能登の観光列車「のと里山里海号」&「花嫁のれん号」乗り比べ記
三重県在住。愛読書は時刻表。暇さえあればリュックひとつで旅に出かけるLIKESライター・なおは、こよなく愛する鉄道を使い、温泉や絶景巡りをしています。今回の旅先は北陸。能登半島を走る観光列車2列車を乗り継ぐ旅をしてきました。
目次
奥能登の鉄道の玄関口・穴水駅から旅をスタート
こんにちは。
今回、わたしは石川県の能登半島にある穴水(あなみず)駅にやってきました。
能登半島は金沢方面から延びるJR七尾線が和倉温泉駅まで走り、その先穴水駅までは第三セクターの「のと鉄道」が走っています。かつては、朝市で有名な輪島や能登半島の先端、珠洲(すず)市の蛸島(たこじま)まで鉄路が伸びていたのですが残念ながら廃止となっています。
穴水駅に来たのはここから七尾駅まで走る観光列車「のと里山里海号」に乗るため。わたしが駅に到着したときにはすでにホームで待っていてくれました。車体は日本海をイメージした濃青。1日2往復半の運行をしています。
「のと里山里海号」の車内をご案内
列車は「里山車両」と「里海車両」の2両編成で、わたしの座席がある「里山車両」はオレンジを基調にしています。グループで談笑が楽しめるボックスシートやラウンジシート、海側には七尾湾の絶景が楽しめるカウンターシートのほか、里山車両にのみお土産品の販売カウンターがあります。
輪島塗を田鶴浜建具の組子で囲ったパネルが出入り口に設置されており、能登の伝統工芸品のすばらしさを見せてくれています。
「里海車両」の座席配列は「里山車両」と同じですが、海をイメージしたブルーが基調となっています。
ローカル線に揺られながらスイーツをいただく
14:15、「のと里山里海4号」が出発しました。のと鉄道のスタッフに見送られて七尾駅に向けて約1時間の旅が始まります。
わたしの座席にはケーキとクッキーが。4号にのみ「スイーツプラン」があり、列車に乗りながらスイーツとコーヒーを楽しむことができます。(当面の間、1号・2号スイーツプランは休止)お昼時に走る3号には寿司御膳プランがありますよ! いずれも6日前までの予約が必要です。
スイーツプランにはオリジナルの箱に入ったクッキーやドーナツもお土産についてきます。スイーツはいずれも七尾市出身のパティシエ 辻口博啓氏が和倉温泉に開くスイーツ店「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」のものです。
沿線の見どころ
ケーキの生クリームを口の中で溶かしつつ、車窓から見える七尾湾の景色を楽しみます。アテンダントによる沿線の見どころ案内もありながら、観光スポットでは少しの間停車をしてくれるサービスもあります。
海の中に建つのは「ボラ待ちやぐら」。魚のボラが回遊してくるのを待って網を引き揚げる江戸時代に盛んだった、地域独特の漁の際の見張り台として使っていたやぐらです。上に人が乗っているように見えますが、もちろん人形です。
能登鹿島駅に到着しました。駅名標の写真の通り、桜の名所で知られ4月になるとたくさんの観光客がここを訪れます。わたしも見たことがないのでぜひ一度桜の時期に来てみたい……。
列車はしばらく七尾湾に沿って走ります。わたしが乗車したのは1月8日でしたが、雪はほとんどなく、荒れるという冬の日本海湾内はとても穏やかでした。
鉄道ファンなら一度は見ておきたい「郵便列車」
列車は能登中島駅に到着して10分停車。なかなか見ることができないあるものを見学するためです。
見学したのは「郵便列車」。旧郵政省が所有していた全室郵便専用の客車オユ10で、かつては全国を走って郵便物の輸送を行っていましたが、昭和61年、国鉄の民営化を前に廃止されました。わたしの子供のころはよく見かけたのでとても懐かしいです。あ、歳がばれる…。
郵便車両は能登中島駅のほか数か所でしかなく大変貴重です。平成16年に移設されてからはのと鉄道や保存会の手によって大切に保存されていてそこまで古さを感じさせない努力に敬服するばかりです。
七尾に向けてラストスパート
列車は再び七尾湾を望みながら走ります。はるか彼方に全国的に有名な温泉地、和倉温泉が見えてきました。スイーツと能登の景色を楽しませてくれた「のと里山里海号」の旅ももうすぐ終わりです。
土休日運転の「のと里山里海」号は全席指定です。予約は電話でのみの受付で、同時にスイーツプランなども受付けてくれます。料金を振込むと乗車の案内が郵送されるので、七尾駅や穴水駅で切符と交換してください。ただし七尾駅は駅員がいない時間帯もあるので注意してください。
◆のと里山里海号
運転区間:JR七尾線七尾駅~のと鉄道穴水駅
運転日:土休日に下り3便、上り2便
料金:乗車券のほか、整理券500円。スイーツプランは1,530円、寿司御膳プランは2,550円が別途必要です。(要予約)
電話:0768-52-2300(鉄道観光列車予約センター)
能登の伝統的風習を紹介する「花嫁のれん館」へ
15:18、列車は定刻通り終点の七尾駅に到着しました。いつもならここでまた次回~! となるところですが今回は違います。七尾駅から金沢駅に向けて走る別の観光列車に乗り継ぐのです。発車時刻が16:30と少し時間があるので観光列車にちなんだ「花嫁のれん館」に立ち寄ってみましょう。
能登、加賀、越中の一部地域の伝統的風習である「花嫁のれん」。加賀友禅で仕立てられた色鮮やかなのれんを婚礼時に婚家の仏間入口に飾り、花嫁がこれを潜って仏壇参りをすることで婚家の祖先に結婚の報告をするのが習わしとされています。
館内では数々の豪華な花嫁のれんが展示されています。娘の結婚を華やかに彩り見送りたいという両親の親心であり、本人にとっても潜ることにより生家と別れ、婚家の一員になるという「覚悟ののれん」でした。挙式を終えて1週間で役目を終えるのですが、注いだ気持ちの重さは測り知れないものがあります。
駅に戻り、「花嫁のれん号」に乗車
列車の発車時間が近づいてきたので駅に戻ります。先ほど七尾駅にも掲げられていた花嫁のれんですが、思い切り裏から潜っていました。ご法度の極みですね。
一青窈さんの「ハナミズキ」が流れる中、特急「花嫁のれん4号」が入線してきました。花嫁のれん館で見たのれんを上回る絢爛豪華ないでたちです。和倉温泉駅始発で七尾駅では停車後すぐの発車なので、列車の撮影はあとにして乗り込みます。
金沢の金箔でお出迎え
「花嫁のれん号」は土休日を中心に1日2往復、金沢駅~和倉温泉駅を結びます。
車内に入ってまず驚くのが金色のエントランス。金沢の有名な金箔メーカー「箔一」による鮮やかな金箔の装飾です。四季折々の花があしらわれていて上品さが感じられます。
半個室でプライベート空間が楽しめる1号車
車内をご紹介しましょう。列車は2両編成。1号車は8つの半個室に分かれていて、プライベートな時間を楽しむことができます。笹の間、桜梅の間など名前がついていて料亭に来たかのような印象です。カーペットは日本庭園の飛び石をあしらっていて庭園を歩いているような印象を与えてくれます。壁面には各部屋テーマに沿った友禅の柄があしらわれており、花嫁のれんに包まれているようです。
談笑も一人で景色を堪能もできる2号車
流水をイメージしたカーペットの敷かれた2号車。カウンター席もあって一人でゆっくり能登の景色が広がる車窓を眺めることができます。祭りなどを紹介するビデオも流れていて旅の楽しみを膨らませてくれています。
車内でしか味わえない「ほろよいセット」を堪能
わたしが乗った「花嫁のれん4号」は16:30発。冬至を過ぎた頃なので車の外はもう何も見えませんが、列車でしか楽しめない「ほろよいセット」をご紹介します。
アテンダントが紅白のおめでたい箱を運んできてくれました。お酒の小瓶と加賀棒茶がついてきます。
なかなか豪華です! もっと簡単なお惣菜ぐらいが出るのかなと思っていたのですが、いい意味で期待を裏切られました。ブリや能登牛時雨煮、五郎島金時芋など地域の山海の幸がふんだんに使われています。車窓は眺められませんが十分贅沢な時間を味わえます。
このほか、1・3号ではスイーツセット、2号では和軽食セットが楽しめます。全国のJRの主な駅のみどりの窓口・主な旅行会社で予約を必ず行う必要があります。メニューは季節で変わるのでいろんな時期に行って旬の味を楽しみたいですね。
途中、千里浜なぎさドライブウェイのある羽咋(はくい)駅に停車したあとは金沢までノンストップ。日が暮れた金沢駅に到着しました。定期特急「能登かがり火」もある同区間ですがせっかく旅するなら旅情を掻き立てる観光列車で行き、移動も楽しみたいもの。能登にお越しの際はぜひ「のと里山里海号」、「花嫁のれん号」にご乗車ください。
◆特急「花嫁のれん号」
運転区間:IRいしかわ鉄道金沢駅~JR七尾線和倉温泉駅
運転日:金土休日及び多客期に2往復
料金:全席指定で乗車券のほか特急券が必要。ほろよいセットは2,300円、和軽食セットは2,900円、スイーツセットは2,000円が別途必要です。(要予約)