土は2000年先へのタイムカプセル? 淡路島・徳島で感じたメッセージとは
旅色LIKESライターのちゃん旅(ちゃんと旅を考えると、旅はもっと楽しくなる)担当・美娜です。今回は、兵庫県淡路島と徳島県鳴門市でちゃん旅をしてきました。この2つのエリアは、私たちが何気なく踏みしめている「土」を使って“2000年先まで美しさを残す”という驚きの秘密が隠された場所なんです。失われた自然を蘇らせた巨大な建築、厳しい環境での力の源となる「土」、そして世界の名画を不滅に変えたアート。地球のパワーと人間の知恵が生んだ素材に五感で触れてきました。
目次
人の手で破壊したものを、人の手で再生してできあがった「淡路夢舞台」
こちらは、兵庫県淡路島の海岸部にある広さ約28ヘクタールの巨大な複合施設です。設計を手掛けたのは世界的建築家の安藤忠雄氏。この周辺は、関西国際空港など大阪湾埋め立てのために土砂採掘場として使われた結果、荒廃していました。そこで、「自然を取り戻して、“国生みの島”らしい未来に向けた文化拠点をつくろう」という考えの下、再生プロジェクトがスタート。「環境再生」が最も重要だったため、安藤氏は建物よりも先に周辺の斜面に木を植えることから着手しました。植えられた苗木は30万本。それらの成長を待ち、3年後に建物の工事をスタートしました。1995年の阪神・淡路大震災により計画は一時中断されましたが、その間に苗木は成長し、構想から約12年をかけて建設され、再生へとつなげていきました。
完成した「淡路夢舞台」は、森の斜面を利用して配置されたホテルや野外劇場、植物館、会議場がランドスケープに溶け込むように配置されています。それぞれの施設が違う世界を持ちながら、集合体としての圧倒的な魅力を放っています。
100個の花壇に込められた、100年後への想い 「百段苑」
「淡路夢舞台」のなかでも最も注目されているのが「百段苑」。山の斜面に沿って4.5メートル四方の花壇が、段々畑のように100個規則正しく並んでいます。あらゆる方向に階段がつながっているので、まるで自然の迷路に入ったかのよう。花壇には世界中から集められたさまざまなキク科の植物が植えられています。
「百段苑」の注目すべきところは美しさだけでなく、ここが阪神・淡路大震災で亡くなられた方々への鎮魂、そして震災の記憶を次の100年へと語り継ぐための「祈りの庭」として、震災後に急遽設計に加えられたモニュメントである、ということ。人工的なコンクリートの美しさと植物の生命力が見事に融合した空間は、訪れる人の心に深い感動を残してくれます。
植物の重要性を“土”から感じられる「あわじグリーン館」
高さ約20メートルもの大空間が広がる日本最大級の温室植物館「あわじグリーン館」。ここは植物の生命力と美しさの「展示と見せ方」が秀逸です。入館するとまずエスカレーターで一気に上がり、温室を空中散歩するようにガラス張りの歩道を歩きます。植物であふれた大空間を空中散歩しながら、見たことのない形をした葉や花、ぬるっとした生暖かい空気を肌で感じながら降りていきます。
5つの展示室と4つのエリアがある館内で特に印象的だったのが展示室1 みどりのちょうこく。乾燥地帯に生育するサボテン類、ユーフォルビア類などの多肉植物が育てられており、過酷な環境=土で生き抜く力強さを、自然の造形美と流木、水、風を使ってアートとして表現しています。
「みどりのちょうこく」だけでなく、館内全体をくまなく見て回ると、「淡路夢舞台」の始まりが木を植えることからだったように、植物は自然環境のバランスを保つために重要であり、私たちの生活に潤いや安らぎ、幸福感をもたらしてくれることを証明してくれているように感じました。ここではぜひ、大きく深呼吸をして、植物の匂いや空気、色彩豊かな植物から伝わる“土からのメッセージ”を受け取ってほしいです。
文化も未来へと残す“土”の可能性を感じられる「大塚国際美術館」
淡路島からわずか車約30分でアクセスできる、徳島県鳴門市の観光名所「大塚国際美術館」は、世界26カ国の至宝1,000点以上を原寸大の「陶板」で再現した、世界初の美術館です。古代壁画から現代絵画まで、日本にいながら世界名画を鑑賞することができます。建物は瀬戸内海国立公園内の山の中にあり、景観保護の観点から地下3階、地上2階までの5フロアで成り立っています。
この美術館の素晴らしいところは、すべての名画を実物サイズで体感できる圧倒的没入感と、直接触れて鑑賞することができること。教科書などでしか見たことがなかった名画が、想像以上の存在感とスケールで目の前に押しよせてきます。名画に触れ、凹凸やはがれ、キャンバスの質感までリアルに再現されており、ほかにはない“体験型美術館”です。
そもそも「陶板」とは一体何なのでしょうか。簡単に言うと「平らな焼き物のプレート」のこと。私たちが普段使っているお皿と同じ陶器の仲間です。大塚国際美術館にある陶板はすべて、鳴門海峡の海岸にある白砂が使われています。陶板を作っているのは大塚オーミ陶業株式会社。コンクリートの材料として安価に売られていた砂をタイルの原料として採取し、独自の技術で大きくて歪みのない陶板へと生まれ変わらせました。
もちろん、オリジナルが見られたら良いですが、環境汚染や自然災害、火災などからの被害の恐れがあります。しかし、案内をしてくれたスタッフさんいわく、陶板名画であれば約2000年以上経ったとしてもそのままの姿で残るので、何世代にわたって文化を伝えることができるのです。
今回のちゃん旅のまとめ
この旅では、緑あふれる観光スポットと、「陶板名画」に触れられる美術館という、全く違った2施設を訪れました。しかし、それぞれに共通しているのは「土」です。この2つのスポットを回って気づいたのは、私たちが何気なく踏みしめている「土」にも、人間と同じように“生き様がある”ということ。植物を育て自然環境を良くするだけなく、文化を次の世代へとつなげるために変身できる「土」。これは人間と同じなのではないでしょうか。私たち人間も、日々の生活や時間を送ることで人生を豊かに肥し、自分という土壌を育てることで人生に彩りを加えていく。今回の「ちゃん旅」でふれた「土」を通して、人生や自分をじっくり見つめることができました。
「ちゃんと旅をする」とは、自分の五感と止まらない好奇心、目の前にある世界に感動と感謝の気持ちを持ち続けるということ。自分の土壌に種をまき、育て、慈しみ、2000年も先に残る色褪せない旅を探すこと。今回の旅で少しだけ「ちゃんと旅をする」が見えた気がしました。














