あの人の旅カルチャー

女優 山本美月
“大人じゃないと
いけないようなリッチな旅館にも
いつか行ってみたい”
男女の人生を平成史の変遷と共に描く
映画『糸』に出演されている山本美月さん。
ロケ地・シンガポールで過ごした時間から
最近の旅の思い出まで、教えてくれました。
取材・文/小林未亜(エンターバンク)
撮影/島本絵梨佳
ヘアメイク/遊佐こころ(PEACE MONKEY)
スタイリング/道端亜未

映画『糸』は、「糸」を「人」に見立てて男女の出逢いの奇跡と絆の大切さを歌った、中島みゆきさんの楽曲「糸」からインスパイアされた作品。発表から20年以上愛され続けている「糸」という楽曲に、いつ出合ったか覚えていますか?

昔、車で聴いていました。私が音楽に疎いので、父親がCD屋さんのランキング10位くらいまでをMDにまとめて、車で流してくれていたんです。その中で「糸」が流れていたのを覚えています。妹が中島みゆきさんをすごく好きなこともあって、よく聴いていました。当時は、声や曲調がすごく好きで聴いていましたけど、歌詞の意味は全然わかっていなかったですね(笑)。大人になってから聴くと、「こんなに深い意味を持っているんだ」と思いました。

あと、中学か高校の授業の中で、「人の出会いは糸と糸がつながって編み目になって……」みたいな話を聞いて、すごく印象に残っていたんです。だから「糸」の歌詞を理解した時に、その授業の話とつながったのを覚えています。

誰しもそれぞれに思い入れのある楽曲ですよね。映画では、楽曲の歌詞にある「縦糸」と「横糸」のようにさまざまな登場人物の人生が交錯しますが、完成した作品を見ていかがでしたか?

いろんなパートがある作品の中で、私は主にシンガポールで撮影していましたけど、みんな各々違う場所で違う人生を送っていたのだな、違う人の人生を見たなという感じですね。全体的に静かな映画の中で、私たちのシンガポールパートは割と明るく華やかで、キラキラしている部分だったなと思いました。たくさんある素敵な糸の中のひとつを演じられたのはうれしかったです。

山本さんが演じられたのは、小松菜奈さん演じる葵の職場の先輩であり、のちにシンガポールで一緒に事業を始める親友・玲子役。演じてみていかがでしたか?

私は玲子ほどテンションが高くないので(笑)、テンションを上げるのは大変でした。あと、英語を話すのも、クラブで踊るのも……。リズム感が本当にないので、この作品に入っている時は毎日アゲめの音楽を聴いてリズムをとってみたりしていたんですけど、難しくて(笑)。

お話をいただいた時に、玲子の性格について「こうだ」と思い込んじゃっている部分があったのですが、監督は「そっちじゃない」とおっしゃっていて、なかなか頭を切り替えられず難しかったです。本当に直前までずーっと考えていて、これはもう現場で葵の芝居を受けて、感じた気持ちで演じるしかないなと思いました。だから、シンガポールに着くまでわからなかったですね。

小松さんと現場をご一緒して、発見したことなどはありましたか?

私と菜奈の年の差がいい具合に、玲子と葵の先輩・後輩関係を出せていたかなと思いました。菜奈自体も悩みなども色々話してくれて、かわいくて、守ってあげたくなる子なんです。昔共演した時も、菜奈がお芝居2作品目くらいだったので、まだまだ周りが分からない菜奈を見ていた部分が、先輩として葵を支えていた玲子と、リンクする部分はあったかもしれないですね。

葵と玲子の関係性に注目してもらいたいですね。シンガポールでの撮影はいかがでしたか?

ご飯がおいしかったです! ご飯の上にチキン系のおかずが乗っているのとか、ロケ弁の選択肢が5種類ぐらいあって。アジアの食はおいしいなあと思いました。

撮影の合間に、ハジレーンという場所に行きました。すごくインスタ映えするカラフルな壁がたくさん並んでいて、いっぱい写真を撮ったので「インスタに載せなきゃな」とずっと思っているんですけど、忘れています(笑)。

ぜひ見たいので載せてほしいです! 小松さんとも観光されましたか?

休みがなかなか重ならなかったので、あまり一緒には動けませんでしたが、撮影の途中で、近くにあったお店でタピオカを飲んだりしました。中華街みたいなところで一緒におみやげ買いに歩いたりもしましたね。

山本さんはシンガポールパートでしたが、映画は北海道、沖縄の壮大な風景も印象的です。北海道や沖縄に思い入れはありますか?

北海道には、昔キロロリゾートに家族でスキーをしに行きました。仕事で行った時は、行って帰るみたいな感じなので、いつかちゃんと観光してみたいなと思っています。チーズやスープカレーも好きなので。

沖縄も、福岡に住んでいる頃に家族で石垣島に行った記憶があります。沖縄国際映画祭や仕事でも何度か行ってはいますが、あまり遊べてないですね。あぐー豚のしゃぶしゃぶを食べました。食べ物の記憶しかないですね(笑)。

よく旅行をされるご家族なんですね。今も旅行はよくされますか?

多くて、年に2、3回ぐらいですね。海外が好きなんですけど、スケジュールがあまりとれないので、国内にちょこちょこ行ったり。一番最近だと、母と(広島の)尾道に行きました。美術館にも行きましたし、古民家系のカフェがいっぱいあったりして、楽しかったです。

地元の福岡は観光地としても人気ですが、おすすめの場所はどこですか?

今は糸島が楽しいと思います。カフェも充実していて、インスタ映えするアート系のスポットもあったりして、若い子に人気みたいです。ドライブで行くと楽しいと思います。

では最後に、これから大人の女性になっていくなかで、どんな旅をしてみたいですか?

大人じゃないといけないような、少しお高い旅館とかに行ってみたいなと思います。スパやおいしいものを食べて、ゆっくりしたいです。一人でゆっくり過ごす時間がある今のうちにできるだけ、いろんなところに行きたいです。

山本美月さんが旅に行きたくなる本

『北北西に曇と往け』

『北北西に曇と往け』

入江亜季/著
KADOKAWA
既刊4巻、漫画誌『ハルタ』で連載中

クルマと話ができる17歳の探偵・御山慧が、北欧アイスランドを愛車で駆け巡るジュヴナイル・ミステリー。「アイスランドで暮らしている男の人が、車に乗っていろんなところに行くんです。車を運転して、途中でコーヒーを飲んだりして、その自由な感じがかっこいいなあと思いました。行ったことがないので、すごくアイスランドに行きたくなります!」(山本)
INFORMATION
『糸』©2020映画『糸』製作委員会

『糸』

全国東宝系にて近日公開予定

中島みゆきの名曲「糸」から着想を得て描かれる壮大なラブストーリー。平成元年に生まれ、北海道で育った漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈)。13歳の時に出逢い初めての恋をした二人が、運命に引き離され、それぞれの人生を歩んできた末に再びめぐり逢うまでの18年間を、平成という時代の変遷と共に描く。北海道、東京、沖縄、シンガポールでのロケーション撮影も見どころの一つ。

監督:瀬々敬久
出演:菅田将暉、小松菜奈、山本美月、高杉真宙、馬場ふみか、倍賞美津子、永島敏行、竹原ピストル、二階堂ふみ、松重豊、田中美佐子、山口紗弥加、成田凌、斎藤工、榮倉奈々ほか
配給:東宝

Profile
山本美月
山本美月Mizuki Yamamoto

1991年7月18日生まれ、福岡県出身。2009年に雑誌「CanCam」専属モデルとしてデビュー。ドラマ『幸せになろうよ』(2011年/フジテレビ)で女優活動を開始し、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)でスクリーンデビュー。主な出演作品に、ドラマ『パーフェクトワールド』(2019年/カンテレ・フジテレビ系)、『ランチ合コン探偵~恋とグルメと謎解きと~』(2020年/読売テレビ・日本テレビ系)、映画『ピーチガール』(2017年)、『友罪』(2018年)、『去年の冬、きみと別れ』(2018年)、『ザ・ファブル』(2019年)などがある。

あの人の旅カルチャー

今月のテーマ「動物」 「動物」をテーマに本と映画の“目利き”が作品をセレクト。
かわいい犬や猫たちに、人間と動物の絆を描いた作品も要チェック!

Book

  • 『いつも彼らはどこかに』

    『いつも彼らはどこかに』
    人気作家・小川洋子さんの動物が大事な役割を担う短編集。競馬の海外遠征では出走馬の緊張緩和のため気立てのいい一頭が同行するそうですが、名馬ディープインパクトに帯同したピカレスクコートに遠出恐怖症の自分を重ねる女性が主人公の「帯同馬」がおすすめ。他に身代わり旅行の仕事、動物園のチーターに強く惹かれる人など、相手に寄り添う心の旅が静謐な文体で書かれた傑作ぞろいです。
    小川洋子/著
    539円/新潮文庫
  • 『ネコ温泉』

    『ネコ温泉』
    ネコのいる宿に特化した異色の温泉案内。裏表紙のお出迎え写真に猫好きならもうメロメロです。大分・由布院の一日2組限定のオーベルジュから箱根の老舗旅館、静岡の海の見える民宿まで、お湯とふれあいでココロはぽかぽか。宿猫となったきっかけや「挨拶回りをする」「気持ちが顔に出る」「野生は消えず」などの性格エピソードが満載。もちろんお湯質の情報も。お気に入りに会いに行こう!
    伴田良輔/著
    1,540円/辰巳出版
  • 『死ぬまでに見たい!絶景の鳥』

    『死ぬまでに見たい!絶景の鳥』
    バードウォッチングを旅の目的にする人も多いと思います。本書は世界の絶景の中にいる鳥たちの写真集で、日本からは北海道のタンチョウヅル、中部山岳地帯のライチョウなどを収録。ハクチョウは世界的に人気のようですが、山中湖の富士山をバックに朝の青空、夕方のピンクの光の中で映えるコブハクチョウは、外国勢の中でひときわ美しさを放っています。見る者の心を羽ばたかせる1冊。
    1,760円/エクスナレッジ
間室道子さん 代官山 蔦屋書店

代官山 蔦屋書店に勤める文学担当のコンシェルジュ。雑誌「婦人画報」の連載を持つなど、さまざまなメディアでオススメの本を紹介するカリスマ書店員。文庫解説も手掛け、書評家としても活躍中。

Movie

  • 『幸せへのキセキ』

    『幸せへのキセキ』
    これ、アンビリーバボーな実話! 妻を亡くした父親が子どもたちと新たな生活を始めるために購入した家は、なんと熊にラクダに虎にライオンまで揃った動物園付き物件。250頭の動物たちと暮らすことに!? 2つの道に迷った時は“ワクワクする方”を選択したい。そんな決断のヒントを学べます。タイトル通り、このお話はまさに奇跡であり軌跡でもあって。モデルとなったダートムーア動物園はイギリスに健在。自然いっぱいの場所に暮らす動物たちに会いたくなる。
    Blu-ray2,619円/DVD1,561円 発売中
    発売元・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント
  • 『ボブという名の猫
     幸せのハイタッチ』

    『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』
    1匹の野良猫との出会いをきっかけに、どん底生活を送っていたストリートミュージシャンが再生していく、心温まるノンフィクションベストセラーの映画化。“パートナーと暮らす意義”を考える内容で意外にも深い。でも、小難しくない! セカンドチャンスは意外な場所に転がっているかも? と明日への希望を見出せます。猫のボブ役には、本物のボブが登場。これが誰もが認める美猫で、全シーンため息混じりの可愛さ……。特に肩乗り猫の画力は、なんとも強力。
    Blu-ray5,170円/DVD4,180円 発売中
    発売元:コムストック・グループ、販売元:ポニーキャニオン
  • 『僕のワンダフル・ライフ』

    『僕のワンダフル・ライフ』
    「飼い主に会いたいから、何度だって生まれ変わる!」この一文だけで涙を誘うレベルの、わんこの輪廻転生物語。犬を飼ったことのある人はもれなく泣く……。犬映画推定ベストワンッ! 世界一の犬好き監督として知られる安心と信頼のハルストレム(『HACHI 約束の犬』など)作品です。犬視点で視る世界の見え方や人間との絆の描き方も、すべてお手の物。トゲついた心に愛と平穏をもたらしてくれます。わんこの転生とともに描かれる1人の人間の成長、挫折、再生。人生のヒントがここに!
    Blu-ray2,075円/DVD1,572円 発売中
    発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
東 紗友美さん 映画ソムリエ

映画ソムリエとして、テレビ・ラジオ番組での映画解説や、映画コラムの執筆、映画イベントのMCなど幅広く活躍。映画ロケ地巡りも好き。日経電子版で「映画ソムリエ 東紗友美の学び舎映画館」を連載中。

※価格はすべて税込みです