『色彩を持たない多崎つくると、
彼の巡礼の年』
完璧な友人だった男女四人は20歳の夏、なぜ僕を排除したのか――。36歳になった主人公は初めて苦い記憶と向き合います。過去の自分は救えなくても、強く信じることができる今を手に入れるため、彼は名古屋、そしてフィンランドへ。見たいものではなく、見なくてはならないものに向かう旅ってあるものです。世界的人気作家による魂の巡礼の物語で、学生時代の切ない想いを今も秘めている方におすすめ。
825円/文春文庫
『東京 古民家カフェ日和』
東京の古民家カフェに特化したガイドブック。どのお店も「ほんとに令和!?」と感動するほどノスタルジック。古い家が三軒合体した「上野桜木あたり」には昭和の路地の魅力が漂い、木造アパートを改修した押上の「SPICE CAFE」の植物に飲み込まれたような外観は童話に出てきそう。あきる野市の「小机邸喫茶室 安居」は文明開化の時代の円形階段が美しい。建物にじんわり沁みた時を味わう空間へようこそ!
1,650円/世界文化社
『京都 レトロモダン建物めぐり』
京都はレトロ建築の宝庫です。明治時代の小学校を改装した「ザ・ホテル青龍」をはじめ、教会建築で有名なヴォーリズが唯一設計したレストラン「東華菜館」、高さ5mの天井を誇る木造の「文椿ビルヂング」、青い照明に息を呑む「喫茶ソワレ」など、古都になじむ洋の魅力が満載です。エリア別に紹介されているので効率よく回れます。イラスト地図と、建築年、設計者、住所、営業時間などのデータ付き。
1,848円/メイツ出版
『Our Friend/
アワー・フレンド』
全米雑誌賞を受賞したエッセーが原作のこの秋1番泣ける映画。余命わずかの妻を夫と友人が支える愛と友情の物語。“余命モノ”としての涙を想定していたら、この映画は観るものを思わぬ感動の先に連れ出してくれます。だからこそ、悲しいだけではない柔らかな希望の日射しが……。こんな友達ほしい、なりたい。人との繋がりがますます大切なキーワードとなったこの時代、より響くものがあります。登場人物の切ない心情を包み込む、ザイオン国立公園の神々しいとさえいえる岩肌が作り出した壮大な自然の風景は圧巻です。
配給:STAR CHANNEL MOVIES
『建築学概論』
家を建てる行為は、愛を繋ぐ行為の暗喩。大学時代、建築学概論の授業で出会った男女。初恋はすれ違いに終わり、大人になり再会を果たすと、女は建築家となった男に自分の家を建てて欲しいと依頼します。永遠に終わらない「未完成の美学」が男女の仲にも生まれることを痛感した作品です。舞台となったのは、済州島という海に囲まれた小さな美しい島。2人の建てた家はカフェとして生まれ変わり、今でもファンの聖地に。リビングの大きな窓はまるで額縁、すぐ目の前に広がる海。私も訪れ、涙するほど感動しました。
『パンズ・ラビリンス』
これぞ映画の形をしたアート。アカデミー賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督による、1944年内戦下のスペインを舞台に、現実と迷宮の狭間で永遠の幸せを探す少女の姿を描いたダーク・ファンタジーです。クリーチャーと少女のビジュアルの不思議な懐かしさ、そして異世界という設定に説得力をもたせる強度をもつ映像世界。美しさと恐ろしさを行き来する、忘れられない体験が待っています。主人公の少女の魂の清らかさと瞳の輝きに魅せられて、心が洗われます。あのスティーブン・キングが「オズの魔法使い」以来のベストファンタジーと太鼓判を押した1本。