豊かな海と祈りの島の至宝 新上五島町の名品を訪ねて

豊かな海と祈りの島の至宝 新上五島町の名品を訪ねて

四方を海に囲まれ、7つの有人島と60あまりの無人島で構成される新上五島町。潜伏キリシタンの地としても知られるこの地には、豊かな自然の恵みと日々の暮らしのなかで育まれた数々の名産品があります。数世紀にわたって、人々が大切に受け継いできたこの地ならではの品は、どれも滋味豊かで質実剛健。暮らしの知恵が詰まったとっておきの逸品をご紹介します。

写真/齋藤 弦(ACUSYU) 文/カマサキココロ(STUDIO346)

椿油と手延べが生み出す美しい“幻のうどん”

五島手延うどん

五島手延うどん

遣唐使の時代に中国から五島列島へ伝わった麺料理がルーツとされる「五島手延うどん」は、新上五島町が発祥。離島で生産されている希少さから「幻のうどん」とも称されています。細く美しい見た目ながら、しなやかでコシのある食感が特徴。麺を延ばす際、表面に椿油を使用しているため、のびにくく、地元では鍋で煮ながら食べる「地獄炊き」が愛されています。つるんとしてお箸から逃げやすい五島手延うどんをすくうための「うどんすくい棒」も必須アイテムです。

「はじめまして」なのに懐かしい素朴な甘みを生かすシンプル製法

かんころ餅

潜伏キリシタンの移住と共に、長崎本土から伝わってきた「かんころ餅」。天日干しにしたサツマイモを砂糖、餅米と一緒についたもので、素朴な甘さとむっちりとした食感が特徴の郷土菓子です。常温で保存ができるので、お土産にもぴったり。できたてはそのまま食べられますが、もともとは保存食で薄くスライスして軽く焼いていただきます。焼くと外はかりっと、中はもちっとした食感になり、サツマイモの風味が増します。バターで焼いたり、角切りにしてフライにしたり、アレンジは自在。懐かしい味わいで、老若男女に喜ばれます。

かんころ餅

急峻の山々でたくましく育った上質な椿を普段使いに

椿商品

椿商品

新上五島町は日本でも有数の椿の自生地として知られ、町木・町花に指定されています。その椿の実を一粒ずつ丁寧に搾油してできあがる貴重な椿油は、島内外にリピーターも多い人気の品。上質な椿油にはさらりとして香りにクセがなく、髪だけでなく、顔や体など全身にくまなく使える優秀アイテムです。初めて使う人には、椿油をベースにした石けんやハンドオイルなど使いやすいラインナップも。そのほか、丈夫でつややかな椿の木を使った木工品、椿柄のかわいらしい小物なども揃います。日々の暮らしのなかで使えば、旅のあとも新上五島町の豊かな自然に包まれている気分になれます。

豊かな海から食卓へ名役者揃いの逸品に舌鼓

水産加工品

東シナ海と五島灘に囲まれ、全国屈指の水産漁業地として知られる新上五島町。ここであがる魚介類を使った干物や出汁パックも見逃せません。手を加えすぎず、滋味豊か。なかでも特に注目したいのが、秋に最盛期を迎える特産のアゴ(飛魚)。出汁パックやスープのほか、干物や酒のつまみにもなる一夜干しなど、アゴを使った商品は種類豊富。アゴのみならず、新上五島町で外せないのが、生本マグロ。マグロの養殖が盛んで、町内では一度も冷凍していない島育ちの生本マグロが食べられます。数に限りがあるので、お店で食べる際は予約が必須。しっとりとした舌触りと旨みが凝縮された、生本マグロをご堪能あれ。

水産加工品
水産加工品
水産加工品
五島灘

サツマイモも酒造りも町内生産ほっくりとした甘みの焼酎

五島灘

2007(平成19)年に五島列島初の焼酎酒造として誕生した「五島灘酒造」。ここで生産されるのは、地元産のサツマイモのみを使用した完全・新上五島町産の芋焼酎「五島灘」シリーズです。蒸したイモの柔らかな香りときめ細かな口当たり、そしてコク深い味わいに、女性のファンも多いのだとか。2016(平成28)年より毎年9月に限定発売されている「明治之芋(めいじのいも) 五島灘」は、明治時代に新上五島町で広く栽培されていた幻のサツマイモ「金ぼけ」の作付量を回復させて使用した芋焼酎。アツい思いが成就した執念の一杯をぜひ。