あの人の旅カルチャー

  • Interview 木南晴夏
  • 本と映画の目利きがおすすめを紹介

    今月のテーマ「美味しい旅」

  • BOOK 間室道子
  • MOVIE 東紗友美

あの人の旅カルチャー

女優 木南晴夏
“パンを食べにパリへ行ったことも。
パリは行きたいパン屋さんが
尽きないです”
新作映画『マチネの終わりに』に出演する
木南晴夏さんに、作品に対する思いから、
舞台でもあるパリ・ニューヨークの思い出、
大好きなパンのお話まで聞きました。
Text:小林未亜
Photo:野口彈
Hair&Make:山田典良
Styling:中井綾子

読書がお好きで、原作小説は発売してすぐに読んでいたという木南さん。完成した映画『マチネの終わりに』をご覧になって、どんな感想を持ちましたか?

台本を頂いた時に、原作に近いイメージで、とても美しい、ゆったりとした時間が流れているように感じました。映像になった時にはさらに美しさが増して、とてもきれいで、かっこよくて、本当にクラシックの音楽のような映画だなと思いました。

福山雅治さん演じる蒔野と、石田ゆり子さん演じる洋子の恋愛が物語の軸となり、木南さんは蒔野の妹的な女性を演じていらっしゃいます。木南さんから見て、この2人の恋愛はどう思われましたか?

すごく切ないというか、はがゆいというか……映画の中で福山さんが「あー!」って叫ぶシーンがあるんですけど、見ているこっちも「あー!」って気持ちになりますね(笑)。はたから見ていると「こうすればいいのに」と分かることも当人同士は気付けないことって、恋愛にはよくあると思うので、ある意味すごくリアルだと思いました。

原作を読んだ時も、映画を見た時も思ったんですけど、自分のすべてを投げ捨ててまでこの人についていきたいと思えるくらいの全力の恋を、大人でもできるんだなというか。年を取ることが怖くなくなるような、そんな作品でした。いくつになっても全力で何かに向かっていけるんだなって。何かに踏みとどまっている人にぜひ見ていただけたらなと思います。

木南さんが出演されたのは東京のシーンでしたが、映画ではパリやニューヨークの風景も印象的に登場します。木南さんご自身は、ニューヨークやパリに思い入れはありますか?

偶然ですが、先日までプライベートでニューヨークに遊びに行っていました。元々ミュージカルがすごく好きなので、ニューヨークやロンドンでミュージカルを見るのが好きなんです。今回はミュージカルではなくショーを見に行ったんですけど、楽しかったです。(映画の舞台になった)セントラルパークにも行きました。

パリは、2月に『海辺のカフカ』という舞台の公演をさせていただいたんです。(公演の合間に)けっこう時間があったので、いろんなところに行きました。めちゃくちゃ寒い時期と聞いていたんですけど、持って行ったダウンを一回も着ずに、春物のコートをわざわざ向こうで買ったぐらい、暖かくて天気が良くて。だから、外を散歩したり、毎日歩き疲れるぐらい歩き回って、パン屋さんも毎日巡りました。

木南さんといえばパンがお好きというイメージが強いですよね。パンを目的に旅というか、遠出をすることも?

それこそ2年前くらいに、パリに行きました。パンを食べに(笑)。

やはりパリのパンは違いますか?

違うってほど違わないとは思うんですけど(笑)。日本のパン屋さんって本当に美味しくて、種類がすごく多いですよね。パリは伝統的なパンが多いので、バリエーション的に日本みたいに一店舗で50種類も100種類もあるような大型店がないんです。そういう企業努力みたいなのは、やっぱり日本の方がすごいと思います。でも、安い。日本で買うと500円とかしちゃう“パリから上陸”みたいなクロワッサンも、パリなら1ユーロで食べられるし、(手を広げて)こんなバゲットも2ユーロとか。そういうところはやはりパン大国というか、日本より安くておいしいパン屋さんがたくさんあります。歩けばパン屋がある、というくらいあるのが嬉しいし、周るお店が尽きないですね。

日本でもたくさんのパン屋さんを巡っていると思いますが、パンの情報はどんな風に集めているんですか?

昔は雑誌などを読んでいたんですけど、最近はInstagramのメッセージで教えてもらいます。例えば地方に行く時に、「どこかオススメのパン屋さんありますか?」って聞くと、みなさんが「どこどこがおいしいです!」って書いてくださるので、その中で多く名前が挙がったお店に行ったりします。

最近の一押しのお店や種類はありますか?

名古屋にある「スーリープー」さんのパンはなんでも美味しいんですけど、スコーンを割ってクリームチーズとクロテッドクリームのちょうど間みたいなクリームとジャムが挟まっている「スコーンサンド」っていうのがすっごく好きで。それはいつも食べたくてしょうがなくなります(笑)。

話を聞いていると、パン屋さんを巡りたくなってきます……! では最後に、木南さんが「旅に行きたくなる作品」を紹介していただきたいです。ご自身が出演して、「また行きたい」と思ったものなどはありますか?

両方とも四国なんですけど、香川(『百年の時計』の舞台)と高知(『君が踊る、夏』の舞台)は一か月くらい滞在した街で、どちらもすごく好きです。元々うどんが大好きで、香川にはプライベートでも行ったことがあったんです。高知は、よさこい祭りの話だったので、映画のあともよさこい祭りのゲストに何度か呼んでいただいたりして。どちらもまた遊びに行きたいです。

木南晴夏さんが旅に行きたくなる映画

『百年の時計』

『百年の時計』

“ことでん”の愛称で親しまれる香川県・高松琴平電気鉄道の開業100周年を記念して、香川県での全編オールロケ撮影によって制作された2012年の作品。木南さんにとって本作が長編映画初主演。新米学芸員・神高涼香(木南晴夏)と、創作意欲を失った現代芸術家・安藤行人(ミッキー・カーチス)を中心に、過去と向き合うことによる人間の成長や、家族の絆を描く感動のヒューマンドラマ。
『君が踊る、夏』

『君が踊る、夏』

Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray6,270円/DVD5,170円
発売:東映ビデオ
販売:東映

高知県の伝統的なよさこい祭りをモチーフにした、実話ベースの感動作。難病の少女との約束を守るため、よさこい祭りに情熱をかける若者たちを描く。木南さんは、難病の妹を支えるヒロインを演じている。「よさこい祭りが、毎年誕生日(8月9日)の日で、イベントに呼んでいただいた時に、よさこいに参加している大勢の方たちに誕生日をお祝いしてもらったり、なかなかできない経験をさせてもらいました」(木南)
INFORMATION
『火口のふたり』©2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク

『マチネの終わりに』

芥川賞作家・平野啓一郎の代表作「マチネの終わりに」を原作に、福山雅治と石田ゆり子の映画初共演が話題を呼んでいる大人のラブストーリー。世界的なクラシックギタリストの蒔野聡史(福山)は、公演の後、パリの通信社に勤務するジャーナリストの小峰洋子(石田)に出会う。洋子は婚約者がいる身であり、蒔野はそれを知りながらも、出会った瞬間から惹かれ合う2人。しかし、それぞれを取り巻く現実と向き合うなかで、すれ違ってしまうことに。そんな2人の6年にわたる切ない愛の物語を、東京、パリ、ニューヨークの街並みを舞台に描く。
監督:西谷弘
出演:福山雅治、石田ゆり子、伊勢谷友介、桜井ユキ、木南晴夏、風吹ジュン、板谷由夏、古谷一行ほか
配給:東宝
11月1日(金)全国東宝系にてロードショー

Profile
木南晴夏
木南晴夏Haruka Kinami

1985年8月9日、大阪府豊中市生まれ。2004年のドラマ「桜咲くまで」(TBS)で女優デビュー。その後、映画「20世紀少年 第2章-最後の希望/最終章-ぼくらの旗」(2009年)やドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京/2011年、2012年、2016年)をはじめ、映画・ドラマ・舞台など幅広く活躍。主な出演作品に、映画「秘密 THE TOP SECRET」(2016年)、「グッドモーニングショー」(2016年)、「ママ、ごはんまだ?」(2017年)、「アルキメデスの大戦」(2019年)や、ドラマ「海月姫」(フジテレビ/2018年)、「大恋愛〜僕を忘れる君と」(TBS/2018年)、「トクサツガガガ」(NHK/2019年)、「セミオトコ」(テレビ朝日/2019年)などがある。

あの人の旅カルチャー

今月のテーマ「美味しい旅」 「美味しい旅」をテーマに本と映画の“目利き”が作品をセレクト。
駅弁やワインに“人と食事”の作品も。お腹も心も満たすグルメの旅へ!

Book

  • 『やっぱり食べに行こう。』

    『やっぱり食べに行こう。』
    代表作『暗幕のゲルニカ』で人気の作家・原田マハさんが食べ歩いた美味しいものエッセイ。海外にも行きますが、パリでおでんパーティ、疲れた時の梅干スープなど、海の向こうでもここ一番の支えは日本の味。「人に教えたくない広島の穴子の名店」「金沢の越前がに店の裏メニュー」ほか、この著者ならではのレア情報が読みどころ。次の旅先を決める合言葉として、本書のタイトルを叫びたい!
    原田マハ/著
    1,540円/毎日新聞出版
  • 『山小屋ごはん』

    『山小屋ごはん』
    山登り、高地散策のお楽しみと言えば、山カフェや宿屋でのごはん! 高取山のドーナツ、丹沢の鍋焼きうどんといった気軽なものから、那須連峰のお膳とお櫃で出される夕食まで、これを食べるために一歩、また一歩とがんばれる数々。98歳で現役の小屋主が握るおにぎり、赤ちゃんをおんぶしたおかみさんがすりおろす山芋など、「迎えてくれる人はどんな人?」を紹介する文章と写真に心が温まります。
    松本理恵/著
    1,100円/山と溪谷社
  • 『駅弁女子-日本全国旅して食べて』

    『駅弁女子-日本全国旅して食べて』
    列車旅のお目当ては、やっぱり駅弁。本書は女性が「カワイイ!おいしい!」と声をあげたくなる約100食をイラストつきで掲載。かにめしならココ、お寿司ならココというメニュー別のページ、あこがれの電車のお弁当、アンパンマン型etc、ユニークな容器の紹介など、用途に合わせて読むことができます。最終日におみやげ代わりに買って、思い出を披露しながら「自宅で家族と駅弁」もいいですね。
    なかだえり/著
    1,430円/淡交社
間室道子さん 代官山 蔦屋書店

代官山 蔦屋書店に勤める文学担当のコンシェルジュ。雑誌「婦人画報」の連載を持つなど、さまざまなメディアでオススメの本を紹介するカリスマ書店員。文庫解説も手掛け、書評家としても活躍中。

Movie

  • 『シェフ
    三ツ星フードトラック
    始めました』

    『シェフ三ツ星フードトラック始めました』
    究極の飯テロ映画と言えば……必ず名前のあがる1本。自分の作りたいものを作るため、一流店を辞めてフードトラックを開業したシェフの人生と料理をテーマにした親子の旅映画。監督・主演・脚本は『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴロー。大作映画を離れ、自ら主演し“最も作りたかった作品”を作った。監督の人生とこの映画、どうやらリンクしているようで興味深い。この映画の影響でフードトラックをはじめた人もいるほど、見る人の人生を変える力を持つ感動作。
    Blu-ray&DVD発売中
    Blu-ray1,980円/DVD1,408円
    発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
  • 『サイドウェイ』

    『サイドウェイ』
    カリフォルニアのワイナリーを巡る2組の男女が登場する大人向けロードムービー。サイドウェイ、それは脇道、寄り道。毎日ただ走り続けるのではなく、本道を進むために時に寄り道することで気付くことがある……と心に余白を持つ大切さを教えてくれます。1000ドル以上する貴重なワインなどが登場し、葡萄の品種、種についてなど図らずも勉強に。私、この映画でワインを語れるようになりました。『サイドウェイズ』というタイトルで日本でもリメイクされた名作!
    Blu-ray&DVD発売中
    Blu-ray2,096円/DVD1,561円
    発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント
  • 『南極料理人』

    『南極料理人』
    氷点下54℃、日本から14,000km離れたペンギンもウイルスも住めない南極の果てが舞台。それなのに、コミカルで心温まる。南極観測隊8名の日常、そこでは食事は究極の楽しみなわけです。ラーメン、唐揚げ、美味しいメニューはたくさん出ますが、“誰か”の作ってくれるごはんが1番美味しいということを再確認。「もし今、南極にいたら……何を願うだろう?」を疑似体験し、意外にも自分の願いがシンプルであること、大事なことを思い出します。
    Blu-ray&DVD発売中
    4,180円
    発売・販売元:バンダイナムコアーツ
東 紗友美さん 映画ソムリエ

映画ソムリエとして、テレビ・ラジオ番組での映画解説や、映画コラムの執筆、映画イベントのMCなど幅広く活躍。映画ロケ地巡りも好き。日経電子版で「映画ソムリエ 東紗友美の学び舎映画館」を連載中。

※価格はすべて税込みです