お腹も心も大満足。枠にとらわれない美しい祐天寺のタルト
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食感には派閥があると思う。もちもち党、ふわふわ党、パリパリ党、ガリガリ党……。要するに柔らかいのか固いのか? という好みは誰しもあるだろう。それでいうと私は後者なので、ミスドに行けば、ポンデリングよりオールドファッションを贔屓にしている。そして、スイーツ界ではタルト生地を心底愛している。あの、噛み締める度に旨みがリズミカルに口に広がる感覚……あぁ、たまらん。
小さなカフェ「lueur」
そんな偏愛を持つ私が本日訪れたのは祐天寺にある「lueur」。祐天寺で愛されているカフェ「torse」の自家製タルトを専門に取り扱う、タルト好きにはたまらない場所。
アンティークの家具と、空間の余白に温かみを感じる店内。ゆっくりと流れる時間にほっと肩の力がぬける。
実は昔、この辺りに住んでいたことがあって、母体となる「torse」の場所はすぐに分かる。いつも可愛らしい女性たちが行儀よく列をつくり、お店周りが華やかだからだ。わたしがふらりと訪れる時は、お目当てのタルトが完売していることが度々あった(ほんとに大人気なのよ)。
みんなに愛されるあの味を、ゆっくりと楽しむことができる「lueur」。ご近所さんが心底羨ましい……。
ショーケースには色とりどりなタルトの顔ぶれが並んで、眺めているだけでも幸せな気持ちがポコポコ湧きあがるから、スイーツは尊い。フルーツの旬によって、ラインナップは流動的に変わるそう。プリンやショートケーキが我が顔でタルトを占拠していたり、イチゴやベリーが宝石のように敷き詰められていたり。オーナーさんの日々のインプットを抽出したメニューは、美しくのびのびとしている。お子さんが生まれてから、より鮮やかな彩りが増えたという。タルトをパレットとして表現するクリエイティブな品々。
「うさぎのタルト」
きゃ〜、うさぎさん! もう食べるのが忍びないほど愛らしくてずるいぞ……!
ホワイトチョコクリーム、イチゴ、生クリーム、イチゴのクリームで構築されたキュートなうさぎは、見かけによらずレディな甘さ。大人でもパクパクいけちゃう上品な味わいだ。
あんなに躊躇したひと口目が嘘のように、うさぎ様の形跡はすごく速度で崩れていく(おいしすぎて、手が止まりません、ごめんよ、うさこ!)。
この日はお店のオープン前、ちょうど予約開始時間の10時に訪れたのだが(取材のために)、店内ではタルトを食べたいお客様からのラブコールが引っ切りなしに鳴り響いていた。そりゃ、こんなおいしければご新規さんもリピーター勢も黙っちゃいないよね。
「ピスタチオとベリーのタルト」
もう一品は、色と装飾がポップでキュートなタルトを。
あれ? うさぎさんと、タルトの生地が違う??? 実は、「lueur」ではタルト上部の表情に合わせて、タルトの生地もカスタムされている。
ピスタチオのタルトはココアのベース。甘さが控えめに作られていて、よりフルーツやクリームの繊細さが引き立つように計算されているのだ。
タルト is ジェントルマン!
独学で、この味にたどり着いたという山口さん。「torse」から地続きに積み重ねた経験則と、日々の刺激を糧に、試行錯誤して生み出したタルトは、口にする私たちまでクリエイティブな気持ちになれる。
枠にとらわれない美しいタルトの佇まいと、華やかな見かけに劣らない、奥深い味わいに目尻が下がりっぱなしな私。美しい表現を五感でたっぷり満喫して、お腹も心も大満足だ。
◆lueur(リュール)
住所:東京都世田谷区下馬1丁目19-4 1F
電話:03-6879-0941
営業時間:12:00~18:00
定休日:月~水曜日