熊本県山鹿市で、地元の人の交流から文化を感じる旅
ゆるり文化旅を担当している旅色LIKESライターのじゅんです。今回は熊本県の北部にある山鹿(やまが)市で、米文化にふれる旅へ出かけてきました。日本遺産に指定されている米作り、二千年にわたる大地の記憶~菊池川流域「今昔『水稲』物語」~に含まれている山鹿市。市の中央に流れている菊池川の周辺は米どころとして栄え、車がない時代は川の流れを利用して米を運んでいました。特に、メインストリートだった豊前街道には船着き場が作られ、水運の拠点として発展。すると米問屋や酒蔵、麹屋など米に関わるお店が並び、多くの商人が行き交う場所になりました。そんな米文化で栄えた面影が色濃く残る豊前街道沿いをじっくり紹介します。
目次
まずは、町を知り尽くす案内による「米米総門ツアー」に参加
お米にちなんだお店を巡る町歩き。案内人がリレー形式なのが面白い。
このツアーは、豊前街道にあるお米にまつわる老舗店を巡る、約60分の町歩き。歩く距離は約200メートルと短めですが、ほかのツアーにはない特徴があります。なんと、訪問する各スポットの店主さんたちが案内人になってくれるんです。リレー形式で案内人が変わるので、移動距離は短いものの、濃密なツアー内容となっています。しかも、お土産付き!
発酵食品の仕上がりを決める米麴について、「こうじ専門店 木屋本店」で学ぶ
最初に訪れたのは、味噌や甘酒などの発酵食品を作る「木屋本店」。江戸時代に創業した老舗店で、味噌に甘酒、塩麹作りなどに欠かせない米麹についての話を聞きました。米麹は、お米に合った麹菌をつけて温度管理などをしながら寝かせ、約3日間かけて作ります。出来あがった米麹は雪のように白くふわふわ。味噌や塩麹、甘酒はこの米麹に材料を加え発酵させて作られます。試飲させてもらった甘酒は1〜2晩で発酵し、出来あがるそう。砂糖を使っていないのに甘くてすっきりした後味。同じ米麹を使うものでも、何を作るかで掛け合わせる麹菌の種類やお米が変わるそうで、米麹一つとっても発酵食品の奥深さを感じました。
◆こうじ専門店 木屋本店
住所:山鹿市山鹿1820番地
電話番号:0968-43-2301
営業時間:9:00~17:00 ※土・日・祝日は早めに閉店する可能性有
山鹿の酒文化を今に紡ぐ「千代の園酒造」
2件目は1896(明治29)年創業の「千代の園酒造」。案内役も千代の園酒造の方にバトンタッチ。売店の奥にある史料館を見せてもらいました。館内の中には、どれも長い歴史の積み重ねを感じる酒造りの道具が並んでいます。なかには熊本に残る伝統的なお酒・赤酒の紹介も。赤酒はお正月のお屠蘇として飲まれるほか、甘くてコクがあるのでみりん代わりにもなるのだとか。微アルカリ性なのでお肉も柔らかくなるそう。
敷地内には田の神さあ(たのかんさあ)という米の収穫を願う田んぼの神様が。手にはしゃもじと、すりこぎ棒を持っていて足元は下駄と草履。履物が左右ちがうのは雨の日も晴れの日も、いつもお天気の無事を願っているから。笑顔で穏やかな雰囲気に癒しを感じます。今も息づく熊本の伝統や食分化に触れることができました。
◆千代の園酒造
住所:山鹿市山鹿1782
電話番号:月~金曜日 0968-43-2161、売店直通080-3357-2103
営業時間:月~金曜日 8:00~17:00、土・日・祝日 9:00~16:30
定休日:1月1日~4日
※毎年3月第2日曜日は、千代の園酒造新酒まつりのため、前日の土曜日やお祭り当日は、通常のご見学・お買い物が難しい場合がある
地域の人に受け継がれる想いが息づく「光専寺」
次に向かったのは1578(天正6)年創建の「光専寺」。案内人は再度、木屋本店の店主の方に。光専寺の案内は、店主の方たちの持ち回りなので、誰が案内してくれるかはその日のお楽しみです。
「光専寺」にある楼門は、熊本城を建てる際にサイズが合わないなどで余った木材を使用。空襲や大きな災害からも免れ、約440年前から残っている歴史的なお寺です。こちらには古くから伝わる話があります。約250年前に本もなかった時代、山鹿で一番の大金持ちだった米問屋の親子が約3,000冊もの経典の寄付をしました。この頃、山鹿のお米が関西の方でも評判が良く、ブランド米のようになっていたそうで、その利益で経典を購入。地域のためにと寄付をした経典は今も本堂に大事に保管されています。お米と山鹿の人たちの繋がり、大切に想いを受け継ぐ山鹿の人らしい温もりを感じる場所でした。
◆光専寺
住所:山鹿市山鹿1740
電話番号:0968-43-3154
食べればサクふわ、作るとずっしり? な「せんべい工房」
最後は手焼きが自慢の「せんべい工房」へ。ユニークな店主さんへ案内人が変わります。作っているのは熊本県産のお米を使ったせんべいで、ふわっと軽い口当たりが特徴。味はえびやのり、カレー味など種類豊富。「このせんべい。看板に2秒でできるって書いているんだけど、2秒でできると思う?」と言いながら、実際にせんべいを焼くところを見せてくれました。材料は塩と軽く味付けされた生米だけ。熱せられた金型にティースプーン1杯分程度の生米を入れて、蓋をします。金型を専用の機械に入れて上からハンドルをグルグル回して圧力をかけ、最後にぎゅっと更に圧力をかけるとあっという間に出来あがり。焼きたてを試食させてもらうと、サクふわ触感と香ばしさが絶品でした。
そして嬉しいことに、せんべい焼きも体験させてもらうことに。見た目以上にずっしりと重い金型、機械のハンドルも最後のひと回しするには力が必要で、見た目とのギャップに驚きました。ツアーのお土産は、この一枚ずつ丁寧に焼かれたこちらのせんべい。山鹿の米文化を感じる嬉しい一品でした。
◆せんべい工房
住所:山鹿市山鹿1799
電話番号:0968-43-3158
営業時間:9:00〜16:00
定休日:火・水曜日
米米総門ツアーはこちらで終了。見て体験して、山鹿に根付いた米文化に触れることができました。
◆米米惣門ツアー
集合場所:千代の園酒造駐車場
電話:0968-43-3952(山鹿温泉観光協会)
営業時間::10:00~17:00(ツアーは10:00・11:00・13:00・14:00・15:00のスタート)
定休日:水曜日(木屋本店・千代の園酒造・せんべい工房はそれぞれ見学可能)
参加費用:600円(お土産付き)
100年以上現役の芝居小屋「八千代座」
人々の想いで守られた八千代座。坂東玉三郎の公演もされることでも有名。
「八千代座」は米文化で繁栄した山鹿の旦那衆と呼ばれる実業家たちが建てた芝居小屋。1株30円で集められたのは総額20,000円。芝居のほかにも地元の催し物などが行われ、多くの人が足を運びました。しかし、時代と共に映画、テレビの普及で利用客が激減。次第に八千代座は雨漏りするほどボロボロになり、子どもたちからはお化け屋敷と呼ばれるほどに。取り壊しの話も出ましたが、地元の人より残したいという強い想いで再建されたのが現在の八千代座です。
館内に入ると、「八千代座」の全盛期にタイムスリップしたかのよう。い一番の特徴は天井一面にある広告画。色鮮やかな広告は舞台よりも先に目が行ってしまうほど。よく見ると「米米総門ツアー」で行った「木屋本店」や「千代の園酒造」の広告もありました。
ほかにも、普段では見ることができない奈落という舞台や、花道の下も見学できます。なかでも、日本発祥の「廻り舞台」は4箇所の棒を押しながら回し舞台上を回す舞台装置なのですが、八千代座では今でも人力で動かしていることにびっくりしました。江戸時代から伝わる芝居小屋の仕掛けを実際に間近で見学できるのは貴重な体験です。
さいごに
風情が残る豊前街道はふらりと歩くだけでも、歴史を感じる。
歴史と文化が息づく山鹿。米文化を通じて山鹿の人たちが紡いできた文化を知れば知るほど、また行きたくなる場所です。地元の人とのふれ合いを楽しみながら山鹿の文化を感じる旅へ出かけてみませんか?













