旅好きの旅はひと味違う あの人の旅プラン 東出昌大(俳優)

旅先では、地図を見ないで歩く時間を大切にします

旅への感性は、人それぞれ、価値観で異なるもの。
こだわりあるあの人ならばどんな旅をするのだろう――。
仕事の話を交え、印象深い旅とおすすめの旅先を伺います。
今回は、映画「Winny(ウィニー)」で、
三浦貴大さんとともに主演を務めた東出昌大さん。
キーワードは「休む」。
おすすめの旅先から旅プランも作成しました。

取材・文/小松孝裕(エンターバンク) 写真/山下陽子

東出昌大

東出さんは仕事の息抜きに旅行に行きますか?

旅行はもともと大好きで、コロナ禍になる前は、国内外問わずいろいろなところに行ってました。旅行に行った時に気をつけていることがあって、“休む時間を作る”“地図を見ずに歩く時間を作る”“なるべく土地のものを食べる”という3つです。
例えば、「ボルネオ島に行く」「川下りに行く」「オラウータンを見る」などイベントを詰め込んでしまうと疲れて、せっかく楽しむために来ているのに、どこかで楽しくなくなってしまう。なので、5日間行くんだったら、2~3日はゆるく楽しむ時間を作るようにしてます。
いまはマップアプリがあって、初めての場所に行っても道が分かりますが、スマホからの情報ではなく、街の風景を見ながら歩いていると、なんでこういう道のつくりになったんだろうとか、この道の先に何があるんだろうと行ってみた先に川があったとか、その街がよりわかるようになります。だから、少なくともホテルの周辺は地図を持たずに歩くようにしています。
あとは、現地でおいしいとされているものは必ず食べるようにしています。ニューヨークはいろいろなものがあるけど、日本でも食べられるようなものもあるので、せっかく旅行に来たのだから日本でも食べられるものは避けて、ニューヨークの人たちが好きなホットドックを食べてみる。おいしかったらそれで問題ないですし、自分に合わなかったら、合わなかった理由を考えてみるのも、自分自身を知るという意味で楽しいです。

日本ではどこによく行っていましたか?

国内でよく行っていたのは沖縄です。以前に「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK総合ほか)という番組で、「美ら海水族館」がある本部町に行かせてもらったんです。その時に、地元の人たちと仲良くなってそこから毎年行くようになりましたね。あとは、本部町からフェリーで30分くらいのところに伊江島という離島があるんですけど、ここの島がとてもよくて、お気に入りです。そこで流れる時間がとても心地よいんです。

東出さんは現在、山暮らしをされているそうですが、山暮らしをして、よかったなって思うことはありますか?

俳優という仕事をしていると、お芝居をしていたり、ほかに人にこう思われたいなとか気にして、気づかないうちにどこかスイッチを入れてしまっている部分があると思うんです。ただ山で暮らしていると、人が少ないので、つくろわなくてすみます。休むときはしっかり休んで、仕事の時にスイッチを入れるといったように、休みと仕事の切り替えがしやすくなったかなって思っています。

東出昌大

仕事といえば、映画「Winny」で、三浦貴大さんとともに主演を務められました。

事件そのものを存じ上げなかったので、僕が演じた金子勇さんのことも知らなかったんです。ただ、「Winny事件」で逮捕され、裁判で2回有罪判決。最高裁で無罪となったと知り、最初は金子さんに対してどこか懐疑的な思いがありました。
でも台本を読んだり、監督と話をしたりしていると、最初に抱いた印象とはまったく異なり、金子さんは本当にプログラミングのことばかり考えていた人なんだなと思うようになったんです。自分が作ったプログラムが、著作権乱用で悪用されるなんて考えてなかったんだろうなと感じたんです。

役作りはどのように作り上げていったのでしょうか?

実際に金子さんの裁判を担当されて、今作では三浦さんが演じている弁護士の壇先生や生前の金子さんを知る弁護士の方、金子さんのお姉様などとお会いして、いろいろなお話を聞いていくうちに、自分の中で“金子勇”ができあがっていきました。童話の「ヘンゼルとグレーテル」ではないですけど、目の前に金子さんが残してくれた“思い出”という名のお菓子があって、それを一つひとつ拾い上げて、金子さんについて知っていくというのはすごくおもしろかったです。とてもポジティブな気持ちで、“金子勇”という人物を作り上げることができたと思います。
ただ、今回はプログラミング用語や法律用語が多かったり、プログラミングに関しても、それが当時どれくらい革新的なことだったのかというのがわからないので、ほかの作品と比べると座学の時間が多かったかなと思います。

作品を通して、金子さんはどのような方だったと感じていますか?

金子さんの生家に壇先生と金子さんのお姉様と一緒に行った時に、金子さんが子どものころにパソコンに触りたくて通った電気店を教えてもらいました。作中にもエピソードとして登場するのですが、実際は生家から車で30分くらいかかるところだったんです。夏の暑い日も、冬の寒い日も、金子少年はマイコンに触るために自転車を飛ばして通っていたそう。プログラミングを試したいという純粋な気持ちだったと思うんです。そして、その気持ちのまま大人になったような、プログラミング愛が深く、純真無垢な方だったんだと思いますね。

本作でぜひ見てほしいというポイントを教えてください。

ドラマとかだと、法廷のシーンがデフォルメされたりもしますが、本作では壇先生がずっと横について指導してくださったので、すごくリアルに描かれています。あとは、この映画の中で、実際の金子さんが出てきます。そこで語られていることがすべてなんだと僕は思いました。この作品は、弁護団側にたった金子さんの物語。これが警察や検察側からだとまた違った見方になり、真実は複雑なんだと思います。そんな複雑なことを考えるきっかけになっていると思うし、エンターテインメントとしても面白い作品になっているので、ぜひ見て頂けたらと思います。

東出昌大

東出さん おすすめの旅先

沖縄県の伊江島 沖縄県の伊江島

沖縄県の伊江島

離島だから島から車を持ち出せないこともあって、カギを挿しっぱなしで車から離れたりするんです。島の人同士が知らない仲ではないので、邪魔だったら勝手に動かしたりするんですよ(笑)。最初はびっくりしたけど、島の人たちのそんなラフさが、とても居心地がいいなって思いました。

|DATA|
住所/沖縄県伊江村
電話/0980-49-3519(伊江島観光協会)
HP: https://iejima.okinawa/

おすすめ旅スポットを旅色コンシェルジュがプラン化

「沖縄ののんびり旅」
東出さんから、「お休みの日はゆっくりする時間も大切にしている」と聞き、おすすめの旅先・沖縄県伊江島を軸にした、のんびりとした2泊3日の離島旅をプランニングしました。伊江島の美しい自然や文化に触れつつ、島の食材を使った料理も楽しみ、観光しながらも、穏やかな「島時間」が過ごせるプランです。
映画「Winny」
Information

映画「Winny」

公開中

2002年、開発者の金子勇は、ファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発し、「2ちゃんねる」に試用版を公開。本人同士が簡単にデータをやり取りできることで、多くの人に使われるようになったが、その裏では映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、社会問題に発展していく。そんな中、開発者である金子が著作権法違反ほう助の容疑で逮捕されてしまう。そして、サイバー犯罪に詳しい弁護士の壇俊光が金子の弁護を担当することに。

監督・脚本/松本優作 出演/東出昌大、三浦貴大、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、阿部進之介、渋川清彦、田村泰二郎、渡辺いっけい、吉田羊、吹越満、吉岡秀隆ほか 配給/KDDI、ナナチカ
公式サイト/https://winny-movie.com/

東出昌大
東出昌大

1988年2月1日生まれ。モデルとして活動するなか、2012年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。同作で、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。連続テレビ小説『ごちそうさん』(NHK総合ほか)で人気を博す。以降、ドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジ系)をはじめ、映画や舞台などでも活躍中。