浅田政志の宿旅

わざわざ泊まりに行きたい、そんな宿を訪ねる写真連載。第 回は、日本3大秘境のひとつ、徳島県・祖谷にある宿。露天風呂からの眺めに見惚れます。
写真家 浅田政志の宿旅
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Vol.11「新祖谷温泉 ホテルかずら橋」徳島県三好市

露天風呂から望む里山。聞こえる鳥のさえずりに諸行無常の響きあり。
先代がこの景色に惚れ込み、露天風呂をつくったそう。都を落ちた平家が隠れた場所ともいわれています。
いまはただ静やかな時間が流れる里山の風景があります。
ボンネットバスはいつでも別世界に連れてってくれる
ホテルのシンボルは、昔懐かしい「ボンネットバス」。ルームキーのキーホルダーにもなっています。
このバスが誕生したのは、なんと50年以上前。きちんと整備され、今も団体向けの送迎車として現役です。
クラシックなバスに揺られれば、時空さえも飛び越せそうです。
ハロー!世界!古きよきニッポンがここにあります
東洋文化研究家のアレックス・カーが紹介したことから世界的な知名度も高い祖谷。同ホテルにも年間約50か国以上から観光客が来るそう。出身国に国旗のピンを指してもらう世界地図にはすでに旗がぎっしり!
「露天風呂へ参ります。次は露天風呂でございます」
「露天風呂まで少し遠いから」と設置されたのは小屋型のケーブルカー。エレベーターガールはいませんが快適にいざなってくれます。
囲炉裏が染めるオレンジ色の障子
湯上がり休憩所「半兵衛の家」は昔ながらの茅葺屋根。
夏でも毎日囲炉裏に火をいれることで雨漏りなどが防げるそう。
煙にいぶされた障子がオレンジに染まり、昔話の世界のようです。
双眼鏡の奥に見えるもの。それは訪ねた人だけのお楽しみ。
ケーブルカーで上がったところには絶景が望める足湯も。さらに双眼鏡があり、覗いた奥には……ぜひご自身の目で確かめてください。
集落の名前がついた客室。滞在する間、首長はあなたです。
各客室には「天神(てんじん)」や「吾橋(あはし)」など
周辺の地名や集落の名前がついています。
それぞれの読み方はぜひスタッフに。
ここでしか出合えない味がある
宿の食事は、昔ながらの郷土の味。串にそば団子、堅豆腐、こんにゃくを刺して自家製の味噌だれを塗った「でこまわし」。つなぎをほぼ使わず、うどんだしのような汁で食べる「祖谷そば」。華やかさはないけれど、ここにしかない味が待っています。

新祖谷温泉 ホテルかずら橋

つる状のシラクチカズラでつくられた名所「祖谷のかずら橋」を訪れた人が、そのまま別の場所に流れてしまうことを残念に思った先代が創業した宿。ケーブルカーであがる天空露天風呂が名物で、お湯だけでなく絶景にも癒されます。貸し切り露天風呂や足湯もあり、ゆったりと滞在するのがおすすめ。お風呂上がりは囲炉裏のある食事処で祖谷の郷土料理を。親戚の家に泊まっているかのような居心地のよさが魅力です。

住所 / 徳島県三好市西祖谷山村善徳33-1
電話 / 0883-87-2171
料金 / 1泊2食付 1名16,000円(サービス料込、税別)

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。『浅田家』をもとにした映画『浅田家!』が2020年10月2日(金)公開予定。著書に、『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。国内外で個展、グループ展を精力的に開催している。