【今月の旅写真】旅写真の表現を広げるレンズフィルターのススメ

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2023.09.11

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【今月の旅写真】旅写真の表現を広げるレンズフィルターのススメ

「雰囲気がよくてカッコいい」、「光が柔らかく印象的」、そんな写真にはちょっとした秘訣があるのをご存知でしょうか。多くのプロカメラマンや写真家が愛用している「レンズフィルター」は、デジタルカメラで撮影する際に役立ち、旅先のさまざまシーンで活躍してくれます。誰でも簡単に取り入れることのできる「レンズフィルター」で旅写真の表現を広げてみませんか? 撮影シーンと使い方のポイントを併せて、特におすすめの4つのフィルターをご紹介いたします。

Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材: RICOH GRⅢ&GRIIIx

目次

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レンズフィルターとはどんなもの? 

おすすめその①|メリハリのきいた写真に仕上がるCPLフィルター

おすすめその②|光を拡散し、柔らかい表現が得意なブラックミストフィルター

おすすめその③|時間の流れを表現するNDフィルター

おすすめその④|ノスタルジックな雰囲気に仕上がるレトロカラーフィルター

おわりに

レンズフィルターとはどんなもの? 

レンズフィルターは、カメラのレンズ前に取り付けて使用するガラス製のフィルターです。レンズをキズや水滴から守る保護フィルターと、写真に特殊効果を与えて表現をより豊かにするタイプのフィルターがあります。フィルターといっても、スマホアプリのように、撮影後デジタル加工を施すものではなく、レンズを通る光を調整して効果をプラスし、写真表現の幅を広げてくれるものです。

カメラに装着しているレンズの口径を確認し、それと同口径のフィルターを購入するだけで撮影することができます。口径サイズはレンズキャップの裏面に記載されているので、確認してみましょう。フィルターの取り付け方法も簡単です。ねじ込み式やマグネットで取り付けられるものなどがあり、わたしは後者を愛用しています。

愛用中のH&Y filters Japan製レンズフィルター

レンズキャップの裏側に口径サイズを確認。サイズが異なってしまうと取り付けられないので注意しましょう

GRIIIとGRIIIxには直接フィルターが取り付けられないため、専用のアダプターを用いて装着します

H&Y filters Japanのフィルターはマグネット式で取り外しが簡単!

おすすめその①|メリハリのきいた写真に仕上がるCPLフィルター

CPLとは「Circure Polarized Light」の略です。偏光(へんこう)フィルターといいます。フィルター枠を回転させることにより効果の強弱が変化するのが特徴で、その方向や角度によって反射する光の量をコントロールできます。被写体と対面する角度によっては偏光の効果が薄れるため、実際にカメラのファインダーや、背面モニターで効果を確認しながら調整します。

CPLフィルターを使って撮影すると、コントラストが高くメリハリの利いた青空になります

CPLフィルターを使って撮影すると、コントラストが高くメリハリの利いた青空になります

CPLフィルターは、フィルター枠を回しながら効果の出る角度を確認して撮影します

CPLフィルターは、フィルター枠を回しながら効果の出る角度を確認して撮影します

CPLフィルターを使うことで、肉眼では感じにくい白っぽい反射光が抑えられ、被写体本来の色を再現し、より鮮明な写りになります。空や草木がより鮮やかになり、水面やガラスの余計な映り込みがなくなり中まで綺麗に撮影することが可能になるため、多くの撮影シーンで役立ちます。どんな旅先にも持っていきたいフィルターです。

フィルターなし

フィルターあり:岩場に反射した光が抑えられ、水の中まで見えるようになりました。緑色も鮮やかです

フィルターなし

フィルターあり:水面の反射が消え、スポットライトのようになり、視線を集中させることができます。「天使の梯子」も鮮明に

フィルターなし

フィルターあり:ショーウィンドウの不要な写り込みや、反射も抑えられます。空の色もクリアです

CPLフィルターを着けて撮影した写真は、色乗りがよく、スッキリしていてインパクトのある力強い写真になります。写真がなんだかぼんやりしてパンチが足りない、主役が明確にならないと感じたら、活用してみましょう。

おすすめその②|光を拡散し、柔らかい表現が得意なブラックミストフィルター

ブラックミストフィルターとは、フィルターの光学ガラスの中に黒く微細な拡散材を挟み込んでいるため、光を拡散することができるソフトフィルターです。 画面の中のハイライト(白く明るい部分)とシャドウ部のコントラストを抑えることができ、全体的に柔らかな描写になります。夜景の光や逆光、木漏れ日などの点光源、日中は逆光で撮影することで光を柔らかく拡散し、幻想的な雰囲気に仕上がります。夜の街中、テーマパーク、イルミネーションなどの光あふれる場所や、ポートレートなどで活用するのがおすすめです。

イルミネーションの輝く光を拡散してくれるブラックミストフィルター

イルミネーションの輝く光を拡散してくれるブラックミストフィルター

わたしの使用しているブラックミストフィルターには「1/8」と「1/4」、2種類の濃度があり、「1/8」はより自然で柔らかく、「1/4」は光の拡散量が大きくなります。光の強さや量によって効果の強弱を見ながら使い分けます。

フィルターなし

フィルターあり:木漏れ日が優しく降り注ぎ、ミストを浴びているかのように表現できます(濃度1/4)

フィルターなし

フィルターあり:光の一つひとつがふんわりと明るく広がってロマンティックです(濃度1/4)

このほか、白色や明るい色にもソフトな印象を与えてくれます。オールドレンズ(フィルムカメラで使われていた昔のレンズ)で撮影したような優しく、柔らかい表現が得意なフィルターです。

ブラックミストフィルターは、強い逆光を受けると、光が拡散されて優しく味わいある雰囲気に

ブラックミストフィルターは、強い逆光を受けると、光が拡散されて優しく味わいある雰囲気に

おすすめその③|時間の流れを表現するNDフィルター

NDとは、「Neutral Density」を意味し、減光フィルターといわれています。レンズから入る光の量を減らすために使う黒いフィルターです。サングラスのような役割を持っているで、サングラスをかけると視界が暗くなるのと同様に、レンズを通す光の量が減ります。そのため、昼間でもシャッタースピードをコントロールできるのが特徴です。皆さんがよく見る写真の中に、糸のように流れる滝の写真があると思います。これらを撮影するときに、NDフィルターが欠かせません。

岩場が黒く引き締まり、滝の流れが強調できます

岩場が黒く引き締まり、滝の流れが強調できます

画面を暗くすることで、意図的にシャッタースピードをコントロールし、動くもの(雲、川、水、海、さざ波、花火など)の流れや躍動感を表現することができます。ただし、1秒以上のスローシャッターでの撮影になりますので、シャッタースピード優先モード、あるいはマニュアル露出モードでISO感度を低く設定し、三脚を使用して撮影することが必須です。

安定した場所に三脚をセッティングし、撮影時はぶれないようにタイマーやリモコンを利用してシャッターを切ります

脚の動きが自由で、手すりなどに固定できる便利な三脚もあります

また、NDフィルターには、ND4、ND8と番号が付いていて、番号が大きいほど濃くなり、シャッタースピードを遅くできます。NDフィルターを重ね着けると、さらに遅いスローシャッタースピードが得られるなど、被写体の動きに応じた選び方ができます。はじめて購入する際には、濃すぎず扱いやすいND8か16がおすすめです。

フィルターなし

フィルターあり(ND64):水面が滑らかになりました。ISO200/2秒で撮影

フィルターなし

フィルターあり(ND64):糸のように流れる滝は静かで厳かなイメージ。ISO200/4秒で撮影

フィルターなし

フィルターあり(ND64):長秒撮影では、動いている被写体はぶれて写ります。ISO100/3秒で撮影

普段使わない機材の取り扱いや、カメラの操作を伴うテクニカルな撮影になりますので、旅先でいきなり撮影するのではなく、予めテストして臨みましょう。撮影場所で三脚が使用できるかといった下調べも、旅の準備のひとつです。

おすすめその④|ノスタルジックな雰囲気に仕上がるレトロカラーフィルター

「Retro Color フィルター Oragne」 は、レンズに装着すると温かみを感じるオレンジ色のレトロな雰囲気に仕上がります。画面のハイライト部分を中心に光の拡散効果も見られ、手軽にシネマチックな印象に仕上がり、映画のワンシーンのような雰囲気に。街中でのスナップ撮影に活用したいフィルターのひとつ。また、夕方の雰囲気をより増幅させたいときにもふさわしいフィルターです。前述したさまざまなフィルターと合わせ、重ね着けして使用することもできます。

オレンジ色と光の拡散が楽しめる「Retro Color フィルター Oragne」

フィルターなし

フィルターあり:白色の部分にオレンジ色が乗り、青色が落ち着いた色になります

順光で撮影すると、アメリカのグラビア雑誌を思わせる仕上がりです

夕陽の当たったハイライト部分は柔らかく光が拡散されて、映画のワンシーンのよう

温かい色味と光の拡散によって、懐かしくレトロな雰囲気がより引き出されます

カメラのホワイトバランス(WB)をオートにしてしまうと色が補正されてしまうため、WBは、「太陽光」や「曇り」などに設定して撮影します。そうすると、雰囲気のある写真に仕上がりますよ。

おわりに

今回は、カメラに特化した専門的なアイテムをご紹介いたしました。スマホ写真のように、失敗なくバッチリ、はっきりと写るのも良いですが、カメラでの撮影なら一手間かけることで記録的な写真から、見せたい部分を強調した印象的な写真に仕上げることができます。
旅先でもレンズを通した光の演出を楽しみながら、フィルターワークを役立て、表現力の高いワンランク上の旅写真を目指しましょう。

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#写真 #カメラ #撮影テク #旅写真 #写真撮影 #レンズフィルター #デジタルカメラ

Author

写真家 こばやしかをる

写真家

こばやしかをる

1996年フォトスクールで写真の基礎を習得後、デジタルデータ制作を写真関連企業の現場で習得。主にプリントの現場から写真を学ぶ。現在はフォトアドバイザー、展示・イベント企画、執筆、プロデュースなど、写真に関する幅広い活躍の場を持つ。「GR3 PERFECT BOOK」(インプレス)そのほか、「写ルンです」のワークショップ・テキスト、スマホ写真センスアップ術などもの監修を手掛けている。

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