【長崎県】邦久庵で地元の暮らしにふれる、もうひとつの旅のかたち

長崎県

2025.08.28

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【長崎県】邦久庵で地元の暮らしにふれる、もうひとつの旅のかたち

週末は通訳案内士として東京を中心にガイドしている旅色LIKESライターのふみこです。ツアー終わりに「他では体験できない、スペシャルなツアーで楽しかったよ」とゲストに言ってもらえるのは地元民との交流があった時。観光客ではなく、地域の一員になれたような感覚になれるのかも。それこそが、私が大切にしている旅のかたちだ。今回訪れたのは、長崎県・大村湾に面した静かな岬に佇む「邦久庵」。ハウステンボスの設計で知られる建築家・池田武邦が終の棲家として建てた場所。旅色LIKESライターのおんりさんのお誘いを受け、6月に行われた 「邦久庵『柿渋』と『へちま』の会」に参加しながら、“暮らすように旅する”時間を楽しんだ。

目次

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プロローグ

海と家のあいだにある、やさしい境界線

囲炉裏を囲む、はじめましての時間

祈りから始まる旅

小さな蟹も参戦 ― へちまを植えながら仲間になる

囲炉裏端で地元ご飯

柿渋塗ー手を動かしながら風景の一部に

暮らすように旅をする

プロローグ

緑の中に佇む藁ぶき屋根の民家。

邦久庵へようこそ。

長崎駅から約1時間のドライブ。海が見えてきた。大村湾だ。緑深い山々に囲まれた湾は、まるで鏡のように静かで穏やか。外海と繋がる出入口がわずか二か所しかないため、潮の流れが非常にゆるやかだ。汐の匂いを感じながら、湾を右手に今にも車が海に落ちそうな細い道を進む。そんな道を抜けると、「琵琶ノ首鼻」という小さな岬に佇む藁ぶき屋根の日本家屋が目の前に現れた。「邦久庵」だ。

海と家のあいだにある、やさしい境界線

ふみこ、大興奮で大村湾に浮かぶ風景を撮影中。photo byナガノさん

ふみこが見た風景。いぬさん(右)とおんりさん(左)

囲炉裏端から大村湾に浮かぶデッキを臨む。

ウッドデッキに続く5段ほどの階段を上がると、ふいに視界が開けた。目の前には大村湾。海にせり出したデッキに立つと、自分が自然の中にいる感覚に。風の音も、波の気配も、すぐそばにある。おんりさん曰く、「家の中と外という境界線があいまいで、自然との距離感が近いところがとても心地よく感じます」。暫し、岬の美しい光景に時間を忘れていると、促されて家の中に。日本家屋特有の高い屋根に、囲炉裏を中心とした広い板張りの床のが広がる空間。これが「邦久庵」全体の空気感なのか、外の自然と中の静けさ。ここにもゆったりした時間が流れている。

囲炉裏を囲む、はじめましての時間

囲炉裏を囲んで、ナガノさんの想いのこもった挨拶からイベントが始まる。

和やかな雰囲気になってきた。photo byナガノさん

今回のイベントに旅人として参加するのは、旅色LIKESメンバーのいぬさん、みっちーさん、そして私。果たして、地元の方と仲良くなれるのか、総勢9名が囲炉裏を囲んで初顔合わせ。緊張の一瞬だ。ゆらぐ炭火を見ながら、自己紹介が始まる。 口火を切ってくれたのは、ナガノさん。都市デザインの研究者であり、一般社団法人邦久庵倶楽部の代表理事。この場所を、池田氏の想いとともに大切に守っている。優しい口調で語る「邦久庵」への愛で、場の緊張が緩む。さあ、これからどんな旅が始まるのだろう。

祈りから始まる旅

まずは、恵比寿様にご挨拶。 photo by ナガノさん

「邦久庵と共に地域の風習も守っていきたい」とナガノさん。

旅の始まりは、地域の恵比寿様へのお参りから。岬の突端に佇むその祠には、船の安全と豊漁を願う地元・切崎の人々の祈りが込められている。デッキを降りて波に濡れ滑りそうな磯の岩場を渡り、小さな恵比寿様の前にたどり着いた。「私たちも仲間にいれてくださいね」とそっと手を合わせる。

小さな蟹も参戦 ― へちまを植えながら仲間になる

さあ、へちまを植えるぞ。

地ならし中。これが重労働。

海からやってきたであろう小さな蟹さんも参戦。

虫対策も完璧なカズさん。

へちまを植え、ミッション終了。

さて、へちまを植えるぞ。庭にでるが、畑らしきものは見当たらない。あるのはロープで囲まれた、草が茂った約4.5坪(約14平方メートル)の土地。まずは、地ならしから始まった。これが重労働。草を刈り、シャベルで土を耕し、だんだんと草地が畑へ姿を変えてきた。その頃には自然と一体感が生まれ、作業をしながら雑談を楽しむように。それに合わせて、作業のスピードも上がってくる。ご自宅でバラを約100鉢育てているミッチーさんは畑仕事の装備も手際も完璧。コツを伝授してもらう。地元のカズさんの指導の下、畝を作り、苗を植え、藁をしき、支柱を立てる。気がつけば、昔からの知り合いのような居心地の良さになっていた。

囲炉裏端で地元ご飯

これぞ、地元のご飯。

「かんころ餅」を焼いてくれるおんりさん。

同じ釜の飯を食う。

午前の作業を終え、囲炉裏端でほっとひと息。地元のお芋やベーコン、名物の「かんころ餅」(さつまいもを薄く切って干したものを入れた餅) がじっくり焼かれている様子に、「日本の原風景だなあ」とどこか懐かしい気持ちになる。地元の食材をふんだんに使った手作りランチが運ばれてきた。山椒ご飯、お味噌汁、お漬物、きゃらぶきの佃煮、そして囲炉裏で焼かれた素朴なごちそう。手作りの麦みそを使ったお味噌汁はちょっと白くて甘め。地元で生産された「そのぎ茶」はしゃきっと渋い「静岡茶」とは違うふくよかな渋みだ。「同じ釜の飯を食う」とはよく言うけれど、地域で普通に食べられている食事をいただくことで、自然と心が近づいていく。日常生活をおすそ分けしてもらっている気分だ。ますます一体感が高まってきた。

柿渋塗ー手を動かしながら風景の一部に

テキパキと柿渋塗が進んでいく。

柿渋を準備するアキコさん。デッキがみるみるうちにダークブラウンに。

周囲の緑にもダークブラウンが映えて、一枚の絵のようだ。

心を込めて柿渋を塗るミッチーさん。photo byナガノさん。

さて、午後は山側のデッキに柿渋を塗る作業。柿渋は防腐、防水作用に優れた天然ワックス。柿渋のボトルを開けると、土と木が混ざったようなちょっとクセのある匂いがする。自然素材にこだわって建てられた邦久庵によくなじむ。「じゃあ、私はこっちから塗りますよ」動きもテキパキと。すっかり一つのチームになっている。刷毛を動かすたび、木が深い色に変わっていく。「一番印象的だったのは、邦久庵を維持していこうと活動されている皆さんの心意気でしょうか。私も柿渋塗りに心を込めました」とミッチーさん。自分たちが手で塗ることで、少しでも役にたてれば。そんな、心地よい時間だった。

暮らすように旅をする

デッキから望む大村湾の夕暮れ。photo byおんりさん

夕暮れの邦久庵。こんな風景も見てみたい。photo byおんりさん

楽しかった時間も終わり。たった一日だったけど、日常生活を暮らすように楽しめる旅だった。やはり私達は旅人、帰りの飛行機の時間が迫ってくる。地域の方々と別れを惜しみながら外にでると、西向きのデッキから大村湾の夕暮れが見える。一日の中でもこんなに風景が変わるんだ。また、違う季節に、違う風景を見に来たい。そして、地域の皆さんと逢って、同じ時間を共有したい。そんな思いで、邦久庵を後にした。

いつの間にかワンチームに photo byナガノさん

いつの間にかワンチームに photo byナガノさん

東京から通いながら邦久庵を保全されているナガノさんは「ここを訪れた誰しもが、大きな感銘を受け、穏やかな気持ちになり、笑顔で帰ってくださることにやりがいを感じずにはいられません」。熱い思いを柔らかな口調で語ってくれた。地域の料理を準備してくれた、カズさんは「初対面でもまるで大家族で家仕事している様な感じで物凄く楽しいでんす」。旅人と思いを同じにしてくれていた。同じく地域から参加のアキコさんは「各々の経験や地域の話を聞けるのは楽しみ」と語り、旅人のいぬさんも「一番印象的だったのは、1日限りだけれど仲間に入れてもらえた事かもしれません」と出逢いの楽しさを話してくれた。

邦久庵では月に1回、一般公開イベントが開催されている。また、ゲストハウスとしても利用可能。次の旅行は、観光だけでなく、暮らすような旅を味わってみてはいかがでしょう。

◆邦久庵
住所:長崎県西海市西彼町風早郷1424-2
※一般公開以外の見学は不可
※詳細はHPをご確認ください

「邦久庵」の公式HPはこちら
宿泊予約はこちらから

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#イベント #体験レポート #長崎県

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ふみこ

山口県出身。神奈川県在住。 平日は会社員。週末は全国通訳案内士(英語)。史子の名前のとおり歴史好き。交流が旅の醍醐味と、出会った方とおしゃべりを楽しむ。料理好きで、地元のお茶、塩、味噌はマストバイ。自宅で旅の余韻を楽しんでいます。

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