ホップ収穫から仕込みまで 東京でビールづくり体験
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みなさーん、こんにちは! “ビールおねえさん”こと古賀麻里沙です。
急ですが……大きな釜でグツグツグツグツ。これは何をつくっているでしょうか!
怪しげな魔女のスープ!? いえいえ、ハロウィンはもう終わりましたよ。そう、これはビールを煮込んでいるのです。
今回のビール旅ではホップの収穫から仕込みまで、“ビールづくり”を体験してきました♪
吉祥寺で育ったホップツリー
一見クリスマスツリーのように見えるこれ、実は全部ホップなんです。
JR中央線・吉祥寺駅の近くにある清水農園へやってきました。2020年に始まった「東京でホップを育てようプロジェクト」という活動。東京でホップを育ててビールをつくろう!という企画で始まったホップ農園です。もりもりと元気いっぱいに成長していますねぇ。収穫1ヶ月前の写真と比較してみると、成長の早さがよくわかります。
アメリカ原産のカスケードと日本原産の信州早生の2つの品種が並んでいます。カスケードの方が発育がいいそうです。アメリカ産なのに不思議ですね。吉祥寺のほかには、武蔵野市役所近くにある関前の大坂農園と、JR中央線・武蔵境駅前のnonowaテラス内でホップが育てられています。nonowaテラスではJRの駅員さんが水やりなどの管理をしているので、時間が合えばその姿を見ることができますよ。
今JR中央線ではビールがアツいんです。「中央線ビールフェスティバル」という楽しいイベントも毎年開催されていて、中央線沿いには素敵なブルワリーやビアバーがたくさんあリます。そのビールたちが一堂に集ったら……ビール好きにとっては想像しただけで垂涎ものです。「中央線沿いビールはしご旅」なんてのも面白いかもしれませんね♪
それでは、張りきって収穫しましょう! ホップのつるを地面に落として、参加者全員で一斉にとりかかります。おいしいビールのためなら滴る汗も何のその。
収穫したホップを割ってみると中から黄色い粒が出てきます。これは“ルプリン”と呼ばれ、ビールに苦味や香りを付けてくれるものです。ちなみに生でかじってみると……にっがぁーーーいっ! ビールの苦い部分が濃縮したような強い苦味を感じます。思わず顔をしかめてしまいましたが、天ぷらにするとおいしいんだそう。
収穫したホップはすぐに冷凍保存します。通常は粉砕して圧縮する“ペレット”に加工するのですが、このプロジェクトではフレッシュなままビールの仕込みに使うためその加工は行いません。
ビール豆知識①規則正しく巻きつくホップ
ホップはつる性の植物なので、育てるときには支柱やひもを準備します。ホップのつるは時計回りに巻きついていきます。うまく巻きついていないときには指で優しくくるくるっと支柱に引っかけてあげます。このときに間違えて反時計回りにしてしまうと、ホップが嫌がって気が付くと外れていたり、自ら修正してきちんと時計回りに巻きついたりしているんだそうです。意志を持っているみたいで可愛いですよね。
初体験! ビールに魂を注ぎ込みます
後日、いよいよビールづくりの開始です。微力ながら私もお手伝いさせてもらいました。まずは冷凍していたホップを一つ一つ丁寧に手で揉み、香りを引き出します。柑橘系のいい香りが広がりますねぇ。それにしても……冷たい!
おいしいビールのためなら多少の凍傷……何のその(手が凍るほど冷たくはないですよ^^;)。
それではホップを麦汁へ投入します! 初体験なことばかりでドキドキしますねぇ。煮えたぎるあっつあつの麦汁の中へ、いざ投入~~~! 大きなしゃもじのような木製の板を使ってホップを入れた麦汁を下の方からグルグルとかき混ぜます。ビールの特長である香りと苦味を与えてくれるホップは、“ビールの魂”と呼ばれることもあるんですよ。それにしてもビールづくりってこんなに重労働なんですね。うぅっ、腕がつりそうだ。いや、おいしいビールのためなら腕の1本や2本何のその。
仕込み後にみんなで記念に、はいチーズ☆ 撮影の時だけマスクを外して息を止めて……パシャリ。
あとはビールが発酵しておいしくなるのを待つのみです。……待ち遠しいっ!!
ビール豆知識②ホップ畑は男子禁制 女性だらけの秘密の花園
ホップの花言葉って聞いたことありますか? 代表的なものの一つは“不公平”です。ビールの原料として使われるのは未受精の雌株のみで、雄株は最初から取り除かれてしまうことに由来しています。そのほか、ホップを原料としてつくられるビールを飲むと心が明るくなることから、「希望」「天真爛漫」「軽快」「信じる心」といった前向きなものもありますよ。
ビールを飲んで「軽快」な足取りで「希望」の明日を迎えたいものですね。
ついに3種のビールが完成
吉祥寺のホップ収穫からおよそ4か月後、ついに飲める日がやってきました。この日は吉祥寺のイベントスペースで販売会です。
ホップの苗植えからビールができるまでのパネルをじっくり読んで気持ちを高めたら、いざ試飲!
左から順に吉祥寺エール、関前エール、武蔵境エールです。それぞれの土地で育ったホップが使われていて、ラベルにはその土地のシンボルが描かれています。
まずは収穫と仕込みをお手伝いさせてもらった吉祥寺ビールからいただいてみましょう。ラベルに描かれているのは井の頭自然文化園の人気者、アジアゾウのはな子です。2016年に、69年の生涯の幕を閉じるまで人々に愛され続けたはな子が、ラベルになって戻ってきました。フレッシュなホップの香りに炭酸の刺激。ほんのり酸味を感じるような爽やかな味わい。スッキリとしたビールに出来上がっています。
お次は関前エール。ラベルデザインは三鷹駅にある北村西望作「世界連邦平和像」です。駿馬にまたがる女神、かっこいい……。こちらは程よい炭酸感とコクが心地よく、吉祥寺エールと武蔵境エールのちょうど中間のバランスに仕上がっています。
次は武蔵境エールを飲んでみましょう。駅前で育ったホップでつくられたビールです。ラベルには武蔵境駅前にある武蔵野プレイスが描かれています。窓の丸っこいフォルムが可愛いですよね。ビールの味わいは、柔らかくって飲みやすい! するすると入っていきます。これが一番好きかも!
どのビールもそれぞれの個性があって、色も見た目も味わいも全然違う! 彼らなりに自己主張をしているみたいで、なんだか愛おしくなっちゃいました。
“ビール愛”がより深まりました
自らの手で摘んだホップたちがこうしておいしいビールになるというのは、とても感慨深いです。普段はできないビールづくりに携わらせていただいて、貴重な体験になりました。同じ東京の地で育ったホップで仕込み、つくり方も同じなのにこんなにも違う味わいに仕上がるのか……と、驚きました。ビールって生き物なんですね。育ってきた環境が近くても全く同じものにはならない。また一つ、ビールの奥深さを身をもって感じることができました。
それでは最後に、立派に育ったホップちゃんの写真を添えてさようなら~♪ また次のビール旅でお会いしましょう!