【毎年5月に薬草発酵博覧会が開催】1000年以上の歴史が息づく薬草の町・宇陀松山で、身体も心もデトックスする癒し旅
こんにちは。旅色LIKESライターの神奈月みやびです。奈良市内から車で約1時間の場所にある宇陀松山エリアは、『豊臣兄弟!』の主人公・豊臣秀長の配下であった宇陀松山城の城下町として栄えていた面影が残る、ノスタルジックな町です。また、「薬草の町」という顔もあり、“和製ハーブ”として知られている「大和当帰(やまととうき)」を市の名産として売り出し中。漢方で有名な株式会社ツムラやメンソレータムでおなじみのロート製薬株式会社の創始者の出身地でもあります。そんな宇陀松山を旅して、薬草の香りに包まれ、身体も心もデトックスしてみませんか。
目次
宇陀と薬草のゆかりは飛鳥時代にあり
宇陀と薬草の関係は古く、日本最古の正史である『日本書紀』の611(推古19)年5月条に次のような記載があります。
「夏五月の五日に、菟田野に薬猟す。鶏明時を取りて、藤原池の上に集ふ。会明を以て乃ち往く。(以下、略)」
薬猟(くすりがり)とは、旧暦の5月5日に男性が鹿の若角や、菖蒲や蓬(よもぎ)などの薬草を取りに出かけた日のことで、上記の内容は推古天皇(※1)が百官(※2)を率いて、薬猟を行った、という記録です。その後、薬猟は恒例行事となり、この日を「薬日(くすりび)」としたと日本書紀に記されています。なお、菟田野(うだの)は現在の阿騎野(あきの)、つまり、宇陀市大宇陀の真ん中辺りと推定されています。ここは天武天皇(※3)が行幸(※4)し、軽皇子が狩猟を行った場所で、随行した柿本人麻呂(※5)が「東(ひむがし)の野にかぎろひの立つ見えてかえり見すれば月かたぶきぬ」という名歌を残したといわれています。
※1推古(すいこ)天皇:日本初の女帝であり、東アジア初の女性君主。聖徳太子の叔母でもある。聖徳太子を摂政に、天皇を中心とした国の体制づくりを進めた。
※2百官(ひゃっかん/もものつかさ):古代の日本や中国において、中央から地方に至る「すべての役人・官僚の総称」。特定の役職ではなく、「数多くの役人たち」を幅広く指す言葉として使われる。
※3天武(てんむ)天皇:38代・天智(てんじ)天皇の弟。天智天皇が崩御したのち、次の皇位を巡って甥の大友皇子(おおとものみこ)と対立。日本を二分した壬申の乱で勝利し、天皇として即位。
※4行幸(ぎょうこう):天皇が皇居(または御所)を出て、公式にほかの場所へお出ましになること。
※5柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ):万葉歌人の第一人者。天武天皇の皇后・持統天皇に仕えたとされ、「万葉集」に数々の名歌を残した。(筆者の私見ではあるが)天武・持統の息子草壁皇子を悼んだ挽歌や軽皇子を讃える「ひむがしの……」の歌が特に秀逸。
昔にタイムスリップできる? 宇陀松山の町並み
宇陀と薬草の関係性について触れたところで、ノスタルジックな町並みがどう作られたかについても紹介します。
戦国時代に「宇陀三将」と称された秋山氏が拠点として城砦を構えたのが宇陀松山発展の始まり。のちに一帯は豊臣家の支配下になり、さらに江戸時代には織田氏が入部(※6)し、織田宇陀松山藩として栄えました。しかし、織田氏が1695(元禄8)年に転封(※7)。その後は幕府直轄領となり、商家町として栄えました。さらに、江戸中・後期、明治、大正、昭和初期と長い期間にわたって、この地域の経済・交通の要衝として発展。そのため、それぞれの町家の造りに異なる時代の特徴が残り、現在では国の重要伝統的建造物群指定地区となっています。町から電線をなくす取組も進められており、静かな町並みを歩くとタイムスリップしたような気分になりますよ。
薬草の町のランドマーク「森野旧薬園」
そんな宇陀松山地区の中ほどにあるのが「森野旧薬園」。地元の特産である吉野本葛の製造販売の店・森野吉野葛本舗の裏庭にあり、江戸時代享保年間(1716~1736年)に11代目の森野藤助が日本最古の私設の薬園としてオープンしたものだそう。藤助は独自で本草(薬のもとになる動植鉱物)の研究を進めており、江戸幕府8代将軍・徳川吉宗が全国に薬草類の調査を行う採薬師を派遣したときに、その目に止まったようです。藤助は幕府に協力し採薬の補助に勤めたため、後にその功績が認められ、貴重な薬草の種子や苗木が下賜されました。これを自家の裏山に植えたのが「森野旧薬園」の始まりとされています。現在でも約250種類の薬草類が栽培されており、「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」とも呼ばれているカタクリなど、珍しい花が見られます。裏山からは大宇陀の町が一望でき、身も心もすっきりと晴れる気持ちのいい場所です。
◆森野旧薬園
住所:宇陀市大宇陀上新1880番地
電話番号:0745-83-0002
営業時間:9:00~16:30
定休日:不定休
料金:500円
まもなく開催! 薬草の町の見どころが集う「宇陀松山薬草発酵博覧会」
飛鳥時代の薬猟りに始まり、森野旧薬園の存在や「大和当帰」の栽培など、薬草との関りが深い宇陀の町を盛り上げようと、2022(令和4)年に「宇陀の薬草を全国に広める会」が発足。同年から毎年開催されるようになったのが「宇陀松山薬草発酵博覧会」です。毎年5月のどこかの週の土・日曜日に、宇陀松山の町に点在する数ヶ所の会場で、薬草をテーマにした講演会・ワークショップやマルシェなどが行われます。
博覧会の各会場間は、歩くのには微妙な距離です。普段の町歩きであればぶらぶら歩くのも苦になりませんが、目当てのワークショップをはしごするには移動時間を考えないといけないのですが、博覧会の時期限定で小さな送迎車が会場間を巡ってくれますので、これを利用すると便利です。初回から継続し、毎年工夫が凝らされている私が注目している会場を4つ紹介します。
1.奈の音(なのね)
博覧会の事務局がある「奈の音」は、文化財クラスの古民家を改装したゲストハウス。この地に魅せられ移住した前さん夫婦が小さな宿を営みつつ、薬草の普及に努めています。奥さんいわく、薬草にはまったのは「薬草茶でデトックスを実感した」からだそう。博覧会の時期は、古い土扉のついた蔵を改装した部屋や庭で薬草関連の講座が行われます。玄関前や普段は客室となる母屋の2階では、宇陀や吉野のゆかりのお店が自慢の商品を並べるマルシェが開催されており、博覧会情報を知るにはまず立ち寄りたいスポットです。古民家好きの方には、建物も見逃せませんよ。
◆奈の音
住所:宇陀市大宇陀西山91
電話番号:0745-96-9553
営業時間(通常時):チェックイン17:00~ (最終チェックイン~22:00)、チェックアウト~10:00
2.久保本家酒造
久保本家酒造は1702(元禄15)年創業の老舗の酒蔵。「初霞」「睡龍」など、辛口のきりっとした酒を醸しています。
博覧会の時期には、普段は入ることのない年季の入った離れでワークショップが行われ、隣の駐車場では、「酒蔵マルシェ」が行われています。時には、社長の久保順平さんご自慢のチェロ演奏も。博覧会の時期以外にもマルシェイベントが行われることもあるので、宇陀松山に来たら、酒蔵ならではの発酵ランチがいただける直営店「酒蔵カフェ 久保本家酒造はなれ」とともに一番にチェックしてみてくださいね。
◆久保本家酒造
住所:宇陀市大宇陀出新1834
電話番号:0745-83-0036
営業時間:8:00~17:00
定休日:不定休
◆酒蔵カフェ 久保本家酒造はなれ
住所:宇陀市大宇陀拾生722-6
電話番号:0745-83-0010
営業時間: 11:30~16:00
定休日:月・火曜日 ※臨時休業あり
3.報恩寺
浄土宗のお寺で、地元の方にとっては身近な菩提寺となっています。特に薬草にゆかりがあるわけではないですが、博覧会に協賛してくれた住職のご厚意により、講演会、ワークショップを開催。大広間を開放し、薬草の瓶が所狭しと並ぶ、マルシェも行われています。
◆報恩寺
住所:宇陀市大宇陀大東445
電話番号:0745-83-1341
4.大宇陀温泉あきののゆ
こちらは宇陀市営の日帰り温浴施設。天然温泉でさらさらとした泉質は、「美人の湯」として知られていて、宇陀松山の町歩きに疲れた体を癒やしてくれるうれしい存在です。博覧会の時期には、調理室を利用して、染色のワークショップなどが行われますが、博覧会以外の時期でも、この温泉を目当てにした観光客もたくさん来る人気施設です。歩いて疲れた後は、薬草の香りに包まれながら、一風呂浴びてみたいものですね。
◆大宇陀温泉あきののゆ
住所:宇陀市大宇陀拾生250-2
電話番号:0745-83-4126
営業時間:10:00~21:00 ※最終受付20:30
定休日:第3木曜日 ※祝日の場合は営業
宇陀の名産・大和当帰にも注目!
大和当帰を使った商品もたくさん作られている
宇陀では薬草の町ならではの名産・「大和当帰」にも注目です。こちらは貴重な薬草として、古くから宇陀地方で栽培されてきました。根は漢方の生薬に使われますが、以前は葉が捨てられていたため、その利用方法を模索し、お茶や薬膳料理にすることで新たな活用方法が生まれました。血行を良くし、ホルモンバランスを整える、女性の美と健康に効くスーパーフードとして注目を集めています。香りも特徴的です。
おわりに
まもなくはじまる薬草発酵博覧会の会期間中だけでなく、薬草の香りに包まれ身体も心もデトックスする、宇陀は癒しの旅にぴったり。ぜひ遊びに来てくださいね。
◆薬草発酵博覧会2026
開催場所:詳細は公式HPにて
開催日時:2026年5月23・24日(日)
開催時間:10:00~17:00














