【3月末で閉園】アートテラー・とに~さん、「星の王子さまミュージアムと、この春行くべき美術館を教えてください」

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2023.02.21

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【3月末で閉園】アートテラー・とに~さん、「星の王子さまミュージアムと、この春行くべき美術館を教えてください」

3月31日に閉園する星の王子さまミュージアム。美術館でトークガイドを実施するほか、テレビやラジオでアートの魅力を伝えるアートテラー(=美術を面白おかしく紹介する仕事)・とに~さんに、星の王子さまミュージアムの魅力と、星の王子さまミュージアムのように絵画や彫刻作品ではないものを紹介するミュージアムで、この春オススメの3つを伺いました。

Text、Photo:アートテラー・とに~

目次

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作者ゆかりのフランスの街並みに広がる、名作の世界

【東京】“民藝運動の父”と染色界のレジェンドが融合された展示/日本民藝館

【千葉】絶対的な美のオーラを放つ日用品たちと建築の妙/museum as it is

【東京】宝飾とサイエンスから鳥をめぐる/インターメディアテク

作者ゆかりのフランスの街並みに広がる、名作の世界

サン=テグジュペリ生誕100年を祝した世界的記念事業の一環として、1999年に箱根の地に誕生した星の王子さまミュージアム。世界で初めて『星の王子さま』をテーマにしたミュージアムです。園内の中心にある展示ホールでは、写真や手紙、愛用品などサン=テグジュペリに関するアイテムや、童話『星の王子さま』にまつわる品々が展示されています。また、ミュージアムとは名がつくものの、全体的には体験型テーマパークに近く、園内のあちらこちらで、絵本の中から飛び出した登場人物と会えるのはもちろんのこと、日本を代表するガーデンデザイナー・吉谷桂子さんによるヨーロピアン・ガーデンや、『星の王子さま』やサン=テグジュペリにゆかりのモチーフがちりばめられたフランスの街並み、サン=テグジュペリが幼少期に過ごしたサン=モーリス・ド・レマンス城や教会の再現など、どこを切り取っても映える、箱根屈指のフォトジェニックなスポットです。友人やカップル、ご家族で訪れた際は、園内全体を舞台とした謎解きイベントにチャレンジしてみるのも良いかも。謎解きを楽しみながら『星の王子さま』の物語をたどることができますよ。

作者が幼少期を過ごしたサン=モーリス・ド・レマンス城を再現

そんな開園以来多くのファンに愛されてきた星の王子さまミュージアムですが、コロナ禍による来園者の減少や建物の老朽化を理由に、2023年3月31日をもって閉園することが決まりました。サン=テグジュペリが『星の王子さま』を通じて伝えたかったように、私たちは失ってから初めて、その大切さに気が付くのかもしれません。これまでに星の王子さまミュージアムを訪れたことがある方も、まだ無いという方も、この最後の機会をどうぞお見逃しなく!


◆星の王子さまミュージアム
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原909
電話:0460-86-3700
休園日:2月22日、3月1日/8日/15日
開園時間:10:00~18:00(最終入園17:00)


さて、ミュージアムというと、一般的には絵画や彫刻が展示されているイメージが強いでしょうが、星の王子さまミュージアムのように、絵画や彫刻作品ではないものを紹介する施設も多々あります。ここからは、その中から特にこの春オススメの3つをご紹介いたしましょう。

【東京】“民藝運動の父”と染色界のレジェンドが融合された展示/日本民藝館

まずは、駒場にある日本民藝館。「名も無き職人が生み出した日常の生活道具にも、美術品に負けない美しさがある」と唱えた“民藝運動の父”柳宗悦らが作った造語で、昭和11年当時まだ新たな概念だった『民藝』を普及すべく設立した美術館です。普段は柳の審美眼によって国内外から集められた陶磁器や染織、木漆工などの民藝品が展示公開されていますが、この春は特別展として“生誕100年 柚木沙弥郎展”が開催中。染色界の生きるレジェンド・柚木沙弥郎さんの作品が、日本民藝館が所蔵するアフリカやインドなどのプリミティブな造形作品や西洋家具と併せて展示されています。制作された時代も地域もジャンルも全然違うのに、驚くほどにまったく違和感がありませんでした。なお、昨年10月に100歳を迎えた現在もなお、創作意欲が衰えていないという柚木さん。会場を訪れれば、そのパワーをおすそ分けしてもらえること請け合いです。


◆日本民藝館
住所:東京都目黒区駒場4-3-33
電話:03-3467-4527
開館時間:<本館>10:00~17:00(最終入館16:30)、<西館(旧柳宗悦邸)>10:00~16:30(最終入館16:00)※西館は会期中の第2第3水・土曜日開館
展覧会開催時期:(開催中)~4月2日

【千葉】絶対的な美のオーラを放つ日用品たちと建築の妙/museum as it is

外壁の土壁はその地でとれた土でつくられている

昨年秋にご逝去されたカリスマ古道具商・坂田和實(かずみ)さんが、1994年に千葉県長南町にひっそりと開館させた隠れ家系ミュージアムです。展示されているものの多くは、布の端切れや使用後のコーヒーフィルター、針金といった日用品。決して美術品として作られたわけではないはずなのですが、坂田さんによって見出されたそれらのアイテムはどれも、絶対的な美のオーラを放っています。また、それらのアイテムのポテンシャルを最大限に引き出しているのが、建築家・中村好文さんの設計による建築の素晴らしさと、ディスプレイの妙。さりげなくセンスが光り、隅々まで美意識が行き届いたこの空間すべてが、ひとつの大きな美術品といった印象です。

山の自然に囲まれた心地よい庭

ちなみに、入館者にはもれなくコーヒーorお茶のおもてなしがあります。館内でも中庭でも好きなところで飲むことが可能。ゆったりとした時間と空間とともに、コーヒーも味わえる。究極の贅沢体験ができるミュージアムです。


◆museum as it is(ミュージアムアズイットイズ)
住所:千葉県長生郡長南町岩撫41
電話:0475-46-2108
開館日:土・日曜日
開館時間:10:30〜16:00

【東京】宝飾とサイエンスから鳥をめぐる/インターメディアテク

東京駅のほど近くにあるインターメディアテク (略してIMT)。東京大学が所蔵する動物の骨格や剝製、産業プロダクトといった博物標本を、博物館のルーツとされるヴンダーカンマーのように、つまり、珍品をごちゃごちゃにディスプレイした驚異の部屋のように、あえて体系立てて展示しないユニークなミュージアムです。
そんなインターメディアテクも今年で開館10周年。それを記念して、現在開催されているのが、“インターメディアテク開館十周年記念特別展示『極楽鳥』”という展覧会です。テーマは、「鳥」。東大が所蔵する一級の鳥の剥製標本の数々と、ヴァン クリーフ&アーペルやショーメといったハイブランドジュエリーブランドが鳥をモチーフにした宝飾芸術の歴史的名品の数々とを併せて展示。目にも極楽な展覧会です。しかも、嬉しいことに入場無料! 何かと出費の多い春に、ありがたい限りです。


◆JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
住所:東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE 2・3階
電話:050-5541-8600
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館)、年末年始、その他館が定める日
開館時間:11:00~18:00(金・土は20時まで)
展覧会開催時期:(開催中)~5月7日


未だ美術館に行ったことがないという方は、星の王子さまミュージアムへまずは出かけてみてはいかがでしょうか。来館の際は最新の公式情報を確認したうえで、感染対策をしっかりして出かけてくださいね。

©Shingo Kanagawa

©Shingo Kanagawa

◆アートテラー・とに~
1983年生まれ。千葉大学法経学部法学科卒。元吉本興業のお笑い芸人。芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」に転向。現在は、美術館での講演やアートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など幅広く活動している。著書に『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社)、『東京のレトロ美術館』(エクスナレッジ)など。公式ブログ「アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】」。

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