浅田政志の宿旅

旅の目的は、あの宿に泊まること―。非日常の宿泊体験を切り取る写真連載。第22回は、「英国です」と言っても過言ではないほど本格的なB&B。ここはもはや日本ではありません。
写真家 浅田政志の宿旅
SCROLL

Vol.22「 ドゥリムトンヴィレッジ」京都府亀岡市

日本なわけない。
日本の原風景のような峠にあるドゥリムトンヴィレッジ。深い霧を抜けた先にその場所が現れる様がロンドンと重なり、オーナーのマリーさんはここにこの“村”を拓いたそう。約1ヘクタールもある敷地内に宿泊棟はわずか5棟。英国の古きよき時代がここにありました。
「私がメアリーです」
門を入って最初にあるのは、海外の雑貨やお菓子が売っているショップ。
そのさらに奥の扉の先に、レストランや宿泊する人のみが入れる特別なエリアが広がっています。
まずはかわいい門番に異世界への扉を開けてもらいましょう。
午後に紅茶
レストラン「ポントオーク」では、フィッシュ&チップスや、紅茶とスコーンのセット「クリームティー」など、イギリスの伝統的な料理が楽しめます。旅情は舌から始まります。
ネコに導かれ、さらに奥の細道へ
レストランの隣には、オリジナルのワンピースや、
イギリスから直接買い付けたアンティークを揃えたショップが並びます。
悠々と歩くネコも、英国紳士のような凛々しさです。
不便を楽しむ
レストランの奥にある秘密の扉を抜けると、英国コッツウォルズのような牧歌的な風景が広がっています。
ここは宿泊者だけが入れる特別な場所。Wi-Fiはとんでいませんが、幻想的なまでに静かな時間が過ごせます。
英国式 伝統建築
宿泊はB&B(ベッド&ブレックファスト)。1棟貸しなので誰かのおうちにお邪魔しているかのよう。なかには1Fがパブのつくりになっているものも。酒場のにぎわいが聞こえそうなリアリティです。
「Hi!昨日ハ、ヨク眠レタ?」
ここのすごいところは、「っぽい」で済まさないところ。キッチンに並ぶ小物は現地に詳しいスタッフが揃えたもので、いまにも住人が出てきそう。イギリス出身の人が涙を流して喜んだというほど、本物です。

ドゥリムトンヴィレッジ

空間プロデュースを手掛けている会社が運営している施設で、「おもてなし」というより空間そのものが楽しい場所です。スタッフは英語名で呼び合い、何気なく置かれている小物や食器にも日本の気配はありません。Wi-Fiも温泉もありませんが、宿泊した英国人のなかにはここの風景に涙を流して感動した方もいたそう。海外旅行に行けないときも、京都にはイギリスがあります。

住所 / 京都府亀岡市西別院町柚原水汲12
電話 / 0771-27-3004
料金 / 17,000円~(2名1室、1泊朝食付き)

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。2020年、『浅田家!』として映画化された。著書に『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。最新作は『浅田撮影局 まんねん』(青幻舎)。また、国内外で個展やグループ展を精力的に開催している。
http://www.asadamasashi.com/