雪がほとんど降らず雨の少ない羽曳野市はぶどうを育てるのに適した土地で、その昔から栽培が盛んに行われてきました。大阪育ちのデラウエアは全国でも3位の収穫量を誇り、大阪産(もん)としても認知されています。今回は、羽曳野市でワイナリーを構えるお二人にお話をうかがいました。
文/大嶋恵理(Penseur)
大学を卒業後は、日本酒類販売株式会社を経て2005年に河内ワインの前身である金徳屋洋酒醸造元に入社。2009年より株式会社河内ワインの代表取締役を務める。4代目を継承すると、ライトユーザーをターゲットに据えたブランディングを行うなど、顧客のニーズを敏感に察知して河内ワインの魅力を広めている。
羽曳野市駒ヶ谷にある河内ワインには、顧客を飽きさせない工夫が散りばめられています。「うちのワイナリーツアーは案内人が指名できる」と教えてくれた金銅重行さん。ワインについて熱心に勉強したい人もいれば、ただ飲み比べを楽しみたい人もいるというニーズをキャッチし、ツアー内容と見学客のミスマッチを回避するためにこの制度を導入したそう。「フルタイム・パートタイムといった役職にかかわらず、やる気がある従業員には畑を割り与えていて、並行して案内業務も任せています。日頃から自分が手入れする畑を見せて案内するので自然と内容も濃くなりますね。さらに再指名をもらうためみんな工夫する。案内人によってツアー内容に個性が出るので、何度来ていただいても楽しめるはずです」。
「創業当初は大手の注文に応じてバルクでワインをつくり販売する桶売りをしていました。しかし、2000年にこの販売契約が白紙に。桶売りに頼りきりで直売が占める割合はわずかだったので、途端に窮地に陥りました。そこで、父が『まずは直売を頑張ろう』と買い物客を招くために、この河内ワイン館を建てました」。
2005年からは金銅さんも経営に加わり、商品のラインナップからスタイル、取引先まですべてを見直し変更。畑担当制やツアー案内人の指名制もこの流れで新たに導入された取り組みでした。
河内ワインのフラッグシップ・レンジのラベルも刷新しています。二上山から昇る太陽や月をモチーフにしたシックなデザインで「どのような時間帯に飲んでほしいかがひと目でわかるように」と工夫が凝らされています。金銅さんイチオシの透明感あふれる「金徳葡萄酒 デラウエア」は、口当たりがすっきりしていてフレッシュな香りと酸味が特徴の白ワインです。和食との相性も抜群なので、ぜひご賞味ください。
ぶどう農家に生まれ、幼少期より栽培に心血を注ぐ両親の背中を見て育つ。1934年に関西を襲った室戸台風をきっかけにワイン醸造を開始。この年に創業した飛鳥ワイン株式会社の3代目を継承する。ぶどう栽培・ワイン醸造歴40年以上のスペシャリストで、苗木や堆肥づくりだけでなく、ワインラベルのデザインも自ら手がけている。
明治時代より続くぶどう農家に生まれた仲村裕三さんは、現在飛鳥ワインの代表を務める3代目です。もとは生食用のぶどうを育てていた農家がワイン醸造を始めるに至ったきっかけは、1934年に関西を襲った室戸台風だったそう。「強風の影響でぶどうの木はほとんどがなぎ倒され、収穫を控えたぶどうは落下して傷ものになってしまった」とのこと。売り物としての出荷が難しいぶどうを救済するため、ワインづくりを始めました。
安心で安全なワインを届けたいとの思いから、飛鳥ワインでは畑から出たものを畑に戻す循環型農業に取り組んでいます。堆肥も市販のものではなく自家製で、剪定作業で出た枝、ぶどうを絞った後に残る種や皮を原料に、1年かけて生成したものを使用します。これが「ほこほこの理想的な土壌に仕上げる秘訣で、根の育成にも効果的」なのだそう。土壌づくりから妥協がありません。
「ワインの良し悪しはぶどうのできで決まる」と語る仲村さんのおすすめワインは「飛鳥デラウエア2021」。自社農園100%のデラウエアをあえて完熟する前に収穫することで、フレッシュな酸味が特徴のフルーティーなワインに仕上げています。定期的に開催されるワイナリーツアーでは、ほかにもさまざまな種類のワインが楽しめるので、ぜひ飲み比べを。
大阪市内からほど近く、最寄り駅からは徒歩圏内とアクセス抜群。ぶどうや醸造への知識を深めて、大阪の特産ワインを堪能しましょう。