慢性婦人病、高血圧 動脈硬化症など

周辺のおすすめ情報

田沢湖
田沢湖周囲約20kmのほぼ円形の湖で、水深は423.4mと日本一の深さを誇る。永遠の美貌を求めて龍になったたつこ姫伝説が残り、神秘的な瑠璃色の湖面が美しい。鶴の湯温泉より車で約30分。
御座石神社田沢湖湖畔に鳥居が立つ神社。神社名は、慶安3(1650)年に秋田藩主佐竹義隆が田沢湖を遊覧した際、腰をかけて休んだことに由来する。ご利益は美貌成就や縁結びなど。
御座石神社
角館歴史村・青柳家
角館歴史村・青柳家格調高い造りの薬医門を構えた武家屋敷。武器蔵、武家道具館、秋田郷土館など6つの資料館があり、約3万点の資料を展示。刀の展示や兜の着用体験なども行われている。鶴の湯温泉より車で約50分。
御狩場焼
御狩場焼鶏肉と季節の野菜などを山椒味噌で調理した料理。「狩りの場所」で「焼いて食べる」ことから「御狩場焼き」といわれ、角館城主・佐竹北家伝承の味がいただける。角館を訪れたら必食。

湯を愉しむお宿

4種類の源泉が堪能できる
歴史を受け継ぐ名宿
鶴の湯温泉
鶴の湯温泉
乳頭温泉郷の中でも最も古い歴史をもつ宿。山に囲まれ、茅葺屋根の本陣や杉皮葺きの湯小屋が建ち並び、秘湯ムードが漂います。秋田藩主の警護の詰所として使われた「本陣」は、5組限定の客室となっていて宿の一番人気。宿泊棟はほかにも「1~3号館」「東本陣」「新本陣」があり、客室は純和風の素朴な和室です。温泉は、敷地内から湧き出ている白湯、黒湯、中の湯、滝の湯の4つの源泉を引き入れ、女性が入れる浴槽は8と豊富(冬期)。夕食は、岩魚の串焼きや山菜料理、名物「山の芋鍋」が温かな囲炉裏で振る舞われます。地元・神代産の山の芋の団子やきのこ、山菜がたっぷりと入り、特製味噌で仕立てた「山の芋鍋」は絶品です。

住所/秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50
電話/0187-46-2139