“神々の島”とよばれる壱岐島(いきのしま)を地元民の口コミでめぐる、IKI(息)抜きドライブ旅
今回訪れたのは、長崎県にある離島・壱岐島。長崎空港から約30分で到着し、車で約2時間で島全体を1周できるほどコンパクトな島です。いつもは事前にばっちり下調べをしてから旅に出るタイプなのですが、この旅では、島で出会った人からの「口コミ」で目的地を繋ぐことに挑戦してみました。事前調べでは得られない、素敵な人やスポットとの一期一会の旅を、旅色LIKESライター・おんりがご紹介します。
目次
小型プロペラ機で「神々の島」へ降りたつ
壱岐島(いきのしま)は長崎県にありながら、福岡県や佐賀県の方が地理的に近い島です。博多港や唐津港からジェットフォイルやフェリーを利用する人が多く、長崎からは飛行機でしか行くことができません。今回は、オリエンタルエアブリッジ(ORC)のタイムセールを利用することにしました。長崎空港から約30分の空の旅は、小型プロペラ機の疾走感を楽しんでいるとあっという間です。
日本初! 無垢材の木造4階建ての「睦モクヨンビル」を見に行こう
今回宿泊したのは、2024年にオープンしたばかりの「睦モクヨンビル」です。木造4階建てということから、「モクヨンビル」と名付けられました。「睦」は、設計した有限会社睦設計コンサルタントから取っているそう。1階がカフェ、2階が宿泊施設、3階がコワーキングスペース、4階がレンタルルームという複合施設になっており、地元の人から観光客まで幅広く利用されています。この日も、地元の高校生たちが制服姿でおしゃべりに花を咲かせていました。学校の近くに、こんなオシャレなカフェがあるなんてうらやましい……。
2階の宿泊施設が満室だったため、4階レンタルルームを利用させて頂きました。宿泊費は、驚きの1人1泊素泊まり5,000円! 滞在期間中は目の前にある天然温泉「いき湯川温泉」に入り放題という贅沢設定。 トイレ・シャワールームは共有ですが、Wi-Fiや冷蔵庫完備で清潔感があり、長期滞在にはもってこいです。
「睦モクヨンビル」は、近年トレンドとなっている分散型ホテルです。宿に泊まり、食事や入浴は、宿周辺にある飲食店やカフェ、銭湯や温泉を利用します。宿泊者は、自由な選択肢でリーズナブルに各施設を利用することができ、地域活性化も図れます。
「睦モクヨンビル」の徒歩圏内には、壱岐牛料理店「壱岐牛和牛 弦」や、郷土料理がいただけるカフェ&レストラン「壱州茶屋 with ritomaru」、立ち寄り湯 「いき湯川温泉」などがあり、宿泊者には優待割引などの特典がついています。エリア内には、フィンランド発祥のスポーツ「モルック」の競技場や、『ドラえもん』にでてきそうな土管があったりと遊び心満載! 壱岐初のエリアブランド「梅坂ふろしき」として親しまれています。ツリーハウスをつくる計画もあるそうで、今後の展開が楽しみです。
ビルのオーナー兼・設計者でもある松本隆之さんに、木造4階建てのビルに挑戦した理由をお聞きしました。きっかけは2019年の建築基準法の改正だったそう。木造建築物設計の自由度が増し、挑戦できる幅が広がったのだとか。他にも、脱炭素化に配慮した建築への取り組み、建築技術の継承と人材育成、木材のマイナスイメージ(燃えやすい、腐りやすいなど)の払拭、国産木材の積極的活用による循環型林業への参画、地域活性化と雇用の促進などの理由があったそう。多角的なアプローチと、革新的な試みが評価され、「睦モクヨンビル」は様々な賞を受賞しています。壱岐という小さな島から、地球全体の環境や、未来の子どもたちに向けた志の高い取り組みが発信されていることに驚き、同じ長崎県民として誇らしくなってしまいました。
壱岐育ちの松本さんにおすすめスポットを聞いてみたところ、夕陽が美しい「猿岩」とカレーが絶品な「チリトリ自由食堂」を教えていただいたので、早速行ってみます。
◆睦モクヨンビル
住所:長崎県壱岐市郷ノ浦町片原触407-1
電話番号:0920-47-1819
営業時間:10:00~18:00(カフェのみ)
定休日:水・木曜日(カフェのみ)
壱岐グルメ①「チリトリ自由食堂」
教えていただいた「チリトリ自由食堂」は、芦辺港の近くにあります。お昼どきに訪れると、店内はほぼ満席! アジの出汁と自家製スパイスを合わせた「鯵ミールカレー(1,350円)」も気になりますが、ネーミングが面白い「イキランカプレート(1,450円)」を注文することにしました。カレー2種類と副菜5種類が乗ったスリランカスタイルのカレーは、地元の新鮮な夏野菜と複雑なスパイスが混ざり、最後まで味の変化を楽しめます。
次々と訪れるお客さんを、元気なお兄さんが2人でちゃきちゃきと切り盛りしている姿が小気味よく、夏の間だけ海水浴場に現れる「海の家」のようでした。「チリトリ自由食堂」という名前は、昔近所にあった「千里十里食堂」からきています。壱岐の人達は、島の歴史や想い出を大切にしている印象を受けました。
◆チリトリ自由食堂
住所:長崎県壱岐市芦辺町芦辺浦62
電話番号:0920-40-0107
営業時間:11:30~17:00
定休日:火・水曜日
壱岐グルメ➁お菓子とパンとヨガの店「Chado(チャド)」
明日の朝ごはんを調達するために立ち寄ったのは、壱岐に住む友人が教えてくれた「お菓子とパンとヨガの店Chado(チャド)」です。ナチュラルで可愛らしい店内には、原材料にこだわり、丁寧に作られたお菓子やパンが並びます。
私が気になったのは、ガラスケースにずらりと並んだベーグル。全種類食べてみたい衝動を抑えつつ、「日向夏とクリームチーズ」「紅玉りんごとクリームチーズ」「トミーさんのスパイスカレー」を選びました。看板商品のバウムクーヘンは、夫へのお土産として購入することに。ドイツから取り寄せた専用の機械で焼き上げたバウムクーヘンは、シンプルでありながらリッチなお味で、「味見」と称して結局私が全部食べてしまいました……。
オーナーに壱岐のおすすめスポットを聞いてみたところ、勝本港にある「酒蔵喫茶との」と、クラフトビールの「ISLAND BREWERY(アイランドブルワリー)」を教えていただいたので、こちらも立ち寄ります。
◆お菓子とパンとヨガの店「Chado(チャド)」
住所:長崎県壱岐市石田町湯岳射手吉触164-7
営業時間:10:00~18:00
定休日:月~水曜日、日曜日
翌朝、「せっかくなら海を見ながら朝食を食べたい!」と思い立ち、宿泊した「睦モクヨンビル」のスタッフの方に、おすすめの場所を聞いてみました。「できれば車から海が見える場所がいい」という私の我儘なリクエストに、学生時代、よく友達と集まって海を見ながらおしゃべりしていたという「青い海と緑の広場」と「弁天崎公園」を挙げていただきました。
友人とキラキラ光る海をぼーっと眺めながら、淹れたてのカフェラテと素材を生かしたベーグルをいただいていると、学生時代に戻ったような解放感があります。カフェラテは、「睦モクヨンビル」のスタッフさんが、営業時間外にも関わらず快く淹れてくださったもの。優しいスタッフさんのおかげで、島旅ならではの贅沢な朝時間を満喫することができました。穴場スポットを知ることができるのも、口コミ旅ならではの醍醐味です。
◆青い海と緑の広場
住所:長崎県壱岐市郷ノ浦町郷ノ浦
壱岐グルメ③「酒蔵喫茶との」
「Chado」のオーナーさんおすすめの「酒蔵喫茶との」は、勝本港近くにあります。築約300年の酒蔵をリノベーションした大正浪漫喫茶で、天井の巨大な梁(はり)に酒蔵の歴史を感じます。お店の看板メニュー「プレミアムあじフライ定食」は、とっても肉厚でジューシー。身がふわふわで、塩だけで充分旨味を感じられます。他県から訪れた方は、初めて見るあじフライの大きさにびっくりするのではないでしょうか。
お店の方に声をかけると、2階も見学することができます。立派な書や神棚があり、木桶などの道具も保管されていました。テレビ東京系『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ! 』の人気コーナー「開かずの金庫を開けろ! 鯨王の旧屋敷に眠る開かずの金庫」に出演されたこともあるのだそう。
◆酒蔵喫茶との
住所:長崎県壱岐市勝本町勝本浦207
電話番号:0920-40-0901
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜日、第4水曜日
「酒蔵喫茶との」から「ISLAND BREWERY」までは、勝本浦商店街を歩いて約3分。車を運転していたので、ビールの購入には至りませんでしたが、オシャレなパッケージのクラフトビールに後ろ髪を引かれる思いでした。
商店街を歩いていると、商店街の一角に佇んでいたおばあちゃんに声をかけられました。「飛べないみたいなのよ、大丈夫かしら」と言われた先を見てみると、スズメの子どもが羽をパタパタさせています。連れて帰るわけにもいかず、しばし3人で見守りましたが、心配そうに立ち去るおばあちゃんの姿に、「ちょっとした変化に気づき、足を止めて気に掛ける時間や心の余裕が、今の私にあるかなぁ」と考えさせられました。
壱岐は奇岩の宝庫! 自然が創り出した奇岩3選
①そっくり度100%の「猿岩」
松本さんに教えていただいた「猿岩」は、壱岐の代表的な観光スポットのひとつです。高さ約45メートルの巨大な岩は、驚くほど猿にそっくり!この日は雲が多く、残念ながら美しい夕陽を眺めることはできませんでしたが、駐車場の近くに「猿岩」へと続く小径があり、探検気分で散策を楽しみました。
◆猿岩
住所:長崎県壱岐市郷ノ浦町新田触870番地
➁そっくり度75%「微笑むゴリラ岩」
「微笑むゴリラ岩」は、牧崎公園内にあります。公園といっても、住宅街にあるような公園ではなく、広大な天然芝と海食崖が続く景勝地です。公園の入口には、「ここはゴルフ練習場ではありません。公園内ではゴルフの練習をしないでください」という看板があり、思わず笑ってしまいました。先ほどの「猿岩」に比べるとそっくり度は劣りますが、見れば見るほどゴリラに見えてくるから不思議です。
◆微笑むゴリラ岩
住所:長崎県壱岐市郷ノ浦町渡良東触
③本当は対になっている「鬼の足跡」
日本百名洞のひとつ。周囲約110メートルあるのだそう。
「鬼の足跡」は、「微笑むゴリラ岩」と同じく牧崎公園内にあります。大鬼が鯨を捕るために踏ん張ってできた足跡とされ、もう片方の足跡は、ここから車で30分ほど、島内の勝本町辰ノ島の蛇ヶ谷にあるのだそう。残念ながら辰ノ島まで確認しに行く時間はありませんでしたが、相当な大鬼だったことは間違いありません。穴の上に残っている石橋のようなところまで行くと、足跡の大きさをより実感することができます。
壱岐の絶景スポットは断崖絶壁が多く、風が強いにもかかわらず、立ち入りを制限するような看板や柵などが設置されていないところが私の推しポイント。断崖絶壁のギリギリまで近づき、スリリングな自然の造形美とスケールの大きさを思う存分体感することができます。
◆鬼の足跡
住所:長崎県壱岐市郷ノ浦町渡良東触
おわりに
きちんと手入れされた小さな祠。
1泊2日の「口コミ旅」を通して、壱岐が「神々の島」と呼ばれる理由が少しだけわかる気がしました。自然の豊かさや神社の数の多さはもちろんですが、出逢った人たちが、島の歴史や土地に感謝や敬意を持って生活していることを感じたからです。店舗に飾られている神棚や、古いものを大切にする姿、小さな変化に気づく心の余裕と豊かさ、掃除が行き届いた商店街や小さな祠など、そこかしこに神様が宿っているような気がします。旅先の空気感や日常を知ることができるのも、口コミ旅の良さなのかもしれません。みなさんも旅先で迷うことがあったら、ぜひ口コミ旅にチャレンジしてみてください。思いがけない気づきや出逢いが待っているかもしれませんよ。















