旅好きが考える行程はひと味違う あの人の旅プラン

俳優 井浦新さん 縄文文化が大好き

手作りプラン掲載数No.1の「みんなの旅プラン」とのコラボ連載。
旅好きな著名人に、実際に使える旅の行程を教えてもらいます。
第2回は、美術や歴史に造詣が深い井浦新さん。
好きな旅のキーワードは「縄文文化」。
独自の視点で旅を楽しんでいます。

今回のプランナーは...

俳優 井浦新さん

  • 前編 「旅について語る」
  • 後編 「プランをつくる」10.25公開!
俳優 井浦新さん 旅好きを越えてしまって…
俳優 井浦新さん

これまでに、さまざまな場所へ旅をしてきた井浦さん。旅をする時に大事にしていることはありますか?

旅をするなら、古きを訪ねていきたいなといつも思っています。"温故知新"という言葉は、よくできた言葉で、古きを訪ねていくと、今とこれからの未来を考えていくアイデアや、いろんな力がもらえるような気がするんです。海外でも日本でも、古き文化というのは、機会や時間があれば、どんどん訪ねていきたいなと思っています。

歴史ロマンを訪ねる旅というのがお好きなんですか?

好きですね! …ただ、“好き”を越えてしまって(笑)。ちょっとしたライフワークのようなものになっています。滝や巨木、巨石など、自然と触れ合う旅によく行くんですが、そのなかでも登山はできる限り旅の行程に入れています。なぜ山かと言うと、飛鳥時代や平安時代の頃、人間が山に登って巨岩の下にいわやを造り、そこで数か月間修業したり寝泊りした場所が残っていて。なので、登山をして自然と触れ合うことが、実は古い時代の歴史や文化に触れることにつながるんです。

俳優 井浦新さん
よく登山に行くという井浦さん。熱く語る姿から、心から登山に魅力を感じているのが伝わってきました

縄文文化に触れる旅は今の時代にピッタリ!

過去、さまざまな歴史を訪ねる旅をしてきた井浦さんが、今もう一度行きたいと思う旅先はありますか?

いろいろあるんですけれど、ちょうど7月に世界文化遺産に指定された「北海道・北東北の縄文遺跡群」の旅は、行けるものならばいつでも行きたいなあって思っています。全部回れるのであれば、本当に幸せなんですけど、数と距離の問題で一度に回るのは難しくて。20代の頃に、アイヌの文化が残る場所をめぐったりする北海道一周の旅をしたことがあるのですが、その時は三週間くらいかかりました。「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、北海道、青森県、岩手県、秋田県にあるので、一度に全部回ろうとすると、一カ月以上まとまった休みがないと難しそうです。それでも、近くに行ったら一つでも行きたくなるくらい、素敵なところですし、感動が必ずある場所ですね。

縄文文化に触れる旅というのは、少し意外でした。

日本には、北から南のすみずみまで、縄文の遺構というものがあるんです。それに、地域ごとに独自の発展を遂げているので、日本列島の端から端まで全部が同じじゃなくて、それぞれの地域の特徴が必ずある。なので、ちょっと移動するだけで各地の縄文文化に触れることができる。言ってしまえば、飛行機や電車を使わずとも、車でも行ける範囲にあったりするので、密にならず、一人でも行けます。なので、今の世の中にはピッタリじゃないかな。

亀ヶ岡遺跡にある「遮光器土偶」のモニュメント
井浦さんがSNSで話題に上げた亀ヶ岡遺跡にある「遮光器土偶」のモニュメント。造形美も土偶の魅力のひとつだそう
俳優 井浦新さん

遺跡や博物館への旅は
映画館への行き帰りに似ている

地域ごとに縄文文化が異なるというのは、旅するたびに楽しめそうですね!

縄文文化の遺跡に触れる旅の何がおもしろいかというと、例えるなら、映画を見に行って、暗闇の中で泣いたり笑ったり、感動と出合う。その後、映画館を出たときの街の明かりが輝いて見えたり、行きとは違う感情で電車に乗ったりと、家までの帰り道が、行きとは違った景色に感じられるのに似ています。旅先に行くときはすごくワクワクしていて、旅先の風景や普段の日常と違う空気を感じて、遺跡や博物館でその地域の縄文文化に触れる。そうすると、さっき見た景色や感じた空気が、また違うものに感じられるんです。

現地を旅して、体感するというのが重要なんですね。

やっぱり、その地でちゃんと知って、見て、感じるというのが縄文の旅の最大の魅力です。青森県に亀ヶ岡石器時代遺跡というのがあるのですが、ここは、教科書にも載っている「遮光器土偶」が発掘された場所。この土偶は、東京国立博物館に収蔵されていて、「ドラえもん」の映画では敵として描かれていたのが有名! でも縄文人にとっては、崇拝の象徴として神聖なものだったんです。また、同じような形の土偶が西の方でも出土しています。“北の方でこういう土偶が流行っている”というのが、どんどん伝達されて行って、西の方まで流れていったという説があって、土偶にもトレンドがあったんだなって。いろいろな縄文遺跡を巡ると、このようなことが体感できるんです。

俳優 井浦新さん

縄文文化を知ることは
自分たちの源流を知ること

井浦さんにとって、縄文時代というのは特別なものなんですね

自分にとってもそうですが、世界的にも特別なものだと思います。ピラミッドや万里の長城などの海外の遺跡は、石を切り出して作ったものだから、長い年月が経っても残っています。でも、縄文人たちは木をはじめとした植物を使っていたので、ほとんど残っていなくて、遺跡が出土されること自体が奇跡なんです。そんな約一万年にわたって築き上げられた豊潤な文化を、ちょっと移動すれば旅先で感じ取ることができるんです。

その体験って、実はぜいたくなことかもしれないですね。

そうですね。そして、縄文人は後世にバトンを渡したり、混ざり合って次の時代へと文化を紡いていったので、縄文時代を知るということは、僕たち日本人の源流を知るということにつながります。

縄文文化からは、いろいろなことが学べるんですね。

縄文時代の人たちの暮らしは、今でいうSDGsだったり、世界平和だったりといったことにつながるものがあると思っています。どんな意識、マインドを持てばいいのかや、本当に豊かな暮らしが何なのかを教えてくれたりする。それが縄文時代の遺構や、博物館、縄文の旅で得られるものだと思います。

旅することで、“豊かに生きる”ヒントが得られそうですね。次回は、縄文時代を愛する井浦さんにおすすめの旅プランを聞きます。

撮影/山下陽子  取材・文/小松孝裕(エンターバンク) ヘアメイク/NEMOTO(HITOME) スタイリスト/上野健太郎(KEN OFFICE)

井浦新さんの旅プランは、次号「月間旅色11月号」(10/25)で公開!

Information
©2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

『かそけきサンカヨウ』

2021年10月15日(金)、テアトル新宿ほか全国公開

※東京、大阪など19都道府県への緊急事態宣言の発出により、映画館の時短営業や休館などが発表されています。詳細は映画館の公式サイトにてご確認ください。

窪美澄の短編集『水やりはいつも深夜だけど』に収録されている一編を『アイネクライネナハトムジーク』などで知られる今泉力哉監督が映画化。母が家を出て以来、父の直(井浦新)と二人で暮らしていた女子高校生の陽(志田彩良)。しかし、父の再婚によりこれまでの日常が一変。陽が家族について葛藤しながら、成長していく姿を描く。

監督:今泉力哉
出演:志田彩良、井浦新、鈴鹿央士、中井友望、鎌田らい樹、遠藤雄斗、菊池亜希子、西田尚美、石田ひかりほか
配給:イオンエンターテイメント

Profile
俳優 渡部豪太さん
井浦新Arata Iura

1974年9月15日生まれ、東京都出身。1999年公開の映画『ワンダフルライフ』で主演を務め、俳優としても活動スタート。以降、さまざまなドラマや映画などに出演。一方で、アパレルブランド『ELNEST CREATIVE ACTIVITY』のディレクターを務めるなど、幅広い分野で活躍中。自身ゆかりの山形県金山町を撮り下ろした写真集「町と祭 -山形・金山- 井浦新写真紀行」が発売中。