また泊まりたくなる宿。受け継がれてきたおもてなしと、時代に寄り添う「山鹿温泉 清流荘」
熊本県山鹿市にある山鹿温泉といえば、歴史や文化が色濃く残る名湯です。なかでも、老舗旅館「山鹿温泉 清流荘(以下、清流荘)」には、時代に寄り添いながらも変わらない“人の温かさ”が感じられます。そんな山鹿温泉で感じた魅力をゆるり文化旅担当の旅色LIKESライター・じゅんが紹介します。
目次
古き良き日本旅館の文化と“人の温かさ”を感じられる空間
「清流荘」の玄関は靴を脱いで上がる、昔ながらのスタイル。こうした日本らしい旅館文化は少なくなっている気がしていていたので、ちょっと懐かしさを感じます。落ち着いた雰囲気のなか、スタッフさんに館内を案内してもらいながら感じたのは、マニュアルに則ったものではない“人の温かさ”が伝わる接客。宿に着いたばかりですが口コミで目にした接客の良さに納得。「ここを訪れる人は観光を楽しむための宿ではなく、“人の温かさ”に触れ、宿で過ごす時間そのものを目的にしているのかも」と感じました。
ロビーから出ることのできるテラス席も開放感があっておすすめ。
菊池川沿いに佇む清流荘のロビーからは、穏やかに流れる川の風景を楽しむことができます。ウェルカムドリンクをいただいていると、到着したばかりなのに居心地の良さについつい動きたくなくなってしまいました(笑)
地元の文化を垣間見られる「鹿門亭(ろくもんてい)」とプライベート空間を堪能できる「水鏡案」
部屋から見える菊池川からも歴史を文化を感じる。
「清流荘」の宿泊棟は二つ。今回宿泊したのは、菊池川側にある「鹿門亭」内のお部屋です。この菊池川流域は米作りが盛んで、今でも途切れることなく受け継がれていることから日本遺産にも指定されています。山鹿市も日本遺産地域の一つで、かつては部屋から見える川の水流を利用しお米が運ばれていました。川を窓から眺めていると、日本の文化と歴史を感じられる、特等席のような部屋。もう一つの宿泊棟「水鏡庵」には露天風呂付き客室もあり、ゆっくりとプライベート空間を楽しみたい方におすすめです。
また、日本文化を大切にする「清流荘」では湯めぐりを存分に楽しんでもらうため、客室に用意された浴衣のまま山鹿の町を歩いたり、旅館から徒歩で約5分の公共浴場「さくら湯」へ行ったりすることもできます。浴衣を館内だけで着るのではなく、町を歩きしながら山鹿の文化を感じるのも滞在の醍醐味です。
地産地消の絶品料理と女将が挨拶にまわる、昔ながらの「おもてなし文化」
夕食は一品ずつ丁寧に提供される会席料理。「旅行に行ったら、その土地のものを食べたい!」そんな期待に答えてくれる、地元食材をふんだんに使用した料理です。お品書きと見比べるだけでなく、食材の説明や料理に込められた想いを仲居さんから聞くと、さらにおいしさが引き立ちます。
また、地酒・日本酒・ワイン・ウイスキーなどアルコールの種類が豊富。地元・山鹿の菊鹿(きっか)ワイナリーのワインや、山鹿蒸留所のウイスキーなど、ほかではなかなか出会えないお酒も。迷ったときは料理とお酒のペアリングもしてもらえます。
明るくて気さくな人柄がとっても素敵な女将。
そして、印象的だったのは夕食時に女将が一部屋ずつ会食場を周り、お客様へ挨拶をしていたこと。 山鹿で印象的だった観光地や旅好きなことを伝えると、最近は一人旅の方も増えていることなど話に花が咲きます。こうした女将との何気ない会話も旅のいい思い出に。なかには女将の登場に驚かれるお客様もいるそうですが、一人ひとりに配慮したおもてなしも「清流荘」で大切に受け継がれている旅館文化の一つです。
新しい発想が感性をくすぐる、スタイリッシュな個室
「清流荘」での食事はゆっくりと過ごして頂きたいという想いから、食事処はすべて半個室となっています。いくつかある個室会食場のなかで、今回はスタイリッシュな部屋が並ぶ「SEIRYU」で食事をいただきました。どの部屋も個性的で、老舗旅館のイメージとは違う新しい感性が溶け込んだ空間です。
ほかにも、隣に建つ千代の園酒造の酒蔵を活かした個室も印象的でした。本来なら壁にしてしまうところを、窓を付けて酒蔵の壁を見せるというデザイン。夜になると壁がライトアップされ、じっくりと歴史のある建築物を眺められる特別な個室に。たまに近所の猫が歩いて、影絵のように映ることもあるのだとか。さらに、左官職人が壁にデザインしたアートを楽しめる部屋や、壁が黄色でペンダントライトがアクセントのおしゃれな部屋なども。食事の時間も料理だけではなく空間も楽しめるよう工夫されています。
老舗旅館「清流荘」が一人旅にもおすすめな理由
コーヒー(有料)は1杯ずつ丁寧に淹れてくれる。ひとり時間のおともにもぴったり。
以前は複数人で楽しむイメージが強かった温泉旅館ですが、「温泉宿に泊まって、一人でゆっくり過ごしたい」と今回は2連泊のうち1泊目は一人で宿泊。朝食後にテラスで丁寧に淹れられたハンドドリップコーヒーを飲んで、昼間は旅館からすぐそばにある豊前街道を散策。清流荘は町あるきをするにもぴったりな立地で、芝居小屋の八千代座や老舗の酒蔵に麹屋、山鹿の伝統工芸を楽しめるスポットなどが徒歩圏内にあります。
館内にいは足湯もあるので、一人でぼーっとしながら入るのも贅沢な時間
夕食は半個室のお食事処でゆっくり楽しめるので、一人でも人目を気にせず楽しむことができました。夕食の後は温泉を堪能してから、ロビーにあるラウンジへ。お酒を飲みながらゆっくり山鹿の夜を過ごしました。その時々の自分時間を、気の向くまま過ごせる、一人旅初心者さんでも安心して旅を楽しむことができますよ。
老舗旅館×ウイスキーバー? 「清流荘」の新たな魅力
新たな旅館の魅力として注目をされているのは、社長自らがラウンジをDIY改装したウイスキーバー。約250種類のお酒はどれもこだわりがあり、なかなかお目にかかれない珍しいお酒もずらりと並びます。ウイスキーバーの場所は「最上階の夜景が見える場所で……」というわけではなく、ロビーの真ん中。大浴場で温泉に浸った後、外でふらりと散歩して帰ってきた後、部屋に戻る途中で目に入ってくるこのウイスキーバーについつい行きたくなる(笑)。老舗旅館でウイスキーバーだなんて、とギャップを感じそうですが、今ではこのバー目当てのお客様も増えているそう。
◆山鹿温泉 清流荘
住所:山鹿市山鹿1768
電話番号:0968-43-2101
営業時間:チェックイン15:00~18:00、チェックアウト~10:00
山鹿の歴史と文化がつまった「さくら湯」
夜のさくら湯は昼間とは違う落ち着いた雰囲気になる。
「乙女の柔肌」と呼ばれるほど、トロトロとしたぬるめのお湯が山鹿温泉の特徴。じっくりと入れる泉質が魅力です。清流荘から徒歩で約5分の場所にある「さくら湯」は、西日本最大級の木造浴場として有名。中に入るとタイムスリップしたかのようです。地元の方も多く利用し、地域の交流の場としても親しまれています。
約370年前にできた「さくら湯」は、2012(平成24)年に再建されたのですが、その際に当時の設計図が残っていなかったため、その道のりは険しかったことはあまり知られていません。なのになぜ、再建することができたのか……。それは山鹿の伝統工芸である山鹿灯籠が、さくら湯の瓦の数までが忠実に再現され残されていたから。山鹿灯籠は、和紙とのりだけで作られ、室町時代から受け継がれている山鹿の伝統工芸品。実際に参考とされた「さくら湯」の灯籠は、さくら湯から徒歩約3分の「山鹿灯籠民芸館」に展示されています。ものすごく綿密に表現された「さくら湯」は必見です。ほかにも「さくら湯」の西側2階にある温泉資料室では、かつての瓦や木材の展示もあるので、是非立ち寄ってみてください。
◆さくら湯
住所:山鹿市山鹿1番地1
電話番号:0968-43-3326
営業時間:6:00~24:00
定休日:第3水曜日
料金:大人(中学生以上)350円、小人(3歳以上小学生以下)150円
◆山鹿灯籠民芸館
住所:山鹿市山鹿1606番地2
電話番号:0968-43-1152
営業時間:9:00~18:00 ※最終入館17:30
定休日:12月29日~1月1日
料金:民芸館入館料 一般300円、小・中学生150円、共通入館料 一般730円、小・中学生370円
さいごに
山鹿温泉清流荘の平井社長ご夫妻。二人とも明るく、旅館全体が元気なのも納得。
宿泊して旅館の人たちとのコミュニケーションがあるからこそ、旅館の想いや魅力が伝わってきたことを実感した今回の滞在。今では省かれてしまうサービスを大切に受け継ぎ、日本のおもてなし文化を提供している清流荘。一度泊まると居心地の良さにまた泊まりたくなるそんなお宿です。また山鹿の歴史や文化も、地元に人たちが大事に受け継いできたもの。「清流荘」を拠点に、地元の人たちとのふれあいも是非楽しんでみてください。











