【日本で初めて認定されたアルベルゴ・ディフーゾ】 岡山の「矢掛屋 INN&SUITES」に行ってみた
岡山県矢掛町にある日本で初めて認定されたアルベルゴ・ディフーゾ「矢掛屋 INN&SUITES」。旅色LIKESメンバーのみねさんが滞在の様子を伝えてくれました。今注目の分散型ホテルの先駆けとなったアルベルゴ・ディフーゾの魅力とは?
目次
◆この記事を書いたメンバー
みねさん
遠出も近場も、1人で行くのも友達と行くのも、とにかく旅行が好き。おいしいものを食べたり、素敵なカフェにいったり、次どこに行こうかなぁと考える都内勤務の会社員。夢は旅行をしながら仕事をすること。
日本で初めてのアルベルゴ・ディフーゾ「矢掛屋 INN&SUITES」
旅色で初めて知った「分散型ホテル」。町中に点在する空き家それぞれに“フロント” “食事処” “客室”といったホテルの機能を分散させることで自然と町中へ出歩く仕組みになっている発想のことです。イタリア語で「分散型ホテル」を意味する「アルベルゴ・ディフーゾ」の中でも、日本で初めて認定されたのが岡山県矢掛町の「矢掛屋 INN&SUITES」です。
「普通の旅行と何が違うかわからないなら行ってみればいい」ということで岡山県矢掛町へ行ってきました。
今と昔が共存する矢掛町
倉敷駅から電車で約30分。矢掛町は、参勤交代が制度化されていた江戸時代に宿場町として栄えたそうです。2008年に大河ドラマにもなった「篤姫」も滞在したことがわかっています。
まるでタイムスリップしたかのような町並み。間口が狭く奥行きが深い町屋が連なります。ちょっとした小道も風情があります。
矢掛町矢掛の一部を矢掛宿といい、2020年に重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。江戸時代・明治時代以降の建築物が、時代の面影を残しながらカフェや資料館、ギャラリーショップに姿を変えて利用され続けています。
日が落ちると町にはオレンジ色の光が灯りだします。昼間の印象と変わった姿を目にすることができます。
宿場町ステイを体験
宿泊先は「矢掛屋 INN&SUITES」。参勤交代時に、大名一行が分散して滞在したという宿場町の在り方を楽しめる宿です。家族や友人たちとの宿泊におすすめの本館は、築200年以上の古民家を改装した建物です。他にも、温浴施設の「矢掛屋温浴別」、シングルルーム仕様の「蔵INN」など全部で6つの施設があります。
今回泊まったのは、2019年にできた宿泊施設「蔵INN家紋」。
チェックインは「あかつきの蔵」という建物で行います。分散型ホテル体験の始まりを感じる瞬間です。
客室名は、矢掛宿で実際に宿泊した各藩の名前になっています。今回案内されたお部屋は「浅野」で、両サイドは「黒田」「毛利」でした。
部屋の中はシンプルながらも必要最低限の設備は揃っています。一般的なビジネスホテルにあるユニットバスも完備。
別館の温浴施設に行こうと思っていたけど気が変わった、なんてことがあっても心配ありません。
チェックアウトは、追加費用がなければ鍵を箱に入れるだけです。
客室はいたってシンプルですが、これもまた町に出たくなるような仕組みのひとつかもしれません。
矢掛町を散策
荷物を置いて町に散策に出てみました。本陣通りと呼ばれる商店街は全長で1km弱。歩いて巡るにちょうどいい長さです。
夕飯にはまだ早い時間だったので、ひとまずカフェ「ポン ムヴァン」で休憩。古民家の佇まいからは想像がつかない洋風な雰囲気が漂います。店の中には、バイクの置物や写真が多く、ライダーの聖地にもなっているのだとか。
晩ご飯は、おいしそうな香りに誘われ「おこのみやき 大国屋」へ。目玉焼きがのった広島焼きをビールとともにいただきました。
お腹が膨れた後は、静かな部屋でゆっくりし、翌日の町散策に備え早めに就寝。
翌朝は昨年2021年に誕生した道の駅「山陽道やかげ宿」へ行ってきました。商店街での買い物を楽しんでもらうため普段は物販、飲食コーナーを設けていない珍しいタイプの道の駅で、月に一度マルシェを開催しています。訪れた日はたまたまマルシェ開催日。近隣の店舗がいくつか出店をしていました。
マルシェに顔を出した後は、かつて大名たちが宿泊していた「旧矢掛本陣石井家住宅」へ。朝いちは人が少なくゆっくり見学できるのでおすすめです。
コーヒーをいただきに「YKNOT COFFEE WORKS」へ。開店して約1年のお店は外観も店内も矢掛の街並みとは異なる現代的なカフェ。
ちなみにこの柚餅子は、篤姫が滞在中に大変気に入り爆買いしたそうです。当時、柚餅子を大量オーダーされた佐藤玉雲堂は、天保元(1830)年創業し現在も続く老舗です。全国菓子大博覧会で受賞されたお菓子もあり、お土産にぴったりな一品が揃っています。
「矢掛屋 INN&SUITES」がアルベルゴ・ディフーゾに認定された理由を考えてみた
お店や観光施設のほとんどは夕方17時前後には閉まります。飲食店もほとんどが19時には閉まり、予約がなければ夜は開店しないお店もありました。住民が生活リズムを崩さずに旅人をもてなしている様子から、観光客のために無理をしていないありのままの矢掛町を感じられます。歴史を感じる町並みを楽しんでいる途中には、江戸、明治、大正、昭和時代の建物を利用しかつての宿場町の体験ができ、地域の文化が代々にわたり大切にされていると気づかされます。
アルベルゴ・ディフーゾに認定されるためには10の決まりがあるようですが、今回は特に「ありのままの環境があること。直面する現実と、地域の文化が融合していること」を強く感じました。
「なぜ認定されたのだろう」「普段の旅行とどう異なるのか」という視点を持っての旅は、滞在先の町をもっと知りたいという気持ちにさせてくれます。決して大規模な宿場町はないですがここには書ききれない魅力が他にもたくさんあります。岡山県の矢掛町で分散型ホテルを体験してみてはいかがでしょうか。