読書で心が動く疑似体験。写真家・石川直樹さんに聞く“旅気分”になれる本4選

全国

2020.04.22

LINEでシェア
はてなでシェア
pocketでシェア
読書で心が動く疑似体験。写真家・石川直樹さんに聞く“旅気分”になれる本4選

10代後半から世界各国を巡り写真を撮りつづける写真家・石川直樹さん。アラスカのデナリをはじめ、23歳までに7大陸の最高峰に登頂、その後も都市から辺境まで縦横に地球を旅しながら作品を発表してきた石川さんに、旅気分になれる本を選んでもらいました。‟世界がこうした状況になって外出さえもままならない今、ぜひ読んでほしい”(石川)。自宅で過ごす時間が長くなると、思考も内にこもりがちになりますが、本を通して遥か遠い場所に思いを巡らせ、ひと時の旅気分を味わってみては。

目次

閉じる

【1】『北のはてのイービク』

【2】『宝島』

【3】『ユーコン漂流』

【4】『アラスカで一番高い山 デナリに登る』

教えてくれたのはこの人! 石川直樹さん

おわりに

【1】『北のはてのイービク』

【1】『北のはてのイービク』

石川さんが1冊目に選んだのはグリーンランドで暮らす少年の冒険を描く児童書『北のはてのイービク』。

「北極圏グリーンランドに生きるとはいかなることか。一応児童書ということになっていますが、冒頭からなかなかハードな展開です。生きて帰りし物語でもあり、ビジョンクエストでもあり、成人儀礼の旅が描かれます。その旅は、真のサバイバルとも言えるもので、神話の生成過程に立ち会っているような非常に臨場感のあるストーリーになっています。グリーンランドの人の内気で慎ましい性格や人物の描写もすばらしいし、訳もとても良いと思います。岩波少年文庫は、どれもクオリティが高いですね」


『北のはてのイービク』
ピーパルク・フロイゲン/著
野村泫/訳
640円/岩波少年文庫

【2】『宝島』

【2】『宝島』

2冊目に選んだのは、第160回直木賞に、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞など数々の賞を受賞した小説『宝島』。

「ボリュームのある本ですが、おもしろすぎて一気に読んでしまいました。沖縄の戦後復帰時代の話で、米軍統治下に生きた人々の群像劇になっています。実際に起こった事件なども取り混ぜられているため、妙なリアリティと臨場感があります。沖縄近現代史の只中に放り込まれ、登場人物と一緒に疾走し、読後は長く大きな旅を終えたような気分になりました。沖縄が受け止めつづけてきた大きな痛みについても、改めて考えさせられます」


『宝島』
真藤順丈/著
1,850円/講談社

【3】『ユーコン漂流』

【3】『ユーコン漂流』

3冊目は、カヌーイストの野田知佑さんが3,000kmにわたる川下りの旅の魅力を語った一冊『ユーコン漂流』。

「ぼくが若い頃に、大きな影響を受けた本です。カヌーによるユーコン川下りは、技術的に難しい部分はありません。誰にでもできるとは言いませんが、やる気と世界への好奇心さえあれば、できる。ぼくは野田さんに焚きつけられてユーコン川へ出かけた若者の一人でしたが、実際に行ってみてようやく野田さんの凄さがわかった。濃密な体験をするためには、教養や語学力、偶然を引き寄せる力や人付き合いの能力なども必要です。そこに文章力まで伴っていたわけで、本書が傑作にならないわけがありません」


『ユーコン漂流』
野田知佑/著
1200円/モンベルブックス

【4】『アラスカで一番高い山 デナリに登る』

【4】『アラスカで一番高い山 デナリに登る』

最後は石川直樹さんによる写真絵本。『月刊たくさんのふしぎ』4月号「アラスカで一番高い山 デナリに登る」。標高6,000mを超える北米大陸の最高峰、デナリ登頂の様子が石川さんの写真と文章でつづられています。

「決して子どものためだけではなく、アラスカを目指す全ての旅人に向けて書きました。デナリという山にひとりで登りに行くと、自分のあらゆる能力が試されて、それを一カ月の遠征期間のあいだに、どうしたって使い果たすことになります。こうした時間は、日々のありがたさを感じるために、ぼくにとってとても大切なものです。世界がこうした状況になって外出さえもままならない今、ぜひ読んでほしいと思っています」


『月刊たくさんのふしぎ』4月号 
アラスカで一番高い山 デナリに登る
石川直樹/文・写真
700円/福音館書店

教えてくれたのはこの人! 石川直樹さん

教えてくれたのはこの人! 石川直樹さん

1977年東京生まれ。写真家。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表しつづけている。2020年日本写真協会賞作家賞受賞。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)ほか多数。最新刊に、ヒマラヤの8,000m峰に焦点をあてた写真集シリーズの7冊目となる『Gasherbrum II』(SLANT)、日本各地の来訪神行事を追った『まれびと』(小学館)、二度の登頂を経てエベレストをあらゆる角度からとらえた写真集『EVEREST』(CCCメディアハウス)など。2020年6月、絵本『シェルパのポルパ』シリーズを岩波書店から刊行予定。

◆写真展「山は人間が生き延びるための根源的な叡智を引きずり出してくれる。」
期間:2020年5月8日(金)〜 7月5日(日)
会場:入江泰吉記念 奈良市写真美術館
※新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を受け、5月7日(木)まで休館。詳しい情報は、「入江泰吉記念 奈良市写真美術館」公式サイトをご確認ください。

おわりに

自分ではきっと一生目にすることができないだろう景色、体験できないだろう旅を本を通して疑似体験できるのも読書の醍醐味です。人になかなか会えない日々に寂しさを感じている人も、壮大な自然と向き合う様子に広い視点をもらえるかも。外出がままならない日々がつづいていますが、海外への渡航ができない今、石川さんもたくさんの本を読んでいるといいます。私たちもこの時間を上手に使って、前向きな気持ちで過ごしたいですね。

Related Tag

#旅 #旅行 #石川直樹 #本 #写真展

Author

tabiiro 旅色編集部

tabiiro

旅色編集部

編集部おすすめの記事や、注目のインタビュー、旅色に関するニュースなどを発信しています。メンバー限定で参加できるファンコミュニティ(likes.tabiiro.jp)の活動報告や、イベント情報も! ▽注目のコンテンツ ・読めばきっと旅気分「月刊旅色」 ・ローカルにフォーカスする「旅色FOCAL」 ・おいしいが見つかる「旅色おとりよせグルメ」

Articles

tabiiro 旅色編集部

五感で触れる土地の記憶、言葉で届ける地域とお酒の真価。「ちゃんと旅を考える学校」第2期開催レポート。

tabiiro 旅色編集部

「教科書で見た世界が目の前に!」鈴木ゆうかさんと青森の縄文遺跡を巡る旅『月刊旅色』2026年6月号

tabiiro 旅色編集部

【福島/会津】紅葉の城下町で、酒場のぬくもりに出会うひとり旅

New articles

- 新着記事 -

土は2000年先へのタイムカプセル? 淡路島・徳島で感じたメッセージとは
  • NEW

兵庫県

2026.06.06

土は2000年先へのタイムカプセル? 淡路島・徳島で感じたメッセージとは

ちゃん旅 美娜

美娜

ちゃん旅

五感で触れる土地の記憶、言葉で届ける地域とお酒の真価。「ちゃんと旅を考える学校」第2期開催レポート。

全国

2026.06.02

五感で触れる土地の記憶、言葉で届ける地域とお酒の真価。「ちゃんと旅を考える学校」第2期開催レポート。

tabiiro 旅色編集部

旅色編集部

tabiiro

昔よく行った、“府中の競馬場”を紹介してみようと思う。

東京都

2026.05.26

昔よく行った、“府中の競馬場”を紹介してみようと思う。

推し旅 さくや

さくや

推し旅

最新スポット「軽井沢T-SITE」とご褒美モーニングで心を満たす日帰りひとり旅

長野県

2026.05.26

最新スポット「軽井沢T-SITE」とご褒美モーニングで心を満たす日帰りひとり旅

女子旅 ほしこ

ほしこ

女子旅

「教科書で見た世界が目の前に!」鈴木ゆうかさんと青森の縄文遺跡を巡る旅『月刊旅色』2026年6月号

青森県

2026.05.25

「教科書で見た世界が目の前に!」鈴木ゆうかさんと青森の縄文遺跡を巡る旅『月刊旅色』2026年6月号

tabiiro 旅色編集部

旅色編集部

tabiiro

【東京】都市に刻まれた鉄道遺構を歩く。渋谷・万世橋・晴海の廃線・廃駅旅

東京都

2026.05.21

【東京】都市に刻まれた鉄道遺構を歩く。渋谷・万世橋・晴海の廃線・廃駅旅

鉄道旅 なお

なお

鉄道旅

More

Authors

自分だけの旅のテーマや、専門的な知識をもとに、新しい旅スタイルを提案します。

ちゃん旅 美娜

ちゃん旅ちゃん旅

美娜

tabiiro 旅色編集部

tabiiro

旅色編集部

推し旅 さくや

推し旅推し旅

さくや

女子旅 ほしこ

女子旅女子旅

ほしこ

鉄道旅 なお

鉄道旅鉄道旅

なお

大人の社会科見学旅 さっか

大人の社会科見学旅大人の社会科見学旅

さっか

奈良まほろば旅 神奈月みやび

奈良まほろば旅奈良まほろば旅

神奈月みやび

ゆるり文化旅 じゅん

ゆるり文化旅ゆるり文化旅

じゅん