【鉛温泉】日本一深い岩風呂「白猿の湯」|岩手・花巻の秘湯完全ガイド

時計アイコン2026.04.23

【鉛温泉】日本一深い岩風呂「白猿の湯」|岩手・花巻の秘湯完全ガイド

岩手県花巻市にある「鉛温泉(なまりおんせん)」。開湯約600年、深さ平均約1.25mの「白猿の湯」で知られる秘湯です。湯船の底から源泉が湧き出し、立ったまま入る独特な入浴体験は、全国の温泉ファンを魅了し続けています。

宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』に登場し、作家・田宮虎彦の小説『銀心中』の舞台ともなった、文学の薫り漂う温泉地。「新日本百名湯」「日本温泉遺産」「日本百名湯」に選出された名湯で、源泉100%掛け流しの湯を心ゆくまで堪能できます。

鉛温泉の泉質

温泉に入る女性

Photo by PIXTA

透明な単純温泉

鉛温泉の泉質は、アルカリ性単純高温泉(単純温泉)。源泉温度は57度で、豊富な湯量を誇ります。透明な湯は、源泉100%掛け流しで供給されており、加水・加温・循環などは一切行われていません。 5つの源泉を有し、館内4つの浴場すべてが完全源泉掛け流し。シャワーのお湯まで源泉という贅沢な環境です。

泉質の特徴

神経痛、リウマチ、胃腸病、筋肉痛、関節痛、皮膚病、神経性疾患、婦人病、糖尿病、肥満、痔疾、小児疾患、循環器疾患、呼吸器疾患、病後保養等に良いとされています。 宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』では、「腹の痛いものにも利けば傷もなおる鉛の湯」とうたわれました。

鉛温泉の歴史

白猿伝説と開湯

開湯は約600年前。宿主である藤井家の遠祖が、高倉山麓で木こりをしている時、岩窟から現れた一匹の白猿が、桂の木の根元より湧き出す泉で手足の傷を癒やしているのを発見したことが始まりと伝えられています。 これが温泉の湧出であることを知り、1443年頃に仮小屋を建て、一族が天然風呂として開いたといわれています。その後、大衆浴場として1786年に長屋を建て、温泉旅館として開業。温泉としては600年以上、温泉旅館としても240年近い歴史を誇ります。

文学者が愛した温泉

明治以降、多くの文学者がこの地に滞在しました。作家・田宮虎彦は当地を舞台とした小説『銀心中』を書き上げ、後に映画化もされました。 宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』にも鉛温泉が登場します。2024年には、この童話をモチーフにしたサウナも新設されました。

温泉地名の由来

温泉郷の「郷」が「峡」と表記されることがありますが、これは豊沢川沿いの峡谷にあることに由来します。温泉峡の中でも奥地に位置する、文学の薫り漂う峡谷の秘湯として人気を呼んでいます。 地名の「鉛」については、かつてこの地にあった鉱山が金を産出していましたが、藩制時代に厳しい上納金の取り立てを逃れるため、金ではなく鉛として登録したという言い伝えが残っています。

藤三旅館 ― 鉛温泉唯一の宿

藤三旅館

藤三旅館(Photo by PIXTA)

総ケヤキ造りの風格

豊沢川の清流に寄り添う一軒宿「藤三旅館(ふじさんりょかん)」。昭和16年(1941年)建築の総ケヤキ造りの本館は、文化財級の重厚な趣を漂わせています。 本館は総ケヤキ造りの木造建築で、渓流を望む和室が中心。別館は鉄筋造りで気密性が高く、快適性を重視した造りとなっています。湯治部では自炊可能な共同炊事場を備え、昔ながらの湯治場文化を体験できます。

白猿の湯 ― 日本一深い自噴天然岩風呂

鉛温泉の象徴である「白猿の湯」は、深さ平均約1.25mの立って入る自噴天然岩風呂。天然の岩を手掘りして造った湯船の底より源泉が自噴しており、その場で湧き出る温泉をそのまま味わえる贅沢な浴場です。湯底の天然岩より透明な温泉が自然湧出し、水深からくる湯圧が体を芯より温めます。立ったまま浸かる独特な入浴体験が、訪れる人々を魅了します。混浴ですが、女性専用時間を設定しています。

桂の湯 ― 渓流を望む露天風呂

対岸の深緑に染まった木々を愉しむことができる、大きな窓のある内湯。外には豊沢川にせり出すように造られた露天風呂があり、渓流のせせらぎを聞きながら入浴できます。例年10月中旬〜下旬頃には紅葉が見頃を迎えます。男女別に用意されています。

白糸の湯 ― 展望半露天風呂とサウナ

展望半露天の湯船に浸かると、目の前に迫るのは豊沢川へ激しく注ぎ込む「白糸の滝」。静止画のような美しさではなく、岩肌を打つ水しぶきや轟音を間近に感じる、迫力ある自然のドラマが広がっています。2024年のリニューアルにより、宮沢賢治の童話『なめとこ山の熊』の世界観をモチーフにしたサウナスペースが誕生しました。銀河鉄道をイメージしたサウナストーブを設置し、セルフでロウリュを楽しめます。深さ約1.25mの水風呂もあります。 時間帯により男女入れ替え制となります。

銀の湯 ― ご家族で楽しめる貸切風呂

大切な人と水入らずの時間を過ごせる貸切風呂は、こぢんまりとした隠れ家のような趣。脱衣所には床暖房を完備し、段差を抑えた設計になっているため、小さなお子さん連れやご高齢の方でも、不安なくゆったりと湯浴みを楽しめます。日帰り・宿泊ともに貸切利用が可能です(利用可能時間等の詳細は施設へお問い合わせください)。

童話の原風景に出合う自然・絶景めぐり

夏の釜淵の滝

夏の釜淵の滝(Photo by PIXTA)

【名勝】作家が愛したダイナミックな滝めぐり

鉛温泉から車で30分ほど走ると、高さ約8.5m、幅約30mあり、丸い岩肌を滑り落ちる清流が特徴の名勝の滝があります。この地が生んだ童話作家の詩にも登場し、初夏の緑や秋の紅葉など、四季折々の景色を楽しめます。ドライブがてら足を運び、手つかずの自然の中で名作の原風景を肌で感じられるおすすめのスポットです。

【景勝地】想像力を掻き立てる異国情緒あふれる川岸

同じく鉛温泉から車で市街地方面へ向かうと、川沿いに童話作家がヨーロッパの海岸に見立てて名付けた景勝地があります。川岸に泥岩層が露出する独特の風景は、作家の想像力を掻き立てたスポットのひとつです。現在は上流のダム整備によって当時の白い岩肌が見られることは稀ですが、周辺には水辺の散策路が整備されており、川のせせらぎを聞きながら自然の中で寛げる場所となっています。

鉛温泉へのアクセス

岩手県交通バス

岩手県交通バス(Photo by PIXTA)

電車・バスでのアクセス

JR東北本線 花巻駅より:
岩手県交通バス「湯口線・新鉛温泉行き」で約30分、「鉛温泉」下車。

新花巻駅、花巻駅より:
花巻南温泉郷の共同運行による無料シャトルバスあり(予約制)。
※運行時刻や予約方法については、宿泊施設の公式サイト等で最新情報をご確認ください。

車でのアクセス

東北自動車道 花巻南ICより:約20分
新花巻駅より:約40分

駐車場

無料駐車場あり(約60台、先着順)
※湯治部のご利用は第2駐車場をご利用ください。

鉛温泉ならではの魅力

冬の鉛温泉

冬の鉛温泉(Photo by PIXTA)

湯船の底より湧き出る源泉

白猿の湯最大の魅力は、湯船の底より源泉が自噴していること。一般的な源泉掛け流しではパイプを通して湯を引くため、移動中に空気に触れて鮮度が落ちてしまいがちです。しかし、ここは湯船の底自体が湧出点。湧き出した瞬間の源泉に直接浸かることができる、全国でも数少ない贅沢な環境です。

湯守のいる湯

湯守とは、温泉の管理人のこと。温度調整のために水を足したり加熱したりするのは簡単ですが、ここではそれを良しとしません。自然のままの源泉を快適な温度で提供するために、「湯守」と呼ばれる職人が片時も離れず湯加減を監視し、自然と対話しながら湯のコンディションを整えています。

歴史ある湯治文化

湯治部では自炊可能な共同炊事場が備わり、昔ながらの湯治場文化に触れることができます。長期滞在のお客さまも多く、本格的な湯治を体験できます。

まとめ

鉛温泉は単なる宿泊施設ではなく、日本の温泉文化と文学の歴史そのものに浸れる場所です。豊沢川のせせらぎ、宮沢賢治も愛した情景、そして足元から湧き出る大地の恵み。ここで過ごす時間は、現代の忙しさを忘れさせてくれる特別なひとときとなるでしょう。文豪たちが筆を走らせた静寂と、日本一深い岩風呂のぬくもりに包まれる旅へ、ぜひ出かけてみませんか。

旅色編集部 しばた

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記事企画・監修:旅色編集部 しばた

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