- 日帰り
京都で森見登美彦の世界を満喫!現実と物語の聖地を重ねる文学旅
京都(京都府)
予算:10,000円〜
・旅行する時期やタイミングにより変動します。あくまでも目安ですので、旅行前にご自身でご確認ください。
・料金は1名あたりの参考価格で、宿泊施設は1泊2食付き週末料金を参考にしています。
更新日:2026/09/17
森見登美彦さんの初期作品は、一つの事物を異なる視点から捉える手法や、「あり得たかもしれない世界線」を重ね合わせるマルチバース的な並行世界の展開が魅力。これはもう量子力学の影響といえるかも!? 現実と物語の聖地を重ね合わせながら、秘密のお酒「偽電気ブラン」を求める京都旅へ!

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 古都の7月はお祭り一色に彩られます。ユネスコ無形文化遺産でもある祇園祭を華やかにする34基の山鉾は、「動く美術館」とも呼ばれるほど。でも、なぜ美術館なのか?というと、京都の伝統工芸品のみならず、中国・インド・ペルシャ(イラン)・トルコ・ヨーロッパなどから伝わった、歴史的にも貴重な絨毯やタペストリーなどが使われているから、だそうです。驚きですよね。江戸時代、大金持ちの町衆が地域の経済力を誇るように海外の美術品を競って蒐集(しゅうしゅう)し、山鉾を飾り立てたといわれています。よーく観ると、あっ!象がいる (^_^)
- ★ 古都から離れた場所で育った田舎者(笑)の小生には、祭りの基本構造がよくわかりませんでした。ざっくり説明すると、祇園祭は前祭(さきまつり)と後祭(あとまつり)の2セットに分けられ、それぞれに宵山と山鉾巡業があるんです。宵山は、翌日に行われる山鉾巡業と神輿渡御の前夜祭のこと。つまり宵山も山鉾巡業も期間中2回ある、ということなんです。でね、「後祭の宵山の雰囲気がとっても良くてねー」とか何とか呟いて、通ぶってみたり(笑)
- ★ 森見さんの小説「宵山万華鏡」にならい、何かが起きそうな前夜祭の気配を背景に、これから怪しげな聖地巡礼に出発します。どうぞご同行ください(^^)//
洋食 まどい食堂

洋食 まどい食堂
名物のポークチーズカツレット

鉄板ハンバーグ

おすすめビーフシチュー
内観

百万遍にあった旧店舗の外観(なつかしー)
1961年に創業した「百万遍 円居(まどい)」の味を受け継ぐ洋食店。一番人気「まどい名物 豚肉のチーズカツレット」や日替わりのパスタなど、懐かしい洋食メニューをサラダブッフェ、ソフトドリンクバー付きで味わえる。グループ最大規模のスペースを活かし、貸し切りパーティやグループでの利用にも対応する。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 小説「四畳半神話大系」での“私”は、気になる存在の明石さんと「あくまでついでながら夕食を一緒にとる」ことになります。さあ、その店で昼食といたしましょう。ただし、本作で描かれた百万遍南西の「まどい」は2016年に休業し、すでに撤退しています。いや〜残念だなぁと思っていたら、その味を受け継ぐ「まどい食堂」が伏見区で営業しているというではありませんか! というわけで少し遠いですが行ってみましょう
- ★ 「四畳半神話大系」は4話からなる長編で、それぞれ別々の妄想(?)が同じ時空のなかで描かれる実験的な作品です。最近の言葉でいえばこれはパラレルワールドものであり、ハイゼンベルク「不確定性原理」に裏打ちされた量子力学的世界観が描かれている、と考えられるんです。したがって、明石さんと“私”はいったい何を食べたのか、名物のポークチーズカツレットだったのか、定番のハンバーグだったのか、それとも別の何かだったのか……? それは「成就した恋ほど語るに値しないものはない」のと同様、並行世界ではいずれも大変に美味しいのでした(笑)
- ★ ところで、この円居(まどい)グループさん、京大の時計台記念館でフレンチレストランを運営するほか、東京大学駒場構内でも「ルヴェソン ヴェール駒場」を運営しています。う〜ん、そこはかとなく漂う理知的な雰囲気がたまりません!

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 初期の森見作品を味わうには「下鴨幽水荘」についての理解が欠かせません。なぜなら、そこは「四畳半」と「万年床(まんねんどこ)」の世界へ通じる入り口だからです(笑)。複数の作品に登場する、冴えない大学生の主人公が起居するこの下宿には原型があるようです。森見さんの母校・京都大学の「吉田寮(現棟)」がそれで、アニメ版には取材協力としてもクレジットされています
- ★ 下鴨幽水荘には、実はもう一つモデルがあります。左京区北白川にある「銀月アパート」で、アニメ版に描かれる玄関はそっくりです。原作小説では廃墟同然の「木造三階建て」と記されていますが、吉田寮も銀月アパートも木造二階建てです。このあたり創作のルールですよね。決して同じにはしないんです
- ★ 大事なお断りをここで。吉田寮は学生の居住空間でもあります。来訪者による無断での内部への立ち入りや写真撮影は禁じられています。1913年に竣工した現棟は、安全性確保の面から修繕あるいは耐震工事が行われることになりました。今回の掲載は、予定される工事によって外観が変化する可能性があることを考慮し、歴史的(あるいは文学旅行的)な建築物としての価値を記憶しておく意味を含めてのことです
- ★ 古い学生寮の何ともいえないカビ臭い感じというか、孤高の秘密基地感というか、そんな空気が伝われば幸甚に存じます
進々堂 京大北門前

進々堂 京大北門前

店内イメージ

京大生御用達

スイーツの美しさ

ワーズワースの詩「Rainbow」を刻むレリーフと本棚

煉瓦造りに風格が漂う
京都最古の喫茶店。1930(昭和5)年に開店し、古都においてフランスパンを広めるなど、その存在は全国の喫茶ファンに知られる。店内を特徴づける重厚な長テーブルと長椅子は、大勢の学生が一斉に座れるようにと漆芸・木工作家で人間国宝の黒田辰秋氏に制作を依頼した逸品。創業者の曾孫である川口聡さんが4代目店主として経営する。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 小説版「夜は短し歩けよ乙女」最終章で、黒髪の乙女と先輩(私)は重大な局面を迎えます。その舞台となるのがこの喫茶店。森見さんは他作品でもこちらのお店を登場させており、舞台装置としてお気に入りのよう。聞けば学生時代から通っていたとのこと。関西の……いや日本の最高学府のひとつとして国の未来を担う京大生に「本物のパンと珈琲を提供する」という創業時からの理念と、それに呼応するように通いつめる京大生とその関係者たち。そんな美しい物語を紡いできた名店です
- ★ 扉を開けて店内に入ると、そこには現代風カフェとは一線を画した、原点を守り続ける静謐な時間が流れています。──この雰囲気はどこから醸し出されるのか……と考えていたら、気づきました。BGMがないんです。店内撮影は禁止。スマホなんぞは切ってポケットにしまい、ここだけに流れる時空に身を委ね、淹れたての珈琲と焼きたてパンのシンプルな組み合わせをいただく。これが定番。う〜ん、まさにオーセンティック(本物の、正統の、という意味)な喫茶店と呼びたくなります
- ★ こんな歴史と時間の流れる喫茶店、近所にほしー(^_^)
下鴨納涼古本まつり

下鴨納涼古本まつり
糾の森は東京ドーム3個分!
関西最大級の古本市へ
古書を奪い合う姿が!
謎の言葉「ラ・タ・タ・タム ──」
世界遺産・下鴨神社「糺(ただす)の森」で開催される関西最大級の野外古本市。5月「古書大即売会」、11月「秋の古本まつり」と並び、京の三大古本まつりの一つに数えられている。文庫や雑誌だけでなく、学術書、美術書、江戸時代の古書、映画パンフレット、絵本など、50万〜80万冊もの古本が並ぶ。主催は京都古書研究会。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 芳醇な珈琲で一服したあとは、小説「夜は短し歩けよ乙女」第二章で黒髪の乙女が古本市デビューする場所へ行きましょう。なんとそこは世界遺産なんです。といっても、京都は世界遺産だらけなのでありがたみが薄れそう……って、そんなわけありせんっ! なぜならそこは古本の神が降臨する場所ですから。というわけで下鴨神社の会場へGO!
- ★ 古都から離れた田舎で生まれ育った小生には、下鴨神社は通称で、正式名称は「賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)」だったなんて知る由もありませんでした。さらにいえば、通称である下鴨神社は「しもかも」ではなく「しもがも」と濁るだなんて……田舎者の悲哀をかみしめております。そんなドタバタ劇を読みたいあなたは、ぜひ文学旅行noteへ →https://note.com/airplane_deer
- ★ 黒髪の乙女は、子ども時代に愛してやまなかった絵本をここで探します。古本市の巡り方は、目的の本を探すのも楽しいですし、どの作家がどれくらいの価格なのか探っていくのも面白いですよね
- ★ そうして市を巡っていくと「夜は短し──」に登場する古本屋さんの数々がちゃんと実在していることに驚かされます。ということは、乙女が探していた絵本も実在するのでしょうか? さて、私たちも探してみましょう ( ^^)
- ★ もちろん最後にはお参りしてから次スポットへ(笑)

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 「通りかかった四条木屋町の界隈は、夜遊びに耽る善男善女がひっきりなしに往来していました。その魅惑の大人ぶり!」(小説「夜は短し歩けよ乙女」より)
- ★ スポット5とは前後しますが、「夜は短し──」第一章でのこと、黒髪の乙女は東堂さんというナイスミドル(笑)から「偽電気ブラン」の存在を聞かされます。李白という大金持ちの老人が所有するという秘密のお酒を探して、彼女は木屋町の高瀬川沿いを先斗町へ向かって飲み歩きます。そうして、羽貫(はぬき)さん、樋口さんといった面々と出会い、やがて「叡山電車を積み重ねたような」三階建ての乗り物で登場する李白さんと巡り会うのです
- ★ 実際に木屋町は、大金持ちだった豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)と素庵(そあん)親子による高瀬川の開削によって始まり、物資と人の集散地として発展した歴史をもっています。全国から集まる商人(いわゆる旦那衆)が行き交う経済拠点には、彼らを接待するための上質な飲食店や宿が軒を連ねるようになります。幕末には勤王の獅子たちが密談する旅籠や料亭が軒を連ねていました。そうした歴史を受け継ぐように、明治から昭和になっても木屋町は「大人の隠れ家」的な場所として文化人や芸術家に愛されてゆくのです
- ★ さて、日も暮れてきました。川沿いをそぞろ歩きながら、われわれも「偽電気ブラン」を求めて先斗町方面へ向かいましょうか(笑)
Bar MoonWalk 四条木屋町店

Bar MoonWalk 四条木屋町店

「月面歩行」の文字が!

どんだけ飲み干すのか?

店内イメージ

カクテルイメージ①

カクテルイメージ②
1999年にオープンしたMoonWalkの1号店。同業態は、大阪・東京・名古屋・仙台・神戸などへも進出し、多店舗化に成功している。500種類以上のカクテルを中心に、ドリンクは大半を250円〜(税込)で提供する。チャージ料あり。お客のリクエストに応える「無茶振りカクテル」が名物。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 黒髪の乙女が、最初に東堂さんから声を掛けられた場所は「月面歩行」という名のバーでした。彼女は、お酒にめっぽう強く、ラム酒をこよなく愛しています。なんなら一瓶、朝の牛乳を飲むように腰に手を当てて飲み干してもよい、とさえ考える人です。ですが、慎み深い彼女は、そんな無粋な行動はせず、知人から教えてもらった「月面歩行」でカクテルをたしなんでいました。その店のモデルがこちらです
- ★ カクテルを飲み干していく彼女は、きれいな宝石を一つずつ選んでいくような豪奢な気持ちになっていきます。そんなときに東堂さんから「偽電気ブラン」の存在を聞かされ、彼女は「電気を使って作るのでしょうか」と好奇心でいっぱいになってしまいます。しかし、そもそも“偽”ですからね(笑)。はたして彼女は、秘密のお酒を求めて、高瀬川を北への辿っていくのでありました(スポット6「木屋町界隈」へ遡る)
- ★ そんな「月面歩行」のモデルとされる「MoonWalk四条木屋町」は現在、画像の内装からは変化しているとのことです。常に世の中の変化へ対応していくのも商売の一手法。それはベースの酒類は同じでも、さまざまな色彩で輝くカクテルを選んで飲んでいく楽しさと同じなのよねー、などと考えるのは小生だけでしょうか (^^)
Bar ノスタルジア
Bar ノスタルジア
カクテル「熱帯」を森見さんの目の前で
森見さん公認・偽電気ブラン

小説に登場するバー「朱硝子」としてのメニュー
カウンターの佇まい

大人の癒やし空間
2003年のオープン。都会の喧騒から切り離された地下の隠れ家として、多くの大人たちに愛され続ける名店。店名には「昔懐かしい古き良き時代を表現したい」という思いが込められている。地元の常連客や文化人だけでなく、誰もがリラックスして過ごせる隠れ家バー。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ ついに「偽電気ブラン」に巡り会えるときが来ました。それも森見さん公認の逸品です。場所は「有頂天家族」に登場するバー・朱硝子(あけがらす)──じゃなかった「ノスタルジア」という名のバーです。ビルの外壁に掲げられた看板の脇から、地下へ通じる狭い階段を降りていきましょう。わくわくする気持ちを抑えて隠れ家の扉を開けると、どこか懐かしい本格的なバー空間が迎え入れてくれます
- ★ カウンターに座り、朱硝子のメニューを手にします。小説の登場人物たちを名前にしたカクテルを横目に、目的の「偽電気ブラン」を頼むことにしましょう。マスターの美しい所作に感動つつ、どこの世界にもいる狸と天狗の──そう、小生の周囲にもいる狸と天狗の狼藉三昧が脳裏によみがえり、ハッと我に返って「忘れてしまおう……」とつぶやいてしまう夜半──京都の夜には現実と物語の境界線が曖昧になる瞬間があるんです(笑)
- ★ 隠れ家と表されることが多いようですが、ノスタルジアの名前が示すように、店内にはバカラやHOYAのヴィンテージグラスが並び、それこそ本格派の雰囲気を受け継ぐ名店だと思います。と、気づけば酔ってばかりで、ここまで口にしたものはおつまみ程度でした。こちらの店は軽食メニューも充実しているので、少しお腹にたまるものを注文しましょうか。レトロな雰囲気にはオムライスがぴったりですよ。あっ、ナポリタンもいいなぁ。ヒック!
- ★ あー、時間なんか気にせず飲んでいたいー
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