【秋田 横手・湯沢】醸造の深淵へ。五感を研ぎ澄ます秋の「酒と発酵」巡礼旅

秋田県

2026.05.04

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【秋田 横手・湯沢】醸造の深淵へ。五感を研ぎ澄ます秋の「酒と発酵」巡礼旅

“発酵の聖地”としていま熱い視線を浴びている秋田県横手市。秋はひやおろしと独自の発酵文化の魅力が深まり、大人の酒旅にぴったりな季節。食プランナーで利酒師の筆者が、美酒だけではなく、伝統的な手仕事から、暮らしに馴染む麹、そしてアートの域まで昇華された発酵の最前線を巡ります。

目次

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街に満ちる、醸造の気配

本物のかまくらを一年中体感できる「横手市ふれあいセンター かまくら館」

160年以上、木桶仕込みを守る老舗味噌・醤油蔵「石孫本店」

国登録有形文化財の蔵で味わう「旬菜みそ茶屋 くらを」

特殊酵母が導く発酵の最前線「ヤマモ味噌醤油醸造元」

おわりに

◆この記事を書いたメンバー:早坂久美さん

街に満ちる、醸造の気配

“かまくらと焼きそばの街”として知られる秋田県横手市ですが、この土地の本当の奥行きは、奥羽山脈がもたらす清冽な雪解け水と米、そして米こうじが育んできた発酵文化にあります。日本酒はもちろん、味噌、醤油、漬物まで。冬の厳しい寒さを味方につけた「醸し」の知恵が、今も暮らしの中に息づいています。

仙台駅から秋田新幹線で大曲まで。奥羽本線に乗り換えれば、20分かからず横手駅に到着。駅に降り立った瞬間から感じる、どこか懐かしい香りの正体は……街全体を包み込む、甘く香ばしい“醸造の吐息”。雪国の知恵が凝縮されたこの街では、風までもが発酵の気配を運んでくるようです。

本物のかまくらを一年中体感できる「横手市ふれあいセンター かまくら館」

まだまだ暑さが続く9月初旬。本格的な醸造蔵巡りの前に、まずは軽くジャブを。思いっきり“涼”を感じるスポットとして立ち寄ったのが「横手市ふれあいセンター かまくら館」です。ここでは冬の伝統行事「かまくら」を一年通して体感でき、常時マイナス10度に保たれた展示室には、本物の「かまくら」が展示されています。
入った瞬間に、ひんやり〜!凛とした冷たさに身も心もシャキッとしたところで、いよいよ豊かな発酵文化が息づく場所へと繰り出します。


◆横手市ふれあいセンター かまくら館
住所:秋田県横手市中央町8番12号(奥羽本線横手駅より徒歩で約10分)
電話:0182-33-7111
開館時間:9:00~17:00
休館日:12/29~1/3※その他臨時休館あり
料金:高校生以上100円

横手市ふれあいセンター かまくら館 公式HP

160年以上、木桶仕込みを守る老舗味噌・醤油蔵「石孫本店」

続いて車で20分程の距離にある石孫本店へ。秋田県産の原料と伝統的な木桶仕込みにこだわる味噌・醤油醸造元で、160年以上の歴史がある老舗です。味噌と醤油の仕込み工程に沿って蔵見学もできますが、お酒好きならスルーできないのが「なま醤油絞り体験」!

手押しの小型搾り機に諸味(もろみ)を入れ、体重をかけていくと醤油が少しずつ垂れてくる…それを小瓶に詰め、持ち帰ることができるというもの。無添加・非加熱の搾りたて生醤油!味見すると塩辛くなく、まろやかな口当たりに驚きます。まるでお酒を利くように何度も味わってしまいました(笑)


◆石孫本店
住所:秋田県湯沢市岩崎字岩崎162番地
電話:0183-73-2901
営業時間:平日9:00〜16:30、土日祝・GW・お盆期間は10:00〜16:00
料金:蔵見学: 1,000円(お土産付き、所用時間 約30分)※要予約
   なま醤油絞り体験:2,000円(所用時間 約60分)※1回6名まで。要予約

石孫本店 公式HP

国登録有形文化財の蔵で味わう「旬菜みそ茶屋 くらを」

石孫本店から車で10分。ランチは「元酒蔵」という胸躍るロケーションの「旬菜みそ茶屋 くらを」に立ち寄りました。大正時代から続く「羽場こうじ店」が手がけるこの店は、国登録有形文化財の内蔵を擁する、まさに発酵の殿堂。

月替わりの「こうじ屋のお昼ごはん」に、ご近所さんである日の丸醸造『まんさくの花』のひやおろし(例年9月発売)を添えて。ひと夏寝かせて「秋あがり*」したお酒のまろやかさが、麹料理の旨みを増幅させて、もう「合う合う~!」と箸が止まりません。
麹が醸し出す甘みは、素材の良さをそっと引き立てる名脇役のよう。伝統ある蔵の空気感とともに味わう「酒と麹の共演」は、体中が喜ぶような滋味深い体験でした。

*秋あがり:春に搾った新酒を火入れを経て落ち着かせ、低温でひと夏熟成させることで、新酒の荒々しさが抜け、旨味や円熟味が増してまろやかになった状態


◆旬菜みそ茶屋くらを
住所:秋田県横手市増田町増田字中町64
電話:0182-45-3710
営業時間:10:00~17:00、ランチ:11:30~15:00
定休日:水・木曜日

旬菜みそ茶屋くらを 公式HP

特殊酵母が導く発酵の最前線「ヤマモ味噌醤油醸造元」

1867年創業、2024年には店舗兼主屋ほか7棟が国指定登録有形文化財に登録されています

旅のクライマックスは、これまでの「酒旅」の概念を根底から覆す場所、「ヤマモ味噌醤油醸造元」へ。目玉は、自社開発のオリジナル酵母「Viamver®(ヴィアンヴァー)」が導く、ファクトリーツアーです。……と、ここで「酒旅の最後に、なぜ醤油蔵?」「それに、醤油蔵でファクトリーツアーって一体何?」と、文字面だけを見て首を傾げた方も多いはず(笑)。わかります。私も現地でその全貌を体験するまでは「?」の連続でした。
このファクトリーツアーの本質は「醤油の工程を見ること」ではありません。 諸味蔵、レストラン、茶室、座敷……と、蔵内の5つのロケーションを巡りながら待っているのは、その場、その瞬間のためだけに設計された「ペアリング体験」です。

諸味蔵

Viamver® で醸造したワインと、豚肉やりんご、チーズが合わさったフィンガーフードをペアリング

初代蔵では、レッドワインのペアリング

Viamver®に漬け込まれた豚肉と、ブドウやチーズとともにパイに載ったフィンガーフード

最初に足を踏み入れた諸味蔵では、思わず歓声があがりました。ずらりと並ぶ巨大な木桶、そこに漂う芳醇な香りに包まれながらのペアリング体験。醸造の「現場」そのものが特等席に変わる…そんな息を呑むような演出とともに、発酵の深淵へと誘われていくのです。
供されたのは、鮮やかなオレンジワイン。合わせるのは、自社酵母Viamver®で発酵させた豚肉です。ソースの一滴、調味料のひとつひとつにまで緻密な意図が込められており、その計算し尽くされたマリアージュに、ただただ圧倒されるばかりです。

メインのジビエ料理

サラダはヨーグルトとハーブをブレンドしたドレッシングでいただきます

ショップスペースと飲食スペース

メイン前の口直しにお茶などを茶室で

メインディッシュのジビエは、自社酵母Viamver®のソミュール液に漬け込んだラム肉です。臭みが全くなく、とても柔らかで驚きました。
2026年には登録有形文化財の蔵で宿泊事業も始まる予定なのだそう。ますます目が離せません。


◆ヤマモ味噌醤油醸造元
住所:秋田県湯沢市岩崎岩崎124
電話:0183-73-2902
営業時間:
【ショップ/カフェ】不定休 10:00~17:00
【ランチ/ツアー】 月、木~日10:00~16:00(LO15:00)
※ディナーとツアーは完全予約制

ヤマモ味噌醤油醸造元 公式HP

おわりに

濃い…あまりにも濃すぎる内容!
日本酒に始まり、オレンジワイン、レッドワイン、そしてどぶろくやクラフトサケまで。ジャンルを跨ぎ、時空を巡り、最後の一口を飲み干したとき、味わっていたのは料理そのものだけではないことに気づきました。横手という土地が積み重ねてきた「時間」と、目に見えない「菌」たちが織りなす情熱そのものだったのです。

あなたもこの季節、五感を解放して「醸しの深淵」を巡る旅に出かけてみませんか?
きっと、次の一献を味わうときの景色が、鮮やかに変わるはずです。

◆この記事を書いたメンバー:早坂久美さん

「ちゃんと旅を考える学校」第2期生。日本酒LOVEの利酒師&日本酒学講師。杜の都 仙台在住。日本酒を軸に、蔵見学や日本酒イベント、酒に合うお店、簡単おつまみレシピなどを発信中。地域の農業・漁業生産者の思いにも目を向けながら、土地と味わいをつなぐ酒旅を綴っています。

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