九州のニュースター! 「ふたつ星4047」で大村湾をめぐる旅
三重県在住。愛読書は時刻表。暇さえあればリュックひとつで旅に出かけるLIKESライター・なおは、こよなく愛する鉄道を使って絶景巡りをしています。今回乗車したのは西九州新幹線開業と同時に長崎・佐賀に誕生した新たな観光列車「ふたつ星4047」。さて、どんな旅になるのでしょうか。
目次
西九州新幹線とともに生まれたD&S(デザイン&ストーリー)列車
こんにちは、なおです。今回、わたしは長崎県を旅しました。
ご存知の方も多いと思いますが、昨年9月23日に西九州新幹線が開業しました。これまで最速1時間50分かかっていた博多~長崎間の所要時間は最速1時間20分となり、観光都市長崎へのアクセスが一層便利になりました。そんな長崎エリアに新幹線と同時に生まれた新たなD&S列車※1があります。
※1 JR九州では、観光列車のことをD&S列車と呼んでいます
今回ご紹介するのは「ふたつ星4047」です。パールメタリックのボディに金色に輝く星々などの装飾が輝きます。
「ふたつ星4047」は佐賀県と長崎県の九州観光の2つの星を、キハ40系、キハ47系という国鉄時代から愛される2つの車両に乗って、有明海ルート、大村湾ルートの2つのルートの旅を楽しむことができることから名づけられました。デザインは九州のD&S列車ではおなじみの水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんです。JR九州では全九州をめぐる「36ぷらす3」というD&S列車もありますが、最近数字のついたネーミングに凝っているのでしょうか。
午前中は武雄温泉から有明海沿いの長崎本線を走って諫早(いさはや)、長崎まで向かう「有明海コース」、午後は長崎から大村、ハウステンボス、早岐(はいき)、有田を経て武雄温泉に向かう「大村湾コース」となっています。今回は「大村湾コース」を途中、早岐まで乗車します。
木のぬくもりの中、ソファーやカウンターで思い思いの時間を過ごせる名列車
それでは車内をご案内しましょう。1・3号車は普通車指定席で、旅のニーズに合わせた様々な座席が用意されています。長崎やハウステンボスなど沿線観光をするなかで利用する方も多いので荷物が多くなりがちですが、スーツケースなどを置けるスペースがあるのはうれしいポイントです。
2号車はソファーやカウンターテーブルが設けられたコモンスペース「ラウンジ40」。大勢で集いながら鉄道の旅を楽しむことができます。
ラウンジ40では地酒や沿線の名産品などが並ぶ売店もあります。今回わたしは見送りましたが、大村湾コース限定の「ママン・ガトー」の長崎スフレは車内で熱々で食べることができる一品です。 ※長崎スフレは事前予約限定です。
わたしはビールと日本三大珍味のひとつに数えられる“長崎のからすみ”をチョイスして席に戻りました。やはり長崎にきたらからすみ食べたいでしょう。地ビールがあったらなお嬉しかったんですが……。
みかん畑を眺めながら諫早へ
いよいよ大村湾に向けて旅の始まりです! 14:53「ふたつ星4047」は長崎駅を出発しました。駅員のみなさんにお見送りをしていただけます。
長崎本線は浦上駅から二手に分かれ、諫早駅との間を早く通過できるようにするためのトンネルの多い新線と古くからある旧線があります。かつて特急は新線を走っていましたが「ふたつ星4047」はゆっくりと旧線を回っていきます。旧線の方が景色が断然いいのです。平地の少ない長崎県、山の斜面には段々になったみかん畑が広がります。
車窓の向こうに海が見えてきました。長崎県の中部に広がる大きな湾です。静かな波が海岸に寄せることから古くから「琴の湖(うみ)」と呼ばれ親しまれています。
大村湾の静かな波に合わせるようにゆっくりと走ってきた列車は、15:30に諫早駅に到着し、15分間停車します。
諫早駅は西九州新幹線のすべての列車が停まり、大村や肥前鹿島、島原方面の列車が集まる交通の要衝です。雲仙観光のバスもここから出ています。昨年、諫早駅から島原へ旅をした際の記事を書いておりますのでぜひ。
陽光眩しい大村湾に沿って列車は進む
諫早駅から「ふたつ星4047」は北に進路を変え、大村湾沿いを進みます。左手の車窓からは陽光眩しい大村湾を望むことができます。今回は1年で1番日の長い“夏至”の時期だったため、まだ日が高いですが、冬至のころは日暮れ時に通ります。晴れた日は、列車から海に日が沈みゆく夕暮れ時の景色を望むことができます。
16:05、新大村駅に到着しました。新幹線の開業に合わせてオープンした新しい駅です。長崎空港に近く、「おおむらかもめライナー」という相乗りタクシーを使うと500円で空港まで行くことができます。サイトからの事前予約が必要ですが、かなり便利です。
ホームの向こうは海! 沿線ナンバーワンのビューポイント・千綿(ちわた)駅
新大村駅からさらに列車は北上して16:20に千綿駅に到着し、10分停車。小さな集落しかない小さな駅ですが、停まるのには理由があります。
それはホームの向こうはすぐに海というロケーションをみるため。列車の向こうに眩いばかりの空と海の青を望むことができます。白い列車が駅に入ると爽やかな印象がさらに増します。
駅舎もかなりレトリック。1993年に建てられたものですが、それ以前にあった建物を模して作られています。旅情掻き立てる景色が注目され、2014年には青春18きっぷのポスターにも選定されています。昨年からは駅舎内にフラワーショップ「ミドリブ」がオープンして、列車到着時にドライフラワーを販売しています。
車内からの望む大村湾の景色も素晴らしいです。千綿駅は少しカーブになっていて海側に列車が倒れて停まるので海がより見やすくなります。
千綿駅を出るとそろそろ海とはお別れです。
17:00、ハウステンボス駅に到着しました。いわずと知れたテーマパーク「ハウステンボス」の玄関口となる駅で、駅前からは、ホテルオークラJRハウステンボスが見えます。オランダに行ったことはありますが、ハウステンボスはいつも素通り。だいたい一人旅なので入る勇気ないんですよね……。
列車は海を離れ、いで湯と歴史の町・武雄市へ
ハウステンボス駅から数分で早岐駅に到着しました。佐世保方面と武雄温泉方面の分岐点で鉄道の要衝です。
旅程の関係上、わたしはここで下車しましたが、「ふたつ星4047」はこの先、有田・武雄温泉方面に向かいます。
全国に名を馳せる有田焼の町、有田
有田駅のある佐賀県有田町は、全国的にも有名な有田焼の産地。内山の町並みでは和風、洋風の古い建物が並び往時の繁栄を偲ぶことができます。GWには、有田陶器市が開かれて多くの観光客が焼き物を買いにこの地を訪れます。
1300年の歴史ある温泉の町・武雄市
「ふたつ星4047」の終着駅・武雄温泉駅のある武雄市は1300年の歴史あるいで湯の町。温泉街にはシンボルとなる楼門のほか、多くの外湯や旅館が立ち並びます。西九州新幹線開業後、武雄温泉駅は長崎への玄関口となりました。「ふたつ星4047」も終点としており、博多方面へは特急が連絡しています。
おわりに
長崎、佐賀両県を走り海をめぐる「ふたつ星4047」。光眩しい海を眺めながら存分に鉄道の旅を楽しむことができました。今回ご紹介できませんでしたが、有明海ルートも遠浅で見るときによって景色を変える有明の海を眺められる素敵なルートですので別の機会に紹介したいと思います。また、今回は月曜の乗車でしたが、土日は混雑も予想されますので早めの予約をおすすめします。
◆「ふたつ星4047」運行案内(大村湾ルート)
運行区間:長崎駅~(大村線経由)~武雄温泉駅
運行スケジュール:金、土、日、月曜を中心に1日1便運行
※夏期休暇期間など観光シーズンは火曜、木曜も運転していることもあります。詳細は公式ホームページでご確認ください。