アデュー。老舗「山の上ホテル」へ別れを告げに、御茶ノ水駅界隈を歩く【東京】
2023年の冬、山の上ホテルを目当てに、住んでいる京都から東京の御茶ノ水へ向かった。今年の2月に山の上ホテルは無期限休業が決まっており、今を逃すともう2度と訪れることが出来なくなってしまうかもしれないからだ。
目次
車窓から見える富士に惹かれる
東京行きの新幹線に乗ると、体が勝手に富士山の写真を撮るように出来ているんじゃないかと思う。当たり前のように、毎回同じような構図で、同じような場所で写真を撮るのでクラウドに何枚も同じような富士山の写真が残っているのだけれど、毎回写真を撮る。見渡せば、あちこちで同じようにスマホを構えている人がいるのだから、もしかしたら日本人のDNAに組み込まれているのかもしれない。
御茶ノ水は病院の街、大学の街
見上げれば、巨大なビル群が広がり日本大学、東京医科歯科大学、順天堂大学、東大などの大学病院が周りに点在しているのがわかる。近くには大学がたくさんあり、平日のこの日は学生さん達がたくさん歩いていた。明治大学のキャンパスへ続く道には楽器店や飲食店などがたくさんある。笑いさざめきながら歩く学生の群れに飲み込まれながら、遠い昔の日々を思い出し、ノスタルジックな気分になっていると、山の上ホテルの看板が見えてきた。
建築好きたちが、文豪たちが愛した山の上ホテル
ホテルは丘の上に建っている。英語名は「ヒルトップホテル」。「丘の上ホテル」とならなかったのは、何かいわれがあるのだろうか。
作家が締め切り前に缶詰めにされるホテルとしても有名だ。川端康成、三島由紀夫、池森正太郎、伊集院静など日本を代表する作家たちが名を連ねていて、ここで数々の名作が生まれたのかもしれないと思いをはせる。
ホテル内のカフェ「コーヒーパーラー ヒルトップ」は、平日午後だというのに既に40組待ち。申し訳なさそうなホテルスタッフに頼んで、名残惜しいクリスマス風景を写真に収める。
山の上ホテルは、創業の翌年に別館がオープンし、パーティ客などでにぎわったが、2014年に別館は火災により閉鎖された。本館は2019年リニューアルが完了し営業を再開していたが2024年2月12日の営業をもって休館することが発表されている。
残念ながら、私にとって、かの有名なプリンアラモードは幻の味になってしまった。いつかこの美しいホテルが再開され、今度こそここでプリンアラモードを食べられるのを熱望しつつ丘を下った。
◆山の上ホテル
住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
電話:03-3293-2311
日本の学校教育発祥の地・湯島聖堂
山の上ホテルで空振りを食らったので時間を持て余した私は、御茶ノ水界隈を歩いてみる事にした。
黄金の銀杏並木が美しい道を渡ると湯島聖堂がある。湯島聖堂は、5代将軍徳川綱吉が儒教の振興を目的として1690年に建立した孔子廟。門をくぐり、数歩歩くと右手に孔子像がひっそりとたたずんでいた。後に、幕府直轄の学問所「昌平坂学問所」が開設され日本の近代教育の発祥地と呼ばれるようになった。なるほど、それで、合格祈願の絵馬がたくさん奉納してあったのか。みんな合格するといいね。
◆史跡湯島聖堂
住所:文京区湯島1-4-25
電話:03-3251-4606
入場料:無料
公開時間:9:30~17:00(冬季は16:00) ※土、日曜、祝日には大成殿公開(10:00~閉門時間まで)
神田明神で成田山に行けない体になる
湯島聖堂を出て向かいにある神田神社にも足を運んでみた。大国主命、恵比須様、平将門が祀られている。ご利益は、商売繁盛、縁結び等。徳川家康が1600年の関ケ原の戦いに勝利を祈願したと伝えられており、必勝祈願のパワースポットとしても有名。そして、江戸の総鎮守であり、東京108町会の総氏神様なのだそうだ。
手を清め、中に入ると大きな恵比須様が見える。私がイメージするより、恵比須様が若干スマートなのは、東京在住の都会人だからなのか。
◆神田明神
住所:千代田区外神田2-16-2
電話:03-3254-0753
恵比須様の後ろの建物は、神田明神文化交流館。地下1階から地上4階までの5フロアで構成され、1階には神社に関するグッズや東京土産が置いてあるブースもあれば、奥には喫茶スペースも併設されている。喫茶にはあまり人がいなかったので、お汁粉を注文してみた。ほうじ茶は紅茶のような香りがした。
神田明神を崇敬する者は、成田山新勝寺を参拝してはいけないというタブーがある。これは、平将門の討伐のため、朝廷が成田山新勝寺で動護摩の儀式を行わせたためだと言い伝えられている。知らずに参り、私はもう成田山には行けない体になってしまったようだ。
神田明神では「寒中禊」やだいこく様に扮した神楽師が参拝者の頭上で小槌をひと振りして開運を祈願してくれる「だいこく祭り」がちょうど1/13~14で催される。
◆神田明神文化交流館 EDOCCO
住所:千代田区外神田2-16-2
営業時間:9:00~18:00
・EDOCCO CAFÉ MASU MASU(神田明神 文化交流館内)電話:03-6811-6622
営業時間:月・火・水・木曜日10:00~17:30(LO17:00)、金・土・日曜日・祝日10:00~18:00(LO17:30)
定休日:無休
◆だいこく祭り
・寒中禊:1月13日(土)10時~
・四篠流包丁儀式1月14日(日)12時~
・祈願串成就祭1月14日(日)15時~
旅は予定変更が楽しい
山の上ホテルでプリンアラモードを食べられなかったおかげで、いつもは行かない神田川の向こうにわたり、必勝祈願のパワースポットにお参りでき、結果として成田山に行けない体になるという偶然の体験をした私は、その後東京駅まで戻り、丸の内のイルミネーションを眺めた。当初の予定とは大分違った結果だけれど、いつも旅先での予定変更は思わぬ体験を与えてくれる。
さて、次回はどこへ行こうか。
◆この記事を書いた旅色LIKESメンバー
ちあきさん
京都に住んでいます。一人旅、料理、手芸が趣味です。乙女建築、工芸品が好きで、素敵なものを求めて日々ふらふらしています。ドライブ旅行が多いですが、最近は鉄道を使った行き当たりばったりの旅も。