「お遊戯会」と言われた日から20年。青森屋 by 星野リゾートに祭りを受け継ぐ舞台「みちのく祭りや」ができるまで
青森屋 by 星野リゾートには、青森の祭りの熱気を一年中体感できるショー会場「みちのく祭りや」があります。スタッフが祭囃子を演奏し、山車を運行しながら、青森の人々が祭りに込めてきた想いを届ける舞台です。その歩みは最初から順調だったわけではありません。かつて社内で共有されたお客様からのアンケートに、「お遊戯会」という厳しい言葉が残されていたことも……。悔しさを胸に、スタッフたちは地域の祭り関係者から学び、稽古を重ね、青森の祭りへの想いを受け継ぐ舞台を育ててきました。これは、青森屋のコンセプト「のれそれ青森 ~ひとものがたり~」を象徴する20年の物語です。
目次
青森の祭りを宿の体験に。覚悟の宣言から始まった挑戦
2006年5月、当時の総支配人は青森県知事への表敬訪問の場で、「9月に、お祭りをメインにしたショーレストランを完成させます」と宣言しました。青森屋のコンセプト「のれそれ※1青森」のもと、青森の魅力をもっと発信したい——そんな強い思いからの決断でした。その言葉を聞いたスタッフは、初めて聞く総支配人の思いに驚き、同時に「オープンまでわずか3ヶ月しかない。本当に間に合うのか」という不安をいだきます。
※1 津軽弁で「とても・目一杯」という意味
青森4大祭※2が持つ熱気や一体感を、宿で一気に体験できるものにしたい。自らも舞台に上がるために練習を重ねながら、まだ形のない構想を実現していく——宿に戻ってからスタッフに伝えられた総支配人の自ら先頭に立つ覚悟を感じたスタッフは賛同し、オープンまでの怒涛の3か月間がスタートします。
※2 青森ねぶた祭、弘前ねぷたまつり、五所川原立佞武多(ごしょがわらたちねぷた)、八戸三社大祭(はちのへさんしゃたいさい)
数ヶ月で、宴会場を祭りの舞台へ。走り出した準備室
CD音源を頼りにお囃子を覚えた当時のイメージ
演者や演出、舞台づくり、料理など現場は一気に動き出します。何を食べてもらうのか。どのタイミングで祭りを始めるのか。誰が笛を吹き、太鼓を叩き、踊るのか。決めなければならないことは山ほどありました。総支配人と声をかけられたスタッフが祭囃子や踊りを文献とCDを参考に一から覚えて、実践して、振り返りを繰り返し、料理チームはメニューを考案。整った環境で始まったプロジェクトではありませんでしたが、スタッフ一人ひとりが「みちのく祭りや」の実現に向けて着実に進んでいきました。一方で山車の準備は、一筋縄ではいきませんでした。完成が間に合わない山車は、しばらくスクリーンに映す演出にすることに。整った環境で始まったプロジェクトではないなかで、青森の祭りをお客様に届けたいという思いに、スタッフ一人ひとりが応えながら、走りながら形にしていった舞台でした。
迎えた幕開けと、「お遊戯会」という現実
準備をスタートしてから3か月後、みちのく祭りやは何とか幕を開けました。毎日公演を続けながら、終演後にブリーフィングを行い、演奏や動き、会場の空気を振り返りながら進めていきます。踊りも楽器も一から始めたスタッフですが、「自分たちはプロの演奏家ではない。それでも、お客様からお金をいただいている以上、舞台に立つ者としてプロでありたい」そんな思いを、チームの中で何度も確認していました。開幕から約4ヶ月後には、八戸三社大祭の山車も会場に運び込まれ、すべての山車が揃いました。スタッフの熱気がさらにあがっていたころ、社内で共有されるお客様の口コミに、「お遊戯会」という厳しい言葉が残されました。
その言葉に悔しさを感じると同時に、まだ発展途上のなかで、音の厚みも、演出の完成度も、足りていないことを感じていました。「頑張っているお遊戯会ではなく、最高の祭りだったと言われたい」。ここまでチームで、音を確かめ、指の動きや太鼓の打ち方を確かめてきましたが、次第に自分たちだけで舞台を磨くことの限界にも気づき始めました。
地域と積み重ねた信頼が、県内唯一の舞台を育てた
青森の祭りには、音だけでは伝えきれないものがあります。囃子の間、所作、勢い、地域の人々が祭りに込める誇り。その一つひとつを知るためには、実際に祭りを受け継いできた人たちへ教えを請いに行くようになります。「宿を訪れるお客様に、地域で長く受け継がれてきた大切な文化のなかにある熱気や誇りをきちんと伝えたい」。スタッフたちは地域の方と何度も対話を重ねました。
当時を思い出しながら笛の練習をしているスタッフの大西さん
やがて、地域の囃子団体から直接指導を受ける機会をもらいました。祭りには、日本海側の津軽地方と太平洋側の南部地方でそれぞれの音とリズム、勢いがあります。演者スタッフたちは、演奏の種類や構成を学び、身につけ、演出チームは、特徴を際立たせながら、青森の祭りの熱気を1つの舞台でどう届けるかを考え続けました。
毎晩の公演を重ね、地域の祭り関係者から学び続けるなかで、お客様の声にも変化が生まれます。「また見に来たい」「今度は誰かを連れてきたい」「祭りの時期に青森へ来られない人に、青森屋を紹介する」そんな声が聞こえるようになりました。みちのく祭りやは、青森の祭りを借りてつくったものではありません。地域に敬意を払い、教わり、悔しさを重ねながら、ともに育ててきた舞台です。
20年目、教わった音を地域とともに奏でた一夜
2026年8月29日、みちのく祭りやに、ひと際大きな囃子が響きました。これまでご縁を重ねてきた地域の囃子団体を迎え、青森屋のスタッフとともに一夜限りの生演奏を披露した20周年スペシャル記念公演です。地域から教わってきた青森屋が、地域の方々と同じ舞台に立ち、青森の祭りへの想いをともに届ける。その光景は、これまでの歩みへの感謝を、地域とともに音で届ける舞台であり、長い時間をかけて築いてきた地域との関係そのものを表していました。
青森屋から本物の祭りへつないでいく
20年前、青森の祭りを宿の体験にしたいという思いから始まった舞台は、地域に教わり、スタッフが受け継ぎ、お客様へ届ける場所へと育ってきました。スタッフは今日も衣装をまとい、笛を吹き、太鼓を打ち、山車を動かします。みちのく祭りやは、青森の祭り文化を次の人へ繋げていく場所です。青森ねぶた祭、弘前ねぷたまつり、五所川原立佞武多、八戸三社大祭、その土地でしか出会えない熱気や空気を体感する入口でありたいと考えています。青森の祭りをまだ知らないお客様が、みちのく祭りやで囃子を聞き、山車の迫力に触れ、スタッフや地域の人々の思いを知って、いつか、実際の祭りの季節に青森を訪れたくなるそんな始まりの場所であり続けたいです。
●みちのく祭りや
開催期間:通年
休演日:公式サイトで要確認
開催時間:21:00~ ※2027年4月1日より16:30~に変更
所要時間:1時間
※宿泊者のみ観覧可能
◆青森屋 by 星野リゾート
住所:青森県三沢市字古間木山56
電話:050-3134-8094(予約受付時間:9:30~18:00)










