台湾の若者たちと歩く築地場外市場

東京都

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台湾の若者たちと歩く築地場外市場

週末は東京を中心に通訳案内士として活動している、旅色LIKESライターのふみこです。先日、友人から「息子の台湾の友人達が築地に行きたいと言っているので」とガイドの依頼をいただきました。築地場外市場は、私が何度訪れても心躍る、愛してやまない場所。そんな築地を、台湾から来た若者たちの目にはどう映るのか。
実はこの春、家族で台湾を旅してきたばかり。屋台が立ち並び夜遅くまで活気に溢れる夜市、どこで何を食べても美味しい料理、そして何より、明るく親切な人々との出会いが印象的だった。外食文化が根づく台湾の若者の目には築地はどう映ったのだろう。

目次

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築地場外市場へ行ってみよう

昆布のことならなんでもおまかせ「吹田商店」

生鮪が食べられるナイショにしておきたいお店「伊勢友」

最高級A5ランクの和牛が店頭で味わえる「富士ハム商会」

畑のお肉、豆ならおまかせ「山本商店」

築地魚河岸で日本の市場を味わう

家族的な雰囲気が魅力の乾物屋「伊勢正」

台所道具ならここ「山野井商店」

極上の日本茶を味わえる「丸山海苔店」

さいごに

築地場外市場へ行ってみよう

この看板が目印。すしざんまいの社長が場外市場で待ってるぞ。

築地本願寺の塀を右に直進

築地場外市場は“東京の台所”と呼ばれる、おいしいものが集まる街。1935(昭和10)年に関東大震災で被害を受けた日本橋魚市場が移転し、90年以上の歴史がある。2018年に鮪などの競りが行われる場内市場(中央卸売市場)は豊洲に移転。場外市場は移転後もそのままで、人情味にあふれた昔ながらの雰囲気を残している。新鮮な食材を求め、プロや国内外の観光客等多くの人が訪れる。
最寄り駅は日比谷線築地駅。1番出口を出ると、目の前には荘厳な築地本願寺が。重厚で異国情緒漂うその佇まいは、伝統的な”日本の寺”とは異なり、仏教の源流・インドの建築様式を思わせる造りが印象的だ。本願寺を右手に直進すると、”すいざんまい”の大きな看板が目に飛び込んでくる。木村社長は2019年の初競りで重さの278キロの青森県大間産のクロマグロを3億3360万円で落札した一躍“築地の顔”として知られるようになった。築地四丁目の交差点を渡れば、そこはもう築地場外市場。活気と人情が息づく、東京の食の原点だ。東京ドーム2個分の広さに400以上の店舗がひしめく。多くの人が行きかい、威勢のいい声が飛び交って、市場ならではの独特の雰囲気だ。目の前にはアーケードが続くもんぜき通りが。寿司、ラーメンなどのお店に観光客が列を作っている。そこを左に曲がり、まずは築地西通りへ。

チャキチャキと仕切ってくれるトモコさんと絶品トマト

苺を食べに、旬の春におこしください。びっくりするほど甘いですよ。

築地四丁目の交差点を曲がってすぐ、色とりどりの野菜やフルーツが目に飛び込んでくる。築地西通りの入り口にあるのは、1949(昭和24)年の創業の「松澤商店」。社長の目利きで選んだ新鮮な野菜とフルーツが並び、店先は色鮮やか。ここに来ると旬の野菜が一目でわかる。春になると店頭に並ぶ筍。三代目社長の奥さん・トモコさんが糠無しの水だけで煮てアクを抜いた水煮も購入できる。トモコさんによると、築地の良さはほとんどの食材が購入でき、プロの料理人から技を盗めるところだそう。

台湾ではトロピカルフルーツが豊富で、若者たちは日本のフルーツに興味深々。中でも苺を食べてみたいという声が多かったが、ちょうど旬を過ぎていて、手に入れることができなかった。トモコさんによれば、台湾ではマンゴーも人気が高く、シーズンになると仕入れているそうだ。

昆布のことならなんでもおまかせ「吹田商店」

築地のイケオジサイトウさん。

多くの種類の昆布に興味深々。

店先にはいろいろな種類の昆布が並ぶ。

塩昆布。希望すれば復刻版のレトロな袋に入れてもらえる。

松澤商店のお向かいにある「吹田商店」は、店頭には各種の昆布がずらりと並ぶ昆布専門店。1892(明治25)年に大阪で創業し、関東大震災ののちに築地へ。4代目社長は小学校や店内で昆布教室を開催して食育や昆布の魅力を伝えている。築地の店舗では、店長のサイトウさんが、丁寧に昆布について教えてくれる。出汁をひくことが少なくなったが、こちらの日高昆布と鰹節を水に一晩浸けるレシピで、自宅で美味しい和食を楽しんでいる。昆布の束を見るなり、「これ、台湾でも食べてる」との一声。台湾では辛い火鍋が有名だが、日本風の鍋料理を提供するレストランもあり、そこでは昆布が出汁に使われているという。和食ならではの「うまみ」は、台湾でもしっかりと味わわれているのだ。この店で絶対に外せないのが、「塩昆布」。ごはんのお供や、サラダに入れて「うまみ」を楽しめる。台湾では、なんと焼肉の味付けにも塩昆布を使うそうで、「本場の塩昆布で焼肉を食べてみたい」と、早速購入。

生鮪が食べられるナイショにしておきたいお店「伊勢友」

切りたての生鮪の刺身のお味はいかに?

鮪ブロックを触ってみる。初めての体験。

おかあさんが目の前で刺身に切り分けてくれる。

松澤商店のお隣にあるのが、その日の朝に豊洲で仕入れた新鮮な海鮮が並ぶ「伊勢友」。小さなお店なので素通りしていまいそう。1964(昭和39)年に築地市場で仲買として開業。2000(平成12)年10月より場外市場で小売店として営業しているプロ向けのお店。新鮮なお魚はもちろんのこと、おかあさん手作りの銀ダラ西京漬け、ちりめん山椒等も人気。吹田商店のサイトウさん曰く「ナイショにしておきたいお店でしょ。」おかあさんが細腕でお店を守っている。閉店時刻になると吹田商店さんから男性陣がやって来て力仕事をお手伝い。この風景を見るたびに、築地は本当に素敵な街だなあと思う。

今回は特別に用意してもらった長崎県産の生鮪をいただいた。もちろん冷凍無しの生鮪。この三角ブロック一個で赤身と中トロが楽しめる。奥の台所でおかあさんが刺身に切り分けくれた。台湾では生の魚はあまり食べないとのことで、お刺身に興味津々。こちらも食べ歩きはできないので、築地魚河岸の3Fの屋上広場でいただいた。「刺身は生臭いイメージがあったけど、これは新鮮でおいしい。」と生鮪に舌鼓を打っていた。

最高級A5ランクの和牛が店頭で味わえる「富士ハム商会」

まずは食べる前に記念撮影。

焼きあがる間のおばちゃんとの会話が楽しい。暑いからと発泡スチロールの箱のふたで風を送る。

無心に和牛を食らう。

この値段で最高A5ランクの和牛を食べられる。

築地西通りのすしざんまい本店を左に曲がり、細い築地横丁に入っていく。ここ付近が一番混んでいる。はぐれないように気を付けながら、人波に乗ってそろそろ進むと、左側のお店からおばちゃんの元気な声が聞こえてくる。最高級A5ランクの和牛や豚肉がショーケースに並ぶ「富士ハム商会」だ。現在の社長で二代目。戦前、朝鮮で一代目がハムを作っていた時からの屋号だそう。吹田商店の社長さんがこちらの焼き豚推し。地域の方からも愛されているお店だ。観光客向けのお店ではないのだが、ショーケースの和牛を店頭で焼いてくれる。今回は3000円の霜降り肉と、2000円の赤身肉をチョイス。台湾では赤身肉を食べるのが一般的とか。「霜降り肉はジューシーで、赤身は歯ごたえがあっておいしい」と店先で和牛を楽しんだ。焼いてくれるおばちゃんは隠れたグローバル人材で、どの国の人がやってきてもチャキチャキと仕切って、コミュニケーションでも楽しませてくれる。「築地は活気があって楽しいでしょ」と、築地の楽しさをお裾分けもいただける場所なのだ。中国出身のスタッフもいるので、中国語での対応も可能。

畑のお肉、豆ならおまかせ「山本商店」

店主のヤマモトさん。使い込んだ升が店の歴史をもの語る。

丹波の黒豆甘納豆が台湾の若者に刺さる。

購入後、記念撮影。

築地横丁を歩いていくと、通りの先で築地中通りと交わる。ここが築地のメインストリート。市場のざわめきをますます感じる。そこを左に曲がると、左側の店頭で多くの種類の豆の試食を勧められる。ここは「山本商店」。創業75年の全国からのお豆を取り扱う豆屋さん。料理屋さんなどプロも御用達の店。学校給食にも使われているとか。「小さな豆から大きな健康。美容と健康にお豆」が合言葉。店の前を通りかかると、二代目店主のヤマモトさんが、「ニンジャフード」と言いながら煎り豆、甘納豆などを掌にのせてくれる。サムライの時代、豆は戦場での保存食として、大事なたんぱく源だと説明してくれた。口に入れると自然な甘さが広がって、癖になる。一番人気は黒豆甘納豆。台湾にも「甜黑豆(ティエン・ヘイドウ)」という黒豆の煮物があり、前菜としてよく食べているとか。お土産に丁度良いと、ご購入。

築地魚河岸で日本の市場を味わう

このビルの中に、プロ向け店舗が60店。おいしいもの好きにはたまらない。

好きなものを好きなだけ買って楽しむのが、築地のツウの楽しみ方。

屋上の開放的なスペースで日本の味を楽しむ。

築地中通りを抜けて左に曲がり、波除通りを波除神社方向に歩いて見えてくるビルが築地魚河岸。個人商店が並ぶ築地場外市場では珍しい建物だ。1階には鮮魚や青果などの仲卸店が約60店舗並ぶ。場所柄、銀座のレストランのシェフ等、プロが仕入れにやってくる。一般客も買い物ができるが、プロの仕入れが終わる午前9時以降が推奨。もちろん品質は最高で、料理好きにはたまらない。残念ながら、写真撮影は禁止。「綺麗、生臭いにおいがしない。」と市場の清潔さに驚いた様子。日本ならではの市場の雰囲気を楽しみながら、大興奮でお買い物。おいしいものがせめぎあっているので、どれを買えばいいの悩みながら、生ガキ、鰻串、卵焼き等を購入。これら戦勝品をもって、3階の屋上広場へ。テーブルの上に広げて伊勢友の生鮪と戦勝品に舌鼓を打つ。築地ならでの楽しみ方だ。

家族的な雰囲気が魅力の乾物屋「伊勢正」

左から おじいちゃん(三代目)、お兄ちゃん、パパ、イブちゃん、バイトちゃん、ミナコさん(四代目)

ちょっとピリ辛の匂いに、つい、足が止まる。

店頭での日本酒は最高!

冬場のおでんも外せない。

フードコートを晴海通り側に降り左に曲がる。最初のとおりが東通り。向かって左側にある乾物屋の「伊勢正」は、1930(昭和5)年の創業。本枯節薄削りの鰹節は我が家の台所には欠かせない。吹田商店の昆布と合わせだしにするほか、野菜のおひたし、お好み焼きと出番が多い。四代目のミナコさんが店に立っているが、忙しいときはお子さんもお手伝いしている家族的なお店だ。ゲストと伺うと小学5年生のユブキちゃんがお世話をしてくれる。外国人には「イブ」に聞えるらしく、英語版ニックネームは「イブちゃん」。イブちゃんが五代目の有力候補とのこと。「都会のど真ん中にある昭和感漂う街。食材だけでなく、調味料、道具なども一級品が多く飽きませんよ。」とミナコさん。

店先から漂う、パパ特製の牛もつ煮込みの香りに、思わず足が止まる。築地ならではの新鮮な牛もつと、鰹節をふんだんに使った出汁がベストマッチで病みつきになる。冬場は、ミナコさんが丁寧に調理した伊勢正特製の出汁で作る、おでんが人気。日本酒と一緒にどうぞ。一升瓶から注がれる日本酒が人気だとか。昔ながらの店舗の前での立ち飲みは、築地ならでの楽しみ方。

台所道具ならここ「山野井商店」

ふみこの友人たちには築地の”モックン”と呼ばれている。本木雅弘さんに似てる?小学生の頃には登校ついでにお得意さんに配達していたとか。

これさえあれば、帰国後もおうちで日本食が楽しめる。

イチオシの盆ざる。TVの料理番組でも使われている。使い始めたら他のざるの出番がなくなった。

東通りの右手にある小路「築地横町」に足を踏み入れると、左側にふと目に入るのが所せましと台所用品が並ぶ老舗の店先。創業75年の道具屋「山野井商店」だ。プロも使う玉子焼き器やテレビの料理番組でも使われる「盆ざる」など愛される商品が並ぶほか、宮内庁に園遊会用の竹串を収める伝統ある店。元美容師でツーブロックのサムライヘアをしている三代目店主のモックンが迎えてくれる。「道具が良いと料理がおいしくなる」というが、我が家の台所道具はほぼここで購入。玉子焼き器の取っ手がとれると修理までしてもらえるから、道具を長く大切に使えるのも嬉しいポイント。握り寿司・おにぎりの押し型など、日本の食文化を簡単に楽しめる道具も豊富に取り揃えてある。帰国後に日本料理を楽しみたい方、旅のおみやげを探している方には特におすすめ。

極上の日本茶を味わえる「丸山海苔店」

店頭にお茶、海苔が並ぶ。

烏龍茶と日本茶の味を比べなら試飲中。

お土産を真剣な眼差しで吟味中。

竹のインテリアで落ち着く空間の寿月堂。

茶をこよなく愛する国からの旅行者に、日本茶のお土産をと、築地4丁目交差点を銀座方面へ渡った先にある「丸山海苔店 築地本店」へ。場外市場のにぎやかな店舗に比べ、こちらは比較的ゆったりと買い物が楽しめる穴場。江戸時代から続く日本茶と海苔の専門店で、職人が選び抜いた高品質な緑茶と海苔を求めて、有名店のシェフがやってくる。実は烏龍茶と日本茶は、実は同じ茶葉から作られている。大きな違いは発酵度。烏龍茶は30%程度の半発酵、日本茶は不発酵で蒸す工程により旨味と爽やかな渋みが引き立つ。淹れ方も異なり、烏龍茶はⅭ100度に沸騰したお湯で、日本茶は少し冷ました80〜90度のお湯で抽出。店内で試飲を楽しみながら「だから香りがこんなにフレッシュなのね」とお茶好きなお父さんへのお土産を選んでいた。

さらに併設の「寿月堂」では、建築家・隈研吾がデザインした竹に囲まれた落ち着きある空間で、抹茶スイーツや和菓子とともにお茶をいただくこともできる。築地観光の合間に、烏龍茶とはひと味違う日本茶の魅力に触れてみては。

さいごに

築地中通りで記念写真。

「築地の顔」すしざんまいの社長とも記念撮影。

日本の食文化を満喫して、約3時間のツアーは終了。ツアーの最後に参加者のひとりがグーグル翻訳を駆使して、感想を伝えてくれた。「台湾で日本のドラマを見て、日本の街にいってみたいと思っていました。築地はおいしいものがいっぱいで、人情にもあふれていて楽しかったです」。丁寧に挨拶をして去っていく台湾の若者たちの後ろ姿に、国境を越えて食と人を結ぶ築地の懐の深さを感じた。

Author

出逢い旅 ふみこ

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ふみこ

山口県出身。神奈川県在住。 平日は会社員。週末は全国通訳案内士(英語)。史子の名前のとおり歴史好き。交流が旅の醍醐味と、出会った方とおしゃべりを楽しむ。料理好きで、地元のお茶、塩、味噌はマストバイ。自宅で旅の余韻を楽しんでいます。

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