【栃木】一杯のワインの向こうに。那須・板室で出会った人と風景
旅にはお酒がつきもの! おいしいごはんとお酒が大好きな、旅色LIKESライター・酒旅担当のERIです。昨年の秋、那須塩原市板室で収穫体験をしたぶどうが、この春ワインになり、お披露目会が開催されました。そこで改めて感じたのは一杯のワインの向こうには、ぶどうを育てる人の情熱や、この土地で夢を追いかける物語があるということ。収穫からワイン完成までを追いかけながら出会った人と板室の魅力をご紹介します。
目次
収穫の日。ワインになるブドウを摘み取る。
去年の10月、ワイン用ぶどうの収穫体験のために訪れたのは、那須・板室にある石井ぶどう園。この日の目標は、ぶどうをすべて収穫することです。畑には、ワイン用ぶどうとして知られる「マスカット・ベーリーA」がたくさん実っていました。ワイン用ぶどうの収穫は初めてで、石井ぶどう園を営む石井晶(いしいあきら)さんから収穫方法の説明を受け、作業開始。収穫用のはさみで房を切り取り、傷んでいる部分を取り除きながら丁寧にかごへ入れていきます。ワイン用ぶどうは、酸味が強いのかと思っていましたが、ひと粒食べてみると驚くほど甘くてジューシー。「このぶどうがどんなワインになるのだろう」と想像しながらの収穫は、とても楽しい時間でした。朝9時から始めた作業は、昼休憩をはさみ、午後3時頃には畑に実っていたぶどうをすべて収穫することができました。収穫したぶどうは石井さんが委託しているワイナリーへ運ばれ、醸造されます。未来のワインへとつながる、大切な一日となりました。
収穫を祝ってみんなで乾杯
この日の夜、収穫を祝って収穫祭が開かれました。向かったのはぶどう園から車で3分ほどの場所にある「ゲストハウスLeu.(レウ)」。板室温泉エリアにあるLeu.は、宿泊を通して人と人との交流を大切にしているゲストハウス。敷地内には、BBQや釣りを楽しめるフィッシュランドもあり、ファミリーやグループでも楽しめる場所です。館内には天然温泉があり、旅の疲れをゆっくり癒すことができます。温泉で汗を流したあとは、参加者で地元の食材を味わいながら、楽しいひとときを過ごしました。そんな和やかな雰囲気のなかで、石井さんからぶどう栽培のことやワイン造りへの思いを聞くことができました。
◆ゲストハウスLeu.
住所:栃木県那須塩原市板室46
苗の植え付けから始まったワイン造り
埼玉で生まれ育った石井さんが、祖母の暮らす大田原市へ移住したのは2015年。板室の地に魅力を感じ、もともと桑畑だった土地を借り受けて、ぶどうの苗を植えるところから挑戦を始めました。今では、醸造用の「ピノ・ノワール」「シャルドネ」「マスカット・ベーリーA」を育てる一方で、「シャインマスカット」や「巨峰」、「クインニーナ」といった生食用ぶどうも栽培しています。アパレルブランド「PIZZADAY」が行う、着古したウール製品を肥料として活用する「サーキュラーエコノミープロジェクト」にも参画していて、環境に配慮したぶどう栽培の実践もしています。
またサルやイノシシ、シカなどの野生動物もたくさん暮らしている板室では、大切に育てたぶどうが狙われることも少なくありません。石井さんは前職の電気工事士という異色の経歴を生かし、自ら電気柵の設置し、畑を守っています。石井さんが手がけるワイン「Itamurogne(イタムローニュ)」のラベルには、サルやシカなどの動物たちが描かれていて、この土地で暮らす生きものたちと自然を分かち合いながら、ぶどうを育てていきたいという思いが込められています。
石井さんの夢は、この土地の風土を生かしたワインを自ら醸し、人が集まり、板室の魅力を伝えられるワイナリーをつくること。その夢は、一本一本のぶどうの木とともに、少しずつ未来へ向かって育まれています。
5月、収穫したぶどうがおいしいワインになりました。
収穫から半年後、いよいよぶどうからワインとなり「ゲストハウスLeu.」でお披露目会が開かれました。完成したのは「JAJAUMA(じゃじゃうま)」と名付けられたロゼワインと赤ワインです。自分の手で収穫したぶどうから生まれたワインが飲めるなんて夢みたい。ワクワクする気持ちを抑えつつ、まずはロゼを。赤ワインを造る際に、果皮と果汁を短時間だけ漬け込んだ「セニエ」の果汁を使用した一本です。口当たりは軽やかで、ほどよい酸味とのバランスも良く気軽に楽しみたくなる味わい。開けたばかりの一口目はまだ尖った印象もあったのですが、空気に触れると味に変化が現れまろやかさが出ていて驚きました。どんな料理にも合わせられるようなワインです。続いて赤をいただくと、マスカット・ベーリーAならではの華やかな香りがふわりと広がり、軽やかな飲み口のなかにも豊かな表情を感じます。収穫の日のぶどう畑を思い出しながら味わう一杯は、おいしさはもちろん、ワインに込められた時間と思いまで感じられて私にとって忘れられない特別な一杯でした。
終わりに
お披露目会の翌日、石井さんのぶどう畑を訪ねてみると、秋に収穫した畑とはまったく違い、まだ小さな実をつけたぶどうの木が並ぶ景色が広がっていました。そのなかで石井さんはブドウの枝を棚にくくる誘引の作業をしています。変わらず一本一本の木と向き合い、丁寧に手をかけていました。板室へ移住し、苗木を植えるところから始まった「自ら醸造したワインを造る」という夢。今回いただいたワインは、その夢へと続く道のりのひとつなのかも。次に訪れたときどんな石井さんのワインに会えるのか、楽しみです。
石井さんのワインは、オンラインショップ、または道の駅「明治の森・黒磯」などで購入できます。生食用ぶどうは、生育状況によるため、公式Instagramから確認するのがおすすめです。
◆石井ぶどう
住所:栃木県那須塩原市板室425-4








