日本酒蔵ツーリズム推進協議会・杉野正弘さんに聞く、「酒旅」の醍醐味

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2025.12.23

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日本酒蔵ツーリズム推進協議会・杉野正弘さんに聞く、「酒旅」の醍醐味

2024年に「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことをきっかけに、ますます注目を浴びている日本酒。その作り方を学び、本場の味を堪能できる酒蔵を起点として旅する「酒蔵ツーリズム」に興味を持つ人も増えてきました。しかし「お酒が飲めないといけないのでは?」「何軒も酒蔵を回るには、アクセスなどが難しそう」とハードルを感じる人もいるようです。そこで、酒蔵ツーリズムのプロフェッショナルである日本酒蔵ツーリズム推進協議会・杉野正弘さんにお話を伺ってきました。

写真/旅色編集部

目次

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「酒蔵ツーリズム」とは、その土地を知り、食と一緒に酒を楽しむ旅スタイルである

海外からの関心も急上昇! 日本酒が注目される理由は「歴史」と「製造工程」にあり

若者の酒離れに担い手不足……。解決の糸口は「発想の転換」と「新たなチャレンジ」

酒蔵ツーリズムを楽しむなら、まずは「好みの町並み」を見つけよう

おわりに

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「酒蔵ツーリズム」とは、その土地を知り、食と一緒に酒を楽しむ旅スタイルである

――そもそも「酒蔵ツーリズム」とは、どんな旅スタイルなのでしょうか。
多くの人のイメージは「何軒も酒蔵を回る」というものかもしれませんが、私たちが提唱しているのは「『酒蔵周辺の自然背景を知ってもらい、その土地の食と一緒に酒を味わってもらう』ことが酒蔵ツーリズムだ」ということです。まず、お酒は水と米でできていますよね。なので、酒蔵近くの川に行って「こんなきれいな水からお酒ができるんだ」と体感するのも大事な要素です。例えば、長野県にある田中屋酒造店では「水尾」というお酒を作っています。酒蔵から片道15キロメートルの距離にある水尾山の湧水を使っていることから名づけられていて、水がとても重要な存在です。そのため、お客さんたちにその大切さを知ってもらうべく、酒蔵での体験の一環として水を汲みに行くというプログラムを行っていました。また、長野県生まれの酒米「金紋錦」を使用しているので、その田んぼの中で試飲体験を提供していたことも。このように、ただ酒蔵を見学するのではなくて、お酒ができる自然を知ることが酒蔵ツーリズムを構成する一つの要素だと思います。

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協議会が発行している「日本酒ビギナーズガイド」には、日本酒と料理のペアリングについての説明が。自分の好みの食に合う日本酒が必ずあるはず!?

――なるほど。「土地の食」についても教えてください。
日本酒の最大の魅力は「産地によって風味が異なるため、食事とのかけ合わせが豊富」なことです。たとえば、新潟産は軽やかで淡麗な味わいなので、アユの塩焼きや天ぷらと相性抜群。京都産は濃厚で複雑な味わいなので、タレの焼き鳥やうなぎと合わせるとおいしい、など、食とのマッチングが楽しめるんです。わたし自身も伏見(京都)で日本酒と焼き鳥を堪能するのが好きなのですが、その土地ならではの食と一緒にたしなむことで、旅がより思い出深くなるはずです。

海外からの関心も急上昇! 日本酒が注目される理由は「歴史」と「製造工程」にあり

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「海外の方に日本酒の印象を聞くと『オーガニックな感じ』『環境にやさしそう』という意見も多くありました。こういったイメージも人気を後押ししているかもしれません」

――旅先の土地について理解したうえで、お酒と食を楽しむ。素敵な旅スタイルですね! 2013年には「和食;日本人の伝統的な食文化」が、2024年には「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。海外の方からの注目度も上がっているのでは?
おっしゃる通りです。おなじ無形文化遺産だと、2013年にジョージアの伝統的なワイン製造法である「クヴェヴリ」が、2016年に「ベルギービール文化」も登録されています。ですが、「伝統的酒造り」と登録されたとおり、古事記でスサノオノミコトが八岐大蛇を倒すためにお酒を造らせたという伝説が残っていたり、大隅国風土記(※1)で記述されている口噛みノ酒(※2)が米を原料としたお酒の最古であるとされていたり、と発酵文化が継承されていたことが登録の要因であり、世界から注目される理由です。

※1大隅国風土記(おおすみのくにふどき):現在の鹿児島県を中心とした地域の歴史や産物を記した書物で、日本最古の米酒「口噛みノ酒」の製法を記した記述で知られている。

※2口噛みノ酒(くちかみざけ):加熱した米を口の中でよく噛み、唾液に含まれる酵素で糖化し、野生酵母によって発酵をすすめたもの。口噛みの作業を行うのは、神社の巫女のみに限られていた。

――そうすると、少なくても1000年以上の歴史があるということですね! 海外の方が興味を持つのも納得です。
歴史もそうですが、日本酒の発酵の仕方についても注目されています。たとえば、ビールはまず、お湯と混ぜた麦芽中の酵素(アミラーゼ)の働きで「糖化」を行い、できた麦汁を酵母が「発酵」させる、という順序で作られます。また、ワインは原料であるブドウに糖分が含まれているため「発酵」のみ行います。しかし、日本酒は一つのタンク内でこうじ菌による「糖化」と、その糖を酵母が食べてアルコールと二酸化炭素を生み出す「発酵」を同時に行っています。こういった工程の話も海外の方は興味があるそうです。

若者の酒離れに担い手不足……。解決の糸口は「発想の転換」と「新たなチャレンジ」

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「日本酒にまつわる課題を解決するには、イメージ転換が必須。そのために酒蔵ツーリズムをより多くの人に楽しんでほしいです」

――深くまで知りたい! と思ってもらえているんですね。
ですが、興味はあっても、各都道府県に酒蔵があることは海外の方もあまり知られていません。この事実を伝えるためにも、地域のことを知ってもらえる酒蔵ツーリズムが重要になってくると考えています。

――全国に酒蔵があるんですね!? 知りませんでした……。日本人でも知らない人が多い。そして、日本では(特に若者世代の)酒離れも課題ですよね。
もしかすると、日本人は「アルコール=体に毒」とか、「お酒を飲む場所=一気飲みなど、お酒を大量に摂取する場所」といった誤認識をしているのかもしれません。わたしの娘も「日本酒=おじさんが飲むもの」だと思っていたようですが、先日、はじめて吟醸酒を飲んでとてもおいしかったと言っていました。飲まず嫌いもあるんでしょうね。先ほどもお話ししましたが、日本酒の最大の特徴は「食とのかけ合わせ」なので、一定量をたしなみながら、食をよりおいしく味わうものだと発想を変えられればと思います。

――酒離れだけでなく、酒蔵の担い手不足についても心配です。
最近は若者世代など、新しい顧客を取り込むために華やかなラベルをあしらうところも増えてきました。酒蔵単独の取り組みだけでなく、企業が酒蔵事業に参入する例もあります。たとえば、新潟県のDHC酒造は1908年に創業した小黒酒造が前身。看板商品・越乃梅里のほか、2017年に誕生した悠天などを製造しており、この悠天は味だけでなくボトルデザインにも力を入れたことで反響があったそうです。また、同じく新潟のたからやま醸造は2024年に株式会社fermataが子会社化。この会社が運営する飲食店「和食日和おさけと」では、メニューにたからやま酒造の甘酒を入れることで、ノンアル派にも好評を得ているようです。わたしもここの甘酒が好きで、よく飲みに行っています。こういった新しいチャレンジが後押ししてくれるとうれしいです。

酒蔵ツーリズムを楽しむなら、まずは「好みの町並み」を見つけよう

――「酒蔵ツーリズムはその土地の自然と食を知って、味わうもの」だとわかりました。酒旅の候補地を探すうえで、ポイントがあれば教えてください。
おもしろいとっかかりとして「酒蔵がある町並み」を挙げさせてください。先ほど、「酒造りは代々継承されたもの」というお話をしました。ということは、酒蔵がある町には昔からの町並みが残っていたり、酒蔵自体が文化財に指定されていたりします。例えば、岐阜県の飛騨古川エリアは、江戸時代の風情が色濃く残る白壁土蔵街や、国の登録有形文化財に指定された渡辺酒造店や蒲酒造場などがあります。このように、酒蔵と町が一体となっている風景は全国にいくつかあるので、街歩きの一環として酒蔵ツーリズムを楽しんでほしいです。

おわりに

単に酒蔵を訪ねたりお酒を飲み歩いたりするのではなく、その土地や食について理解し、マッチングを楽しむのが酒蔵ツーリズム。日本酒に詳しくなくても「旅先で新しい発見をしたい」という思いがあれば楽しめる旅スタイルだということが、今回のインタビューで発見できました。皆さんも、好みの食事とのかけ合わせや、好みの町並み散策を通じて、酒蔵ツーリズムを楽しんでみては。

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編集部 ヨシカワ

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ヨシカワ

元添乗員&温泉ソムリエ。月1で旅行しないと体がうずうずしてくる、旅大好き人間。47都道府県全制覇済み。最近はキャンプもはじめました。

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