「スキーが、新しい自分や場所に出会わせてくれる」 星野リゾート代表・星野佳路が考える自然観光の魅力
星野リゾート代表・星野佳路(よしはる)さんが促進している自然観光はアドベンチャートラベルと同様、近年注目されつつあります。しかし「文化観光に比べて日本では自然観光の伸びは緩やか」に感じているそう。その理由と星野さん自身がスキーを通して感じた自然観光のすばらしさについて教えてもらいました。
(photo:入江達也)
目次
滑走目標80日を達成するため、1年中板を担いで旅をしている生粋のスキーツーリスト。
受け入れる側の整備が自然観光促進のカギ
― 「自然観光」をどのように捉えていますか?
地域ごとに存在する自然の成り立ちを理解することで、知的好奇心が満たされる旅のスタイルです。温暖化が日常に密接に関係していることを感じるなど、地球環境にも興味を持つようになります。「自然観光」の根源は「エコツーリズム」にも繋がるのです。
― 以前、「日本は、文化観光は得意だけど自然観光は不得意」と話されていました。なぜ日本は「自然観光」が不得意なのでしょうか?
「文化観光」は地域の日常生活を体験することで成立します。それと比較すると、「自然観光」は体験してもらうためにコンテンツを作る必要があり、すぐには始めることができません。また団体旅行よりも、ディープな探求心を求めてじっくり時間を使う個人旅行の方が向いています。日本では90年代から団体旅行向けの温泉旅館が衰退していますが、今まで団体旅行を受け入れていたところから個人旅行向けに切り替えることは簡単ではありません。受け入れ側の大変さが「自然観光」の浸透を緩やかにしていると考えています。
― 「自然観光」を進めるために、宿泊施設として何が必要だと感じますか
サステナブルな対応をしていかなければなりません。「自然観光」を楽しむ人の多くは、アメニティを持参し、部屋にペットボトルの水がないことにも違和感がありません。電気にしても備品にしても、地球全体の問題として捉えているのです。泊まることでも環境問題について考えるきっかけを届けていこうと考えています。
スキーが星野さんの旅に与えたこと
― 個人としてはスキーを通して「自然観光」を楽しんでいますね。
そうですね。もう10年以上もスキーというツールを使って、氷河を観察するなどワイルドな自然に飛び込んでいます。写真を撮ることだけでは得られない、自然の成り立ちなどの知的な部分まで入り込む楽しさを体感し続けています。
― 「スキーをツールに旅をする」いいキーワードですね。
スキーヤーには、アルゼンチンのパタゴニアなど絶対に行かなければいけない場所がいくつかあり、スキーをしていたから出会えた場所が多いです。昨日もそのひとつ、フランスのシャモアに行っていました。
国内だと青森県の八甲田にある地元のローカルなスキー場でも滑りました。世界を滑ってきていますが、八甲田も世界に負けない場所です。スキーの前に「八甲田山雪中行軍遭難資料館」で詳しく学びました。ちょうど訪れた日も吹雪いていて、ここで起きた出来事に思いを馳せました。ネットで拾える情報もありますが、実際に足を運ぶことで感じることも多く、自然の中でその土地の歴史を考えることは、知的好奇心を掻き立ててくれます。そんな思いができたのもスキーがあったからです。
― スキーをきっかけに旅の幅が広がっていますね。
まさに。世界中、日本中手当たり次第に行くのではなく、スキーという軸があるからこそ選ぶ拠点が変わります。無名な場所に行くこともあるし、そこで自分が新たな行動に出るという自分自身の発見にも繋がっています。
― 今後の旅行者としての展望はありますか。
軸がスキーであることは今後も変わりません。いちトラベラーとして思っているのは、最近の日本はインバウンドが混みすぎ、ということです。国内の有名スキー場も混んでいるので、最近は意図的に避けるようにしています。国内には400ほどスキー場がありますが、いわゆる有名どころは30ほどで、雪の質は変わらないのに地元の人しか行かないスキー場は多くあります。存分に滑ることができるし、リフトも並ばない穴場スキー場を「雪の細道」という仲間内で立ち上げたグループで周ってきました。最近行った中では岐阜県がよかったです。
インバウンドがいないところを目がけていくと、日本人も国内でアドベンチャーを楽しむことできると考えています。まずは行く先を決めるために「旅の軸」を何か決めてみることをおすすめします。
5月22日(木)、星野さんが「ちゃんと旅を考える学校」に登壇!
“ちゃんと旅を考えると旅はもっとおもしろくなる”をコンセプトに活動してきたコミュニティ「旅色LIKES」から生まれた「ちゃんと旅を考える学校」がスタートします。40人3か月限定で旅の実践者とコミュニケーションを取りながら旅を深める「大人の学校」です。
第1期テーマは「アドベンチャートラベル」。「アクティビティ・自然・文化体験」の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」を指す、アドベンチャートラベル(AT)。欧米豪の間で人気を博していて、日本でも固有の資源を活用し、体験を通じてより深く地域を理解して地域貢献できる、新たな旅の形として注目されています。
5月22日(木)は、星野さんが登壇!
講座テーマ「旅をヤバくする日本の自然観光」
2019年に西表石垣国立公園内に「星野リゾート西表島ホテル」を開業。日本初の「エコツーリズムリゾート」を目指し、ATに含まれるアクティビティを展開している星野リゾート。自身は専らスキーツーリストでこれまで世界各国を回ってきたという星野さんですが、スキー軸で考えるとガイドブックと全く違う旅先になり、旅の楽しみ方が倍増するのだそう。ATの楽しみ方の本質を理解する手立てを教えてもらいます。













