【兵庫県】日本人も外国人も一緒に楽しめる城崎温泉の魅力
特急きのさきが城崎温泉駅のホームにゆっくりと入って行く。平日なので席の半分くらいの乗客。周囲を見渡すと、同じ車両に乗っている日本人は私と友人のれーちゃんだけ。「どこから来たの? どうして城崎温泉を選んだの?」と前の席に座っていた欧米人の女子旅二人組に聞いてみた。彼女たちはイタリアから3週間のバカンスで日本を旅行中で、城崎温泉に訪れた友人から、オーバーツーリズム化していないので温泉をゆっくり楽しめるよ、と勧められたとか。訪日外国人のみが購入できる2週間新幹線乗り放題のJRパスが特急きのさきでも使え、京都から乗り換え無し、約2時間でアクセルできるのが魅力らしい。古都を楽しんだので、今度はゆっくり日本の温泉を体験したいとのこと。「チャオ。良い旅を。」と手を振りながら降りて行った。
目次
観光客にフレンドリーな街
通訳案内士の習性か、まずは観光案内所に行って街の情報を集める。「ゆニバーサルマップ」を手に入れ、ツアースケジュールをたてていく。宿泊する「旅館つたや」は街の奥のロープウェイ近く、駅から徒歩約15分。「スーツケースを宿に置いてから街歩きへ」と思っていたら、300円で荷物を宿まで運んでくれるサービスを発見。しかもJTB予約なら無料。実はJTBトラベルカードを使用していたので、ここでスーツケースとはおさらば。身軽になって温泉街に繰り出した。
城崎温泉最大の魅力の一つは、最寄り駅からのアクセスの良さ。コンパクトにまとまっているので徒歩で散策できる。この温泉街の名物・柳が揺れる大谿(おおたに)川に沿って歩いて行くと、川面に柳の緑が和やかな雰囲気を演出していて、行き交う浴衣姿の観光客たちのおかげで絵になる風景が広がっている。これはフォトスポットやん。リュックからの一眼レフカメラを取り出し、高倍率レンズを装着。れーちゃんは横浜市中区のフォトコンに入賞経験のある強者。二人でパシパシとシャッター切っていると写真が上手な人に見えるのか、「撮って下さい」とスマホを片手にした人達にたくさん声をかけられた。「この位置で右上見て」などとにわかカメラマン頑張ったけど、良い写真が撮れたかしら。
文化圏の違うもの同士でも楽しめる、夜の温泉街
今回のお宿「旅館つたや」で外湯入り放題パスをもらい、浴衣を選ぶと、昔ながらの2階の和室に通される。すると、カランコロンの下駄の音が。縁側の窓から下をのぞくと、浴衣姿の人達が通りをそぞろ歩いている。外国人も多い。耳を澄ませて聞いていると、なにやら英語とは違うヨーロッパ語圏の言語と中国語だ。その話声と下駄の音が心地よい。温泉街ならではの音だ。
夕飯が終わると浴衣に着替えてパスを首から下げて、外湯巡りに出かける。どの旅館・外湯にも混雑状況のわかるiPadが置いてあり、街全体からおもてなしを受けているようだ。仕掛け人は誰なんだろう。そんなことを考えるのは通訳案内士の習性か。
近頃「外国人の温泉マナーがよろしくない」などと言われているが、城崎温泉では日本人観光客、刺青のある外国人、地元の人たち、分け隔てなく温泉を満喫しているのが印象的だった。外湯の一つ「御所の湯」では、隣で髪を乾かしていたイギリス人から「なぜ日本人が風呂あがりにビンの牛乳を飲むかがわからない」と質問された。「風呂あがりに片手を腰にあて、片手で牛乳をグビっと飲むのが日本の習慣よ」と説明したけど、刺さらなかったみたい。
インバウンドの課題の一つとして挙げられているのは、夜に楽しめる場所が少ないという事。が、城崎温泉では夕食後でも外湯や食べ歩きが楽しめる。お土産屋さんのおかあさんの話だと、夜11時までお店を開けるのが、昔からの流儀だとか。アイスクリームを片手に歩いているアメリカ人、お店の軒下でビールを楽しむ欧米人、スイーツをおねだりしている子連れの中国人家族など、思い思いに夜の温泉街を楽しんでいる。それもみんな浴衣姿で。海外生活が長いれーちゃんいわく、「これは外国人、楽しいと思うわ。私もベトナムにいる時はアオザイ着て、インドではサリーで街歩きたかったもん。きっと日本人になった気分よ」。
幕末の重要人物から現代のスターまで集まる「旅館つたや」での出会い
ノリは高校生。還暦だけど
2泊3日の城崎旅行でお世話になったのは、「旅館つたや」。昔ながらの‘建物で、畳の部屋に障子、ロビーから見える日本庭園の中庭の緑が心を和ませる、しっとりした雰囲気だ。なぜ、ここにしたのか。それは、山口出身の維新の志士・桂小五郎(のちの木戸孝允)が、京都で長州軍が会津、薩摩連合軍に敗北した禁門の変の後、身を隠した場所だから。二人が通った山口市にある高校の裏山には、桂小五郎を祀る「木戸神社」がある。高校で出会って子育て、仕事、海外帯同などを乗り越えて、ともに還暦になった。なら、還暦旅行はここしかないじゃない。由緒ある掛け軸等が飾られたロビーで赤いちゃんちゃんこ着て記念撮影。はしゃいじゃってすいません。
この宿に訪れたのは歴史上の人物だけではない。テレビ東京のバラエティー番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』で、あの出川さんがアポなしで宿泊されたとか。オーナーさんが携帯ケースに貼った番組特製シールを見せてくれた。「テレビのままの、丁寧で礼儀正しい方でした」。
老舗旅館で迎えてくれるのは外国人の若者達。部屋へ案内してくれたのはベトナム人のFちゃん。食事のお世話をしてくれたのはネパール人のS君。食事の進み具合に気を配って暖かい料理を出し、お茶をついでくれる。れーちゃんが日本語教師なのを知って、日本語が全くわからない状態で日本に来て苦労したこと、日本語の先生に息子のように可愛がってもらいここまでやってこれたことなどを話してくれた。日本語ネイティブの私にはわからないが、業種により使う日本語が違うらしい。旅館業の日本語やおもてなしを覚え、ここで頑張っていきたいと話していた。
駅まで送ってくれった運転手さんによると、コロナ前は日本人のパートさんにお願いしていた仕事を、今は外国人従業員が担っているとの事。コロナの影響はこんなところにもあるんだ。日本語に苦労しながらも頑張っている姿に、「家族に仕送りもしているんだよね。すごいよ」。違和感なく外国人といっしょに働いている運転手さんもすごいと思うが。
◇旅館つたや
住所:豊岡市城崎町湯島485
電話番号:0796-32-2511
営業時間:チェックイン15:00~18:00、チェックアウト~10:00
おわりに
温泉を楽しもうとやってきた城崎温泉。ここでは国を超えてみんなが温泉街を満喫している。それは誰もが溶け込める街づくりがされているからだろうか。ガイドで訪れる築地や浅草とも違う魅力を城崎温泉に感じた。今後、外国人ゲストにおすすめの温泉を聞かれたら「京都に行ったら、その後は城崎温泉ね。日本の普段着の温泉を楽しんで」と即答しそうだ。











