旅をCO2排出量の観点から見てみよう

「サステナブル」って言葉を最近よく聞くという方も多いと思いますが、「サステナブルってどう考えるの？」という質問に対しては、「二酸化炭素（CO2）排出量の視点を持って、物事を見るようにしてみてください」と話しています。「最もサステナブルなのは旅をしないこと！」と極端な意見を言う人もいるかもしれませんが、世界では雇用者の約1割が観光産業で働いていると言われています。旅好きな皆さんが楽しく旅を続けられるようなカタチを探ることが大切です。

東京から小田原・箱根へ4人で旅行！ 最もサステナブルなのは？

小田原城は桜の名所なので、東京から羽を伸ばして春の箱根旅を計画している方もいるかもしれませんね。東京から小田原を経由して箱根へ向かうと片道約100キロメートル。約100キロメートルを4人で移動する際、どの交通手段が最も低炭素なのかを検討した研究によると、大型車は温室効果ガス排出量が多く、対して高架鉄道（電車）、ハイブリッド車、電気自動車は少なめです。

この研究について示したグラフでは、緑色に該当する走行（移動）に関するものだけでなく、赤色の車両製造時、青色の線路などインフラ建設にともなうCO2排出量も示しています。

このようにCO2排出量を知り、それを減らすには？ という観点で移動手段を選択していくことが、サステナブルな旅につながります。

ひとり旅の場合は公共交通機関が優勢 〜乗り鉄のススメ〜

ここまでは4人で移動した場合についてお伝えしました。これが4人ではなく、ひとり旅になったらどうでしょうか。その場合は電車のほうが圧倒的にCO2排出量が少なくなります。ある意味、乗り鉄はかなりサステナブルな旅の楽しみ方だと言えますね。とはいえ、車でないと行けない旅先もあるでしょう。その場合は自家用車で行くのではなく、途中まで公共交通機関で行き、途中からレンタサイクルを借りる、相乗りやバスツアーを利用する、などの方法が考えられます。

◆三春滝桜（撮影：2018年4月）

たとえば吉野山の桜（奈良県）や、三春滝桜（福島県）だと、日帰りバスツアーが旅行会社によって多く提供されています。バスツアーのほうが渋滞を避けられ、自家用車で行くより便利な場合も多いですよ。

春のサステナブルなひとり旅におすすめ 「駅チカ×城×桜」

ほかには駅チカにある場所を訪れることも、サステナブルな旅につながります。たとえば、「城」は主要駅に近いことが多いため、この時期は「城×桜」で掛け合わせた旅がおすすめ。駅前にある桜名所で特に人気があるのは姫路城（兵庫県）ですが、個人的には上田城（長野県）がおすすめです。

◆姫路城（撮影：2022年4月）

◆上田城（撮影：2021年3月）

世界遺産、国宝にも選ばれている「姫路城（兵庫県）」

現存する12天守の中で最も大きく、世界遺産と国宝にも選ばれている姫路城。白漆喰の城壁から、「白鷺城（しらさぎじょう）」の愛称でも知られています。最寄りの姫路駅から天守閣までは約1.5キロメートル。駅から一直線のところにあり、歩いて行けるのが嬉しいですね。

◆姫路城
住所：兵庫県姫路市本町68
電話番号：079-285-1146（姫路城管理事務所）
開城時間：9:00～16:00（閉門は17:00）
休城日：12月29日、30日

「真田丸」で知られる真田昌幸が築城した「上田城（長野県）」

日本100名城にも選ばれている上田城は、徳川軍を撃退した城としても知られています。最寄りは上田駅。上田城跡公園までは1キロメートルのところにあるので、アクセスのよさという意味でもおすすめです。

◆上田城跡公園
住所：長野県上田市二の丸6263番地イ
電話番号：0268-23-5135（公園管理事務所／8:30～17:15）
開園時間：終日
休園日：なし

【番外編】芦野公園（青森県）は公園内を電車が走り抜ける桜スポット

◆芦野公園（撮影：2019年4月）

ここまでは駅から近い「城×桜」スポットを紹介しましたが、最後は駅と桜を同時に楽しめる公園を紹介。青森県五所川原市にある芦野公園駅は津軽鉄道が走り、春になると桜スポットとして多くの観光客が訪れます。電車を降りた瞬間から桜を満喫できるなんて、最高ですよね。赤い屋根が特徴的な旧駅舎は「赤い屋根の喫茶店 駅舎」という名前の喫茶店になっています。桜を満喫した後は、喫茶店にも立ち寄ってみてください。

◆芦野公園駅
住所：青森県五所川原市金木町芦野
電話番号：0173-38-1515（五所川原市観光協会）

◆赤い屋根の喫茶店 駅舎
住所：青森県五所川原市金木芦野84-171
電話番号：0173-52-3398
営業時間：10:00～17:00
定休日：水曜日

おわりに

これからはただ旅を楽しむだけではなく、サステナブルな旅であるか？ という視点を持ってみるのもおすすめです。まずは難しく考えずに、今回ご紹介した「城×桜の旅」のように、季節に合わせた旅を、公共交通機関を利用して楽しんでみましょう！ そして、CO2排出量という知識やデータを知り、自分なりに持続可能な旅のカタチを探ってみていただけたら嬉しいです。

参考文献　
北村 祐介、柴原 尚希、稲葉 敦（2021）持続可能な観光に関する政策動向とLCA研究の方向性、日本LCA学会誌、17（1）P.8～15
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lca/17/1/17_8/_article/-char/ja/

益田悠貴、加藤博和、柴原尚希、伊藤圭（2012）移動場面・交通状況に応じた低炭素な旅客交通手段選定のライフサイクル評価に基づく方法論、第7回日本LCA学会研究発表会講演要旨集、P.210-211
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ilcaj/2011/0/2011_0_104/_article/-char/ja/