井上 岳久さん
文化や歴史、地域的特色、栄養学まで精通するカレー研究の第一人者。総括プロデューサーとして横濱カレーミュージアムを成功に導き、現在は「カレー大學」の学長として業界を牽引する人材を育成しています。ほかにもレトルトカレーのコンサルティング、イベントの企画運営、飲食店のメニュー開発といった多岐にわたる事業を展開。『カレーの経営学』(東洋経済新報社)など著書も多数あります
カレー大學 https://currydaigaku.jp/
カレー総合研究所 http://www.currysoken.jp/
伝統のカレーが登場したのは1931年(昭和6年)ごろ。香味野菜の粒感を残すため、あえて裏ごしをしないなど、今なお息づくのは近代フランス料理の父オーギュスト・エスコフィエ氏から学んだ技。十数種のスパイスが加えられ、ソースはより現代的な仕上がりに。弾けるように甘さが広がるトマトのコンフィをはじめ、白ワイン風味のキノコソテー、バターが香る蒸しジャガイモなど具材も多彩。まるで交響曲のように、カレーと野菜が豊かなハーモニーを奏でます。
帝国ホテル 東京/パークサイドダイナー
住所/〒100-8558東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル本館1F
電話/03-3539-8046
定休日/無休
営業時間/7:00〜22:00(L.O.21:30)
アクセス/東京メトロ日比谷線、千代田線、都営地下鉄三田線 日比谷駅から徒歩約3分
駐車場/425台
王道中の王道です。全てにおいてディテールへのこだわりを感じますが、やはり印象的なのは野菜。それぞれ風味と食感が際立っており、カレーソースと見事に調和しています
1927年(昭和2年)ホテル開業時から、カレーのレシピを守り続けています。カレー粉を扱うイギリス企業クロス&ブラックウェル社の依頼を受け、レシピを考案したのは初代総料理長サリー・ワイル氏。ドリアの発案者としても知られる伝説の料理人です。深いコクと旨味のベースは、鶏肉や野菜をじっくりと煮込んで仕上げた特製ブイヨン。リンゴ、チャツネ、ココナッツミルクのフルーティな甘さも加わり、スパイシーな風味を見事に引き立てています。
ホテルニューグランド/ザ・カフェ
住所/〒231-8520 神奈川県横浜市中区山下町10 ホテルニューグランド本館1F
電話/045-681-1841(代表)
定休日/無休
営業時間/10:00〜21:30(L.O.21:00)
アクセス/横浜高速鉄道みなとみらい線 元町・中華街駅から徒歩約1分
駐車場/118台
トラディショナルな雰囲気で、非常に居心地のよい空間です。ここで歴史に思いを馳せながらカレーを味わうのが最高の贅沢。福神漬などの副菜も華やかで味わい深いものばかり
約300グラムという大ぶりな伊勢海老を使用したカレー。注文を受けてから活きた伊勢海老を軽くボイルし、バターの上澄みでソテー、コニャックと白ワインでフランベするなど、調理法は実に繊細です。50年の歴史を誇るカレーソース、伊勢海老入りのアメリカンソースも加え、素材の風味を凝縮。隠し味の生クリームとレモンにより、味の輪郭を鮮明に浮かび上がらせています。「料理は芸術」との名言で知られる先々代の総料理長、高橋忠之氏が残した、いわば作品とも言える存在。
志摩観光ホテル/ラ・メール ザ クラシック
住所/〒517-0502 三重県志摩市阿児町神明731 志摩観光ホテル ザ クラシック1F
電話/0599-43-1211
定休日/無休
営業時間/7:00〜10:00(L.O.9:30)、11:30〜14:30(L.O.14:00)、17:30〜22:30(L.O.20:30)※
アクセス/近鉄志摩線 賢島駅から徒歩約5分
駐車場/90台
ただでさえ格式のあるホテルのカレーのなかでも、ひときわ高嶺の花。昔から高級カレーの代表格として語られることが多く「一度は食べてみたい」とカレー通の間でも憧れの的です
1873年(明治6年)創業という現存する日本最古のリゾートホテルですが、カレーが有名になったきっかけは2003年でした。蔵の中に眠っていた大正時代のカレーレシピが発見されたのです。少なく見積もっても100年以上も昔のロマンあふれる味わいを、初代総料理長の中西健一シェフが復刻再現。「大正時代にはすでに、ここまで美味しいカレーがあったのか」と大きな評判を集め、いまや日光を代表する名物料理にもなっています。
日光金谷ホテル/メインダイニングルーム
住所/〒321-1401 栃木県日光市上鉢石町1300 日光金谷ホテル本館2F
電話/0288-54-0001
定休日/無休
営業時間/7:30〜L.O.9:30、11:30〜L.O.14:30、18:00〜L.O.20:00※
アクセス/東武鉄道日光線 東武日光駅から徒歩約20分
駐車場/60台
100年以上前、黎明期の欧風カレーを味わえるというのは、めったにできない体験です。食の歴史を知るうえでも、遠方まで足を運んで食べに行く価値があるでしょう
カレーの具材は、愛知が誇る銘酒「蓬莱泉(ほうらいせん)」の酒粕で育てたブランド黒毛和牛。鳳来牛(ほうらいぎゅう)という品種のなかでも特に希少であり、月に5〜6頭しか出荷されていません。和牛のオリンピック言われる「全国和牛能力共進会」でも優等賞を獲得。「煮込んでも力強い旨味がある」といった特徴を総料理長の今里武氏が活かしています。将棋の王位戦で勝負メシとなるなど、その評判は全国に浸透中です。
ホテルアークリッシュ豊橋/ザ ガーデン
住所/〒440-0888 愛知県豊橋市駅前大通1-55 ホテルアークリッシュ豊橋3F
電話/0532-51-1118
定休日/火曜日、日曜日
営業時間/11:30~14:00、17:30~21:00
※新型コロナウイルスの影響により現在はバースペースのみの営業
アクセス/JR東海道新幹線、東海道本線、飯田線、名鉄名古屋本線 豊橋駅から徒歩約1分、駐車場/無(提携駐車場あり)
たまたま仕事で宿泊した際に「ここまで高級感のあるホテルが地方都市に!?」と驚きました。和牛カレーのクオリティも予想以上。周囲にもよく紹介している穴場的なホテルです
金曜昼にカレーを食べるのが伝統という海上自衛隊。艦艇ごとに異なる味を、それぞれの艦長と料理長の協力のもと「呉海自カレー」として町ぐるみで再現しているのが呉市です。各所に点在する提供施設のなかでも、3種を同時に楽しめるのはクレイトンベイホテルだけ。「シンプルな味を予想していましたが、実際には個性豊かでびっくり。ぜひ食べ比べてみてください」と井上さんも太鼓判。のんびりホテルステイしながらカレー三昧というのも、ステキな旅のプランです。
クレイトンベイホテル/呉濤/コートダジュール
住所/〒737-0822 広島県呉市築地町3-3 クレイトンベイホテル1〜2F
電話/0823-26-1111(代表)
定休日/無休
営業時間/呉濤11:30〜14:30(L.O.14:00)、17:30〜21:00(L.O.20:30)、土曜日・日曜日・祝日11:30~14:30(L.O.14:00)、17:00~21:00(L.O.20:30)、コートダジュール10:00~18:00(L.O.17:00)※
アクセス/JR呉線 呉駅から徒歩約17分
駐車場/約120台
どんな場所で誰と一緒に楽しんだのか。料理の味は食べる環境によっても大きく左右されるものです。身近にある“カレー”だからこそ、一流ホテルで食べることで違いを感じ、特別な思い出の味として記憶に残りやすいはず。ぜひ大切な相手を連れて、非日常の味わいを満喫してはいかがでしょうか。
ホテルには幅広い層のゲストが訪れるため、万人受けする味が求められます。そんななかでお客を満足させるには「磨き抜いた高い調理技術を、いかに一皿で表現するか」が大切です。さまざまなこだわりを詰め込みながら独自の味を作り上げている、一流の“ホテルカレー”をご紹介しましょう