【イベントレポート】桜の名所をつなぐ京阪京津線。大津から京都へ春色の途中下車旅
出勤時の電車の混雑具合で春が来たことを感じます。旅色LIKESライターの鉄道旅担当・なおです。4月4日(土)に旅色LIKESイベントを開催しました。イベントの舞台は滋賀県大津市と京都市を結ぶ京阪京津(けいしん)線。沿線の花見スポットや、ちょっとマニアックな観光スポットを途中下車しながら巡った様子をレポートします。
目次
「3つの顔」を持つ京阪京津線
緑色部分が京阪京津線、赤色部分は京都市営地下鉄東西線。
京阪京津(けいしん)線は、1912(大正元)年に開業した、大津市のびわ湖浜大津駅から京都市の御陵(みささぎ)駅の間を結ぶ鉄道です。御陵駅から先は京都市営地下鉄東西線に入り、太秦天神川駅まで直通運転をしています。1997(平成9)年に地下鉄東西線が開業するまでは御陵駅から先、三条駅前まで走っていました。7.5キロメートルの短い路線ですが、びわ湖浜大津駅から上栄町までの間は「路面電車」、上栄町から大谷駅にかけては日本有数の急勾配区間をもつ「山岳列車」、京阪山科駅から先は「地下鉄」という、3つの顔を持つユニークな路線です。
びわ湖浜大津駅前のカーブで写真撮影
京阪京津線の出発点、びわ湖浜大津駅前のデッキは、駅を出てすぐ旧東海道へと曲がっていく路面電車の姿が見られる鉄道写真の撮影スポット。京阪京津線は4両編成で約66メートルありますが、本来、車との併用軌道区間を走る列車は全長で30メートル以内にしないといけない規則があります。京阪京津線はこの先地下鉄に直通する必要があるため、このルールにかかわらず特例で走行が認められています。長い4両編成の列車が路面電車として走るのを見られるのは全国でもここだけ。是非写真に収めてもらいたい光景です。
花ざかりの琵琶湖疏水と本朝四大寺のひとつ”三井寺”へ
びわ湖浜大津駅駅から歩いて"三井寺"に向かいます。大津市の郊外の小高い山に開かれた"三井寺"。正式には長等山園城寺(おんじょうじ)といい、1200年の歴史を有する天台寺門宗の総本山です。朝廷の祈願所としての格の高い四つの寺院として東大寺、興福寺、延暦寺とともに四大寺(しだいじ)の一角を占めていました。桜の名所としても有名で、この期間は多くの観光客で賑わいます。桜の時期には有料ですが観月舞台が解放され、琵琶湖と桜のコラボレーションを楽しむことができますし、寺内の高台からも桜の絶景を楽しむことができます。"三井寺"の名の由来となった閼伽井屋は「御井(みい)の池」と呼ばれており、今も湧水が出る持統天皇らの産湯にも使用されたと言われています。また、平安時代、武蔵坊弁慶が"三井寺"と敵対していた比叡山延暦寺に引きずっていったという逸話で知られる弁慶鐘もあって、長い歴史を誇る四大寺ならではの逸話を持つ名所を多く持つ寺院です。
◆三井寺(天台寺門宗総本山園城寺)
住所:滋賀県大津市園城寺町246
電話番号:077-522-2238
拝観時間:9:00~16:30(受付終了16:00)
入山料:大人800円、中高生500円、小学生300円
アクセス:京阪石山坂本線三井寺駅より徒歩約10分
"三井寺"に向かう道の脇に流れているのは琵琶湖疏水。両岸を満開の桜が彩っています。琵琶湖疏水は明治時代、事実上首都が東京に移ってしまい、急激な人口減少に悩まされていた京都を再興するために敷設された琵琶湖から京都に至る運河です。桜のシーズンは琵琶湖疏水の遊覧船から桜の絶景を眺めることもでき、多くの観光客で賑わいます。
急勾配の大谷駅から逢坂の関を訪ねる
上栄町を過ぎると列車は急勾配を登っていきます。上栄町から大谷駅までの間は約61パーミル(1,000メートルで61メートル上下する坂道)の急勾配区間。大津と京都の間には逢坂山があり、かつては東海道線もこれを超えられず大谷駅から稲荷方面を迂回して京都駅に入っていました。大谷駅は約40パーミルの日本一の急勾配区間にある鉄道駅です。立っているだけで傾斜を感じ、ベンチは左右の足の長さの違いからも坂道にいることがわかります。駅前は有名なうなぎ屋があって、いいにおいに誘われてしまいますが、そこを抜けるとあるのが逢坂の関の石碑。この周辺にあったとされる逢坂の関は、東山道と東海道という主要街道が通ることから日本三関所のひとつとされてきました。小倉百人一首でも蝉丸の歌に逢坂の関が登場しており親しみのある方もいると思います。蝉丸を祀った蝉丸神社も大谷駅の目の前にあります。滋賀県側から京都府側に入るのは山を登ったうえで関所を通らなければならず、当時は大変な苦労があったと想像します。
東海道の分岐点・髭茶屋追分~滋賀・京都の県境へ
大谷駅から再び電車に乗って、次の駅、追分駅で下車。近くの階段を登ったところにあるのが滋賀県と京都府の県境です。街道が二手に分かれている場所を追分といいますが、ここでは東海道が二手に分かれていて、右に進めば京都の三条大橋、左手に進めば伏見、大坂に向かっています。今は閑静な住宅街ですが、かつては"髭茶屋追分"と呼ばれ、茶屋もあり賑わいを見せていました。ここで売られていた民族絵画『大津絵』は、東海道を行く旅人の土産物として重宝されていました。今も交通量が多いので、車に気をつけて見学をしましょう。
蹴上(けあげ)駅から京都きっての桜の名所へ
電車は京阪山科駅から地下に入りました。路面電車で始まった京阪京津線は急峻な山を越え、最後は地下鉄となります。京都市営地下鉄の蹴上駅で降りて、京都を代表する桜の名所に向かいます。
蹴上駅から坂を登ったところにある蹴上インクライン。線路の脇を桜が彩っていて多くの花見客がここを訪れます。今回は雨だったのでまだ人が多くありません。蹴上インクラインは、明治時代に琵琶湖疎水を航行する船を運ぶ目的で作られました。琵琶湖疎水の高低差で船が航行できない区間もあり、台車に船を乗せて輸送していたそう。1948(昭和23)年に運航休止され、その後線路も撤去されましたが、1977(昭和52)年に復元されています。線路の上を歩きながら花見ができる場所は全国的にもあまりなく、廃線のレトリックな雰囲気もあって人気のスポットです。蹴上インクラインの北側には紅葉で有名な南禅寺があって、琵琶湖疏水がアーチ型のレンガの橋脚の上に流れる水路閣を見ることができます。大津で見た琵琶湖疏水とここで再会です。
おわりに
蹴上インクラインで参加者の皆さんと記念撮影。
当日はあいにくの雨となってしまいましたが、桜はきれいに咲いていて花見に絶好のタイミングになりました。今回のイベントに参加した旅色LIKESメンバーのなかには、京阪京津線には乗ったことがあっても途中駅で降りたことがある方はおらず、ニッチな観光スポットも楽しんでもらえたと思います。京阪京津線もおすすめです。また、みなさんの乗っている通勤電車などで降りたことのない途中駅があれば一度降りて、今まで知らなかった隠れた観光スポットを探してみるのもいいのではないかと思います。











