『カツベン!』で、日本映画の黎明を支えたしゃべりの天才“活動弁士”を演じている高良さん。完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
楽しい映画でよかったなと思いました。サイレント映画の時代って、映画が無声だから常に人が動いているじゃないですか。だから活劇だと思うんですけど。それが、音が入っていても活劇になっていて、人の動きがちゃんと画で表現されているのが好きでした。
演じるにあたって活動弁士の特訓をされたそうですが、相当大変だったのでは?
楽しかったです! 一生に一度出合えるか出合えないかの役だと思うんですよ。日本映画の歴史の中にあった活動弁士を、自分が演じられるのが最高すぎて即決でしたし、その練習ができるなんてもう最高じゃないですか。(完成した作品を見た時も)活弁のシーンがやっぱり好きでしたね。自分が活動弁士をやって、それが映っているのが幸せだなと思いました。
高良さんが演じた活動弁士・茂木は、自信家で傲慢なところがあり、よからぬ行動にも出ますが、どこか憎みきれない人物ですよね。
一生懸命ですからね、活弁に対しては。活弁しかなくて、活弁に命を懸けている人ですから。嫉妬や暴力的なところ、女好きな面も出て来るけど、この人は自分がやっていることに対しての責任の持ち方、プライドの持ち方が徹底しているから、何をやっても許されるところはありますよね。
本作は各地でロケをされていて、例えば物語の中心となる映画館「靑木館」も実際の建物で撮影されていますが、ロケや実際の場所での撮影というのは演技に影響はありますか?
やっぱりロケの力はあると思いますよ。遠い場所でのロケは必ず泊まりじゃないですか。泊まりになると、家に帰って洗濯物をしたり掃除をしたりといった自分の私生活がなくなるから、その分楽だし、気持ちが入り込みやすい。だからロケは大好きですし、しかも実際にある建物だったら、そこのパワーってあるはずじゃないですか。それを分けてもらえる気がするので、そういう場所を使わせてもらえるのはすごく嬉しいですね。
ロケ先で観光的なことをされたりもします?
その街を歩いて回るのが大好きで、ロケに行ったら必ずします。レンタカーを借りたり、行きたい場所をリサーチして行くこともありますね。今回は福島だったんですけれど、泊まっていた宿の周りは歩き回りました。
少し話が変わりますが、映画や本を通して「ここに行きたい」「旅に行きたい」と思うことはありますか?
すごくあります。映画を見ていて「どこで撮っているのかな」と思いますし、本の舞台が気になって調べてみて「行ってみよう」と思ったり。旅に行きたくなるので言うと、『モーターサイクル・ダイアリーズ』や『イントゥ・ザ・ワイルド』、『LIFE!/ライフ』とかね。冒険から旅につながる感じが好きですね。『LIFE!/ライフ』はアイスランドの景色もきれいですし。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、何者でもない若者2人がバイクで国を渡っていくんですが、その国の現状を見て「何かしなきゃいけない」という思いが出て来て、(チェ・)ゲバラになっていくわけじゃないですか。旅ってそういう力がありますよね。本や携帯で知っていた情報が、現地に行くと変わる。旅の醍醐味ですよね。
最近ひとりでヨーロッパ4か国を列車で回られたそうですが、旅はよく行きますか?
僕は旅がないと絶対にダメです。年に一回は必ず行きたいですし、そのために頑張れているという感じです。
旅でリセットするような感覚ですか?
「取り戻す」という感じですね。自分のことを知らない人たちがたくさんいるし、自分の力で生きていかなきゃいけないし、言葉もわかんないし……みたいな状況のなかで、だんだん「あ、俺こんな感じだったよな」って。旅に行って「こういうのが好き」「あそこに行きたい」という風に、自分を取り戻す感覚です。
特に記憶に残る旅というと?
たくさんありますけど、キューバは自分が行ったタイミングが良すぎて、いろんなイベントを見られたから思い出深いですね。インドネシアをバイクで旅したのも楽しかったし。この前の4か国の列車の旅も面白かったです。(ドラマの)イン前だったから、安全で日焼けがない旅にしようと思ったんですよね。
自分で計画するんですか?
します。今回宿を決めずに行ったんですけど、「Booking.com」って最高じゃないですか(笑)? 朝見て「お! 早朝セール」とか(笑)。すごくいいホテルがかなり安くなっていたりするので、パッと決めて、ボタンひとつでホテルが決まって、行けば入れるなんて最高。ホテル決めないのもいいなーと思いました。
思い出に残る宿はありますか?
キューバのカーサは面白かったです。日本でいうゲストハウスですかね。朝起きるといろんな人種の人たちが集まって会話して、「じゃあ俺は今日あそこ行くわ」って散って行く、ああいう感じいいなと思いました。すごく安かったですし。旅に行くと毎回、せっかくならと思ってその都市のいい宿に一泊だけでも泊まってみるんですけれど、泊まってみて「カーサがよかったな」と思いました。確かに便利で快適だけど、カーサでの経験にはかなわなかったですね。
旅に必ず持って行くものはありますか?
とりあえずガイドブックですね。その国の気温や、電車の乗り方、タクシーに乗る時に気を付けることなんかが書かれた、最初の10ページくらいの部分がマジで必要。あれに助けられることが多いです。その国で生きていくための基本は重要です。