青森県には、縄文時代の人々の暮らしや精神文化を今に伝える約3,500もの遺跡が点在。そのうち8つは「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界文化遺産に登録されています。巨大集落やストーンサークル、土器やアクセサリー。そこから見えてくるのは、豊かで創造的な縄文人の暮らし。そこで「縄文人はとても創造的で働き者」と教えてくれた三内丸山遺跡センターの佐藤さんにインタビュー。青森に残る8つの縄文遺跡を手がかりに、縄文人のリアルな暮らしを深掘りします。

縄文時代は約1万5000年前から2400年前まで続いた、日本史の中でも非常に長い時代。現代の「100年」が短く感じるほど、途方もない年月が流れていました。この時代、人々は狩猟・採集・漁労を中心に暮らしながら定住生活へと移行し、独自の文化を発展させていきます。装飾性の高い土器や翡翠のアクセサリーなどからは、美意識や精神文化の豊かさもうかがえます。縄文人は、ただ生きるだけではなく、暮らしを楽しみながらさまざまな工夫をしていたようです。
縄文人の暮らしを知る手がかりとなるのが、三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)や是川石器時代遺跡(これかわせっきじだいいせき)といった集落遺跡です。三内丸山遺跡では、クリの木を計画的に育て、食料だけでなく大型掘立柱建物跡や住居の柱にも活用していたことが判明。自然の恵みを無駄なく使いながら暮らしていたようです。また、新潟県産のヒスイを加工したアクセサリーも多く見つかり、是川遺跡では美しい漆製品も出土していて、実用性だけでなく“美”を取り入れていた様子がうかがえます。さらに、骨や石器の破片を再利用するなど、ものを大切に使い切るサステナブルな暮らしぶりも見えてきます。
写真:三内丸山遺跡センター蔵/田中義道 撮影
出典:JOMON ARCHIVES(八戸市教育委員会撮影)
出典:JOMON ARCHIVES
縄文人は、山や森など自然そのものを祈りの対象としていたと考えられています。その手がかりとなるのが、小牧野遺跡(こまきのいせき)や大森勝山遺跡(おおもりかつやまいせき)に残る「ストーンサークル」。人々が集まり、祈りや弔い、祭りを行った場所ともいわれています。小牧野遺跡は、丘陵上に環状列石が作られ、三重になっているのが特徴です。一方、大森勝山遺跡は岩木山の裾野に位置し、山そのものを神聖な存在として見ていたのでは、とも考えられています。定住の成熟期には、こうした場が地域のシンボルとなっていたのかもしれません。
出典:JOMON ARCHIVES
出典:JOMON ARCHIVES(七戸町教育委員会撮影)
出典:JOMON ARCHIVES(七戸町教育委員会撮影)
田小屋野貝塚(たごやのかいづか)や二ツ森貝塚では、貝殻をはじめ、魚や動物、鳥の骨が見つかっており、縄文人の豊かな食生活が見えてきます。木の実や果実を食べ、土器で煮炊きを行い、イルカやクジラの骨も見つかっています。また、貝塚は単なるゴミ捨て場ではなく、祭祀の場でもあったと考えられ、まだ使えそうな土器や骨製品も出土しています。さらに二ツ森貝塚ではイヌの骨も発見されており、狩猟のパートナーとして大切にされていた様子も。田小屋野貝塚で見つかったベンケイガイのブレスレットや、現在は青森で採れないハマグリの貝殻の存在から、当時の気候や環境の変化まで読み取ることができます。
出典:JOMON ARCHIVES(青森県立郷土館所蔵、田中義道撮影)
縄文文化のはじまりと発展を象徴するのが、大平山元遺跡(おおだいやまもといせき)と亀ヶ岡石器時代遺跡の土器です。大平山元遺跡では、約15,000年前の日本最古級の土器が出土しており、模様のないシンプルな形が特徴。縄文文化の“はじまり”を感じさせます。一方、亀ヶ岡石器時代遺跡から見つかった縄文時代晩期の土器は、美しく装飾されているのが特徴。時代とともに土器が洗練され、アートのような美意識が育まれていったのかも。土器の登場により煮炊きが可能となり、食の幅が広がって定住化も進展。縄文人は技術と美意識を発展させ、豊かな文化を築いていきました。
出典:JOMON ARCHIVES(つがる市教育委員会所蔵)
出典:JOMON ARCHIVES(青森県立郷土館所蔵、田中義道撮影)
約1万年以上続いた縄文時代。遺跡をめぐると、縄文人は自然とともに暮らしながら、サステナブルな知恵を育み、グルメやアートまで楽しんでいたのかもしれない――そんな想像がふくらみます。縄文人、意外とQOL高いのでは!? と思わされる場面もたくさん。縄文文化は、このあと稲作の広がりとともに、ゆるやかに弥生時代へと移っていきました。ぜひ縄文遺跡を訪れて、遥か昔の人々の暮らしをのぞいてみてください。
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