ご当地食材で逸品を! 「和歌山県湯浅町の旅するグルメコース」開発の旅へ

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2022.07.29

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ご当地食材で逸品を! 「和歌山県湯浅町の旅するグルメコース」開発の旅へ

全国で飲食店を展開するバルニバービと旅色がタッグを組み、日本各地の“食”の魅力を発掘する共同プロジェクト「TRAVELING DISH ACTION」。出雲に続く第二弾は、海の幸と山の幸に恵まれた食材の宝庫・和歌山県湯浅町とコラボメニューをつくりました。湯浅町の特産品が驚きのある一皿へと進化できたのは、生産者の方々と料理長・大筆秀樹シェフが食への想いを共有できたから。今回は、食材探しの旅の様子をレポートします。

TEXT:西 倫世、PHOTO:田村和成

目次

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40~50日かけてうま味を引き出す 「垣内みそ店」の金山寺みそ

こだわりのオリジナル菌床で育てた 「紀州きのこ園」のしいたけ

処理場を併設しているから鮮度が抜群 「太田養鶏場」の紀州鴨

温暖な気候に恵まれ育つ品種が多彩 「主井農園」のかんきつ類

黒毛和牛の新ブランド 「ミートファクトリー」の紀州和華牛

最新設備で熟成環境を徹底管理 「湯浅ワイナリ」ーの赤ワイン

水揚げしてすぐ釜に直行 「まるとも海産」のしらす

一度姿を消した伝統野菜を復活 「三ツ橋農園」の湯浅なす

おわりに

40~50日かけてうま味を引き出す
「垣内みそ店」の金山寺みそ

白ごはんにのせていただく、おかずみそである金山寺みそ。「垣内みそ店」では米、麦、大豆の麹に白瓜、なす、赤しそ、生姜を細かく刻んで樽に漬け込み醸造。40~50日かけて熟成させ、素材のうま味と甘みを最大限まで引き出しているそうです。

金山寺みその説明をしてくれた垣内夫妻。「創業から約70年、変わらぬ技法で金山寺みそを作り続けています」

垣内みそ店の金山寺みそは、白瓜、なす、赤しそ、生姜などの具材がゴロゴロ。生姜がピリッと効いている

国産米、北海道産丸大豆、香川県産の麦を麹と混ぜ、発酵させると、みそが完成。手で触れながら状態を見極めている

工場見学をして、金山寺みそを試食させてもらったところ「これだけ完成された味だと、手を加えられないな」と大筆シェフ。悩んだ結果、きのこと合わせて和テイストのキッシュに仕立てました。

こだわりのオリジナル菌床で育てた
「紀州きのこ園」のしいたけ

町から山に向かって車を走らせると見つかる「紀州きのこ園」。おがくずに独自の栄養体を加えたオリジナルの菌床を使っています。菌を培養する期間は長めの4ヶ月。菌床をぶつけ合って刺激を与えたり、温度が低い部屋に移動したり、これらのタイミングの見極めにより、肉厚でぷりっとした食感のしいたけが育つそうです。

しいたけ栽培に情熱を注ぐ代表取締役の畑卓樹さん。「役目を終えた菌床は農家さんに譲り、畑の肥料にしてもらっています」

倉庫に入ったシェフは「本来しいたけは、こんなにいい香りを放っていないのに」と、香りの良さに驚いた模様

栄養がぎゅっと詰まった肉厚のしいたけは、香り・食感・旨味が格別。東京や大阪のスーパーに出荷することも

しいたけを手に取ったシェフは「これまでに出合ったしいたけとは香りが違う」と感激。キッシュの主役になるよう、大きめにカットし、しいたけの存在感を際立たせました。

処理場を併設しているから鮮度が抜群
「太田養鶏場」の紀州鴨

山間の自然豊かな場所で6000羽の紀州鴨を飼育している太田養鶏場。一般的な鴨は脂が黄色っぽくなりがちですが、太田養鶏場では大豆や穀物など、色素の含有量が少ないエサで育てているため脂は白く、肉は鮮やかな赤色です。

現在の代表である太田有紀さんは三代目。時代に合わせ採卵養鶏、肉鶏の飼育、合鴨の飼育と生業が少しずつ変化したそう

事務所の奥に飼育小屋が5つ。鴨の赤ちゃん、2~3週齢、4~5週齢、6~8週齢、8~10週齢と週齢別に育てている

万が一鶏が食べてしまっても大丈夫な原木挽きのおがくずを床にしき、鶏が快適に過ごせるよう環境を整えている

同じ敷地内に処理場があり、急速冷凍機も完備。鮮度抜群で肉質もいいため、余計な手は加えず、塩を振ってスモークに。紀州鴨のうま味をストレートに感じられる一品が完成!

温暖な気候に恵まれ育つ品種が多彩
「主井農園」のかんきつ類

数あるかんきつ類農家のなかで、今回伺ったのは3町(約9000坪)もの農地を持つ主井農園。軽トラに載せてもらい、山頂近くへ。

訪問時の4月に実っていたカラマンダリンを試食させてもらいました。果汁は濃厚でジューシー、ワタが少なく皮の香りが良かったため、皮ごとマーマレードに。使用するかんきつ類は季節ごとに変化するので、風味の変化も楽しんでください。

積極的に新しい事業に取り組む主井優好さん。今夏は柑橘のアイスクリームショップ「主井農園 m. citrus」をオープン

主井農園ではカラマンダリン、バレンシアオレンジ、セシノール、三宝柑など、多彩な柑橘を栽培

主井農園でつくる果汁100%ジュース「こだわりのみのり」は、おみやげショップでも大人気

訪問時の4月に実っていたカラマンダリンを試食させてもらいました。果汁は濃厚でジューシー、ワタが少なく皮の香りが良かったため、皮ごとマーマレードに。使用するかんきつ類は季節ごとに変化するので、風味の変化も楽しんでください。

黒毛和牛の新ブランド
「ミートファクトリー」の紀州和華牛

和歌山市に本社工場を構え、湯浅町に牧場を持つ「ミートファクトリー」。こちらはブランド牛として有名な熊野牛のほか、2019年に売り出しはじめた希少な紀州和華牛を育てています。

工場を案内してくれた代表取締役の北川美智也さん。「数年の研究の末、飼料にポリフェノールを加えると肉質がよくなりました」

みかんジュースや湯浅しょうゆなど、和歌山県産特産物の副産物を飼料に活用。ビタミンとタンパク質が豊富

和歌山でも数少ない紀州和華牛の認定店。本社直営のレストラン「Meat Dining きた川 牛侍」などで味わえる。

最新設備で熟成環境を徹底管理
「湯浅ワイナリ」ーの赤ワイン

2019年に開業したばかりの「湯浅ワイナリー」。ワイン各種と、和歌山県産のフルーツを使ったリキュール「勹果(ほうか)」を作っています。工場長の西馬功さんに最新設備を備えた工場を案内してもらったあとに試飲タイム。

細かくプログラミングできる最新設備を備えた工場。ただ試飲は怠らず、機械に頼り切らないワインづくりをしている

こだわりの製造方法を聞きながら試飲。飲用として完成されたワインを、どう料理に活かすか悩む大筆シェフ

ワインは赤、白ともにステンレス発酵の「海」、ステンレス発酵&木樽熟成の「風」、樽内発酵と木樽で熟成させた「空」の3シリーズがある

シェフが「ワインの澱(おり)を提供してもらえないか」と交渉するも、澱が得られるのは秋のみ。悩んだ結果、赤ワインの「海」を半量になるまで煮詰め、すき焼きのアクセントに。ワインが香る新感覚のすき焼きが生まれました。

水揚げしてすぐ釜に直行
「まるとも海産」のしらす

しらすが水揚げされる栖原海岸付近には、しらすの工場がたくさんあります。それぞれ独自の製法を持っており、今回伺った「まるとも水産」は、厚釜踊り炊き製法を採用。熱伝導がいい厚釜で湯を沸かし、そこにしらすと赤穂の塩を入れて茹でています。

工場でしらすを試食させてもらった一同は、ふかふかの食感にびっくり。スーパーなどで買うしらすとは、まるで別物です。この自慢のしらすは、大葉や梅などの和素材と合わせて焼きおにぎりのようなリゾットになりました。

「海がきれいなので、しらす自体が白くてきれい。冷凍していないので風味と食感がいいのが特徴です」と樫原亜沙子さん

しらすは鮮度が命。入札と同時に釜の湯を沸かしはじめ、競り落とした10分後には茹でるから鮮度が段違い

春のしらすは小さめでふわふわ、秋のしらすは大きめで脂がのっているのが特徴。季節ごとの変化も楽しみ

一度姿を消した伝統野菜を復活
「三ツ橋農園」の湯浅なす

紀州伝統野菜のひとつ、湯浅なすを復活させた「三ツ橋農園」を訪ねました。

いつの間にか途絶えてしまった湯浅なすを三ツ橋忠男さんが仲間とともに再生に取り組み、復活させた

かつて金山寺味噌の具材として親しまれていた湯浅なす。大きいものは直径12㎝(400g)ほどに成長する

湯浅なすの収穫時期は夏~秋のため、訪問した4月には実物を見れませんでしたが、三ツ橋忠男さんと奥さまから「湯浅なすは丸なすの一種で実がしっかり。火を通すとトロトロになる」と教えてもらいました。そこでシェフがひらめいたのがなすのグラタン。なすをそのまま器にしたユニークな一品に仕上がりました。

おわりに

視察を通して感じたのは、生産者のみなさんの明るさ。大筆シェフも「元気な生産者さんの元には、いい作物ができると考えているので、とても大きな収穫がある視察でした」と話していました。一方で「素材そのものがおいしいから、どうアレンジするか悩む」とも。

熟考と試作の末、出来上がったのは食卓を華やかにしてくれる、驚きのある料理たち。セットで揃えれば特別な日のホームパーティーにぴったり。単品購入もできるので、ふだんの食卓を少しランクアップさせるという楽しみ方もできます。

和歌山県湯浅町の旅するグルメコースの詳細はこちら

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#グルメ #和歌山県 #湯浅町

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宿マルシェ店長。全国各地の名産・名品など、モノにまつわるモノ語りに興味あり。アウトドアと史跡が好きなので、寺社仏閣でキャンプをすることが夢。丸森町出身(何県でしょう?)

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