【磯部温泉】温泉マーク発祥の地で舌切り雀の里を旅する|観光完全ガイド

時計アイコン2026.03.17

【磯部温泉】温泉マーク発祥の地で舌切り雀の里を旅する|観光完全ガイド

誰もが知っているあの「♨」マーク——。その発祥の地が、群馬県安中市に静かに佇む磯部温泉です。江戸時代の公文書に記された日本最古の温泉記号の石碑が残り、碓氷川の清流沿いに7軒の宿と日帰り施設が並ぶ、小さくも歴史の深い温泉地です。

塩分とミネラルをたっぷり含んだ"美人の湯"は、入るたびに肌のしっとり感と体の芯から温まる感覚を実感できます。明治の文人たちも愛した清遊の地で、温泉と民話と名物グルメが一体になった、群馬南西部ならではの旅がここにあります。

温泉マーク発祥の地

日本最古の温泉記号発祥の地の石碑

日本最古の温泉記号発祥の地の石碑(Photo by PIXTA)

磯部温泉が全国に知られる由縁は、温泉記号との縁にあります。万治4年(1661年)、江戸幕府が近隣の村同士の土地争いに対して出した判決文の絵図に、湯気が立ち上る現在の「♨」とほぼ同じ記号が、磯部温泉の場所を示すために描かれていました。

この記号の存在が明らかになったのは1981年のこと。専門家の鑑定によって「日本最古の温泉記号」と認定され、以来磯部温泉は温泉マーク発祥の地として広く知られるようになりました。温泉街を歩けば至る所に温泉記号が見つかります。足湯の石碑や橋の欄干、土産物の包装紙まで。その愛らしいマークを探しながら散策するのも、磯部ならではの楽しみ方です。

泉質と特徴

磯部温泉の泉質は、ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩強塩温泉(pH7.3〜7.5)です。群馬県内の温泉のなかでも成分の濃さは屈指とされ、泉温は52.6℃と高めです。無色透明・無臭でやわらかな肌ざわりが特徴で、「美人の湯」「風邪治しの湯」として長く親しまれてきました。

塩分が肌に薄い膜をつくるため、湯上がり後も保湿感が続き体が冷めにくいのが特徴です。明治初期には来日したドイツ人医師エルヴィン・フォン・ベルツが磯部の湯を絶賛したと伝えられており、古くより胃腸に優しい湯としても知られていました。

歴史

日本最古の温泉記号の絵図石碑と足湯

日本最古の温泉記号の絵図石碑と足湯(Photo by PIXTA)

磯部温泉の歴史は江戸時代以前に遡りますが、現在のような湯量になったのは天明3年(1783年)の浅間山大噴火がきっかけとされています。この噴火によって湧出量が飛躍的に増し、以後は中山道を往来する旅人や湯治客が訪れる温泉地として発展していきました。

明治になって信越本線が開通すると、避暑地として都市部からの客も増え、文人墨客も好んで訪れました。外務大臣を務めた井上馨は磯部温泉を第一の静養地とし、明治19年(1886年)に当地に別邸を構えたほどです。温泉街には当時の文人たちが詠んだ句碑や詩碑が今も残り、石畳を歩くと文学の気配がそこかしこに漂います。

舌切り雀伝説

舌切り雀神社

舌切り雀神社(Photo by PIXTA)

磯部温泉は舌切り雀の発祥の地としても知られています。明治の児童文学者・巌谷小波がこの地を訪れた際、磯部に伝わる雀の伝説を基に昔話「舌切雀」を書き上げました。この作品によって磯部温泉は舌切り雀の発祥の地とされるようになりました。

磯部温泉の楽しみ方

磯部温泉の名物・磯部せんべい

磯部温泉の名物・磯部せんべい(Photo by PIXTA)

磯部せんべい

磯部温泉の名物といえば、まず磯部せんべいです。小麦粉・砂糖・磯部の鉱泉水だけを使って焼き上げたこの薄焼きせんべいは、炭酸ガスを含む鉱泉の力でサクサクとした独特の軽い食感に仕上がります。温泉街に11店舗が軒を連ね、手焼きで作る老舗から新フレーバーを次々と開発する店まで個性はさまざまです。食べ比べしながら街をそぞろ歩くのが磯部らしい過ごし方です。

砂塩風呂(恵みの湯)

磯部温泉の新名物として人気を集めているのが、日帰り施設「恵みの湯」の砂塩風呂です。磯部温泉の天然塩分とミネラルをたっぷり含んだ砂に全身を埋めて温まる体験で、10分ほどで全身から汗が噴き出すほど体が温まります。入浴後は薬草茶でゆっくり休憩するのがセットになっており、体の内側からリセットされるような感覚が味わえます。通常の大浴場・露天風呂も完備しています。

アユ料理と磯部グルメ

6月中旬より9月下旬にかけて、碓氷川のほとりでは「磯部簗(いそべやな)」が開かれます。清流で育った新鮮なアユを、目の前で炭火焼きにして味わえる夏の風物詩です。地元食材の惣菜やけんちん汁、希少米「坂本のコメ」を使ったアユ御膳は、磯部温泉に来たなら外せない1食です。また各宿の朝食に提供される「ふわとろ豆腐鍋」も磯部ならではの料理です。鉱泉水で豆腐をじっくり煮ると、ふんわりとろとろの独特の食感になります。湯豆腐の汁ごと飲めて、胃腸に優しい健康料理として宿の定番となっています。

周辺観光

碓氷峠めがね橋

碓氷峠めがね橋(Photo by PIXTA)

妙義山

磯部温泉より車で約20分の場所に、日本三奇勝のひとつに数えられる妙義山がそびえています。白雲山・金洞山・金鶏山の三峰より成る奇岩の連なりは、他の山岳では見られない迫力ある絶景です。碓氷川に架かる愛妻橋・鉱泉橋からも妙義山の雄姿を望むことができ、温泉街の散策中でも自然と目に入ってきます。山麓の「群馬県立森林公園さくらの里」では毎年春に約5,000本の桜が咲き誇り、シーズン中は多くの花見客でにぎわいます。

富岡製糸場

磯部温泉より車で約20分の場所に、世界文化遺産・富岡製糸場があります。明治5年(1872年)に明治政府が設立した日本初の本格的な官営製糸工場で、当時の主要建造物はほぼ完全な姿で現存しています。繰糸所・東西置繭所は国宝に指定されており、ガイドツアーや内部公開でその歴史と規模を間近に感じることができます。

めがね橋(碓氷第三橋梁)

横川方面に足を延ばすと、明治25年(1892年)に完成した壮大なレンガアーチ橋「めがね橋」が現れます。200万個以上のレンガを積み上げた4連アーチは、高さ31m・長さ91mと国内最大規模です。国指定重要文化財に指定されており、秋の紅葉シーズンには赤と黄色に染まった木々とのコントラストが絶景となります。アプトの道として整備されたウォーキングコースで、横川駅よりめがね橋まで片道約1時間30分のハイキングも楽しめます。

アクセス

磯部駅前

磯部駅前(Photo by PIXTA)

電車

JR高崎駅より信越本線に乗り換え、磯部駅まで約20分。磯部駅より温泉街まで徒歩約5分です。上越新幹線・JR高崎線・湘南新宿ラインのいずれも高崎駅に停車するため、都市圏からの電車アクセスに便利です。北陸新幹線を利用する場合は、東京駅より安中榛名駅まで約60分。安中榛名駅よりタクシーで約15分です。

関越自動車道・藤岡JCT経由の上信越自動車道、松井田妙義ICより一般道で約15分。東京の練馬ICから松井田妙義ICまでは約90分です。軽井沢より車で約40分と、群馬・長野方面への周遊旅行の拠点としても使いやすい立地にあります。

まとめ

温泉マークの発祥、舌切り雀の民話、ベルツ博士も認めた名湯。磯部温泉には、一言では語りきれない魅力があります。温泉街の規模は小さいですが、すべてが徒歩圏内にまとまっているため、ゆったりと歩いて過ごすのに最適です。温泉でほぐれた体で磯部せんべいを食べ歩き、夕餉にはふわとろ豆腐鍋とアユ料理。そんな素朴で豊かな1泊が、碓氷川のほとりで静かに待っています。

旅色編集部 しばた

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記事企画・監修:旅色編集部 しばた

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