尾道、空き家プロジェクトから歴史の再生力を知る
「ちゃんと考えると、旅はもっとおもしろくなる」と思うLIKESライター・美娜(みな)です。先日、しまなみ海道やサイクリングの聖地として名高い尾道(おのみち)へ行ってきました。尾道では、古き良きレトロな町並みや建物を再生するプロジェクトが行われてします。古きを求め新たしきを知るかのごとく、残していくもの、進化するものが共存するとは? 尾道の空き家再生プロジェクトから歴史の再生力を感じる旅をしてきました。
目次
尾道空き家再生プロジェクトからみる歴史の再生力
広島県東部に位置する尾道市。「坂の道・尾道」といわれるほど坂道が多く、車が通れないほどの道もあちこちに。なかでも、市なにの真ん中を通る山陽新幹線の線路を挟んだ北側を「山手地区」といい、このエリアは市内でも特に坂が多い場所です。また坂道の途中には尾道の文化、街並み、歴史など象徴する空き家が目立ちます。2007年からは、市とNPOが連携して尾道の空き家を新たに活用し、魅力はあふれる景観を再生しようという「尾道空き家プロジェクト」を始めています。ゲストハウス・宿泊施設・飲食店など、再生された空き家はすでに10件以上。そんなプロジェクトを知り、尾道へ行ってきました。
プロジェクトのシンボル「尾道ガウディハウス」
「尾道ガウディハウス」は一棟貸し切りの宿泊施設・レンタルスペースで、2013(平成25)年、国の登録有形文化財となっています。2007年に開業し、空家再生プロジェクトのシンボル的存在となっています。元々は、和泉茂三郎の別荘として1993(昭和8)年に施工されました。後継ぎ不足で約25年以上空き家で、老朽化による解体の危機にあったところを再生させたことから「空き家再生プロジェクト」は始まりました。10坪ほどの狭小敷地に建つ、木造2階建ての擬洋風建築。不規則に重なった瓦屋根に、複雑な地形とうまく融合した形状、当時流行ったであろう建築技法が現代においてもモダンな印象を与えています。残念ながら中の見学はできませんが、外観を眺めていると地元の方が「ここは泊まれるのよ。誰かが泊っていたら玄関にのれんがかかっているからすぐわかるの。今日は誰もいないね」と教えてくださいました。建物をきっかけに、地元の方とのコミュニケーションが始まる新鮮な体験でした。
♦尾道ガウディハウス
住所:広島県尾道市三軒家町9-17
電話:080-6323-9921
路地裏のクリエイティブ空間「三軒屋アパートメント」
1Kの風呂なしアパートをリノベーションした「三軒屋アパーメントト」はものづくりの発信拠点として再生されました。建築基準法の改定などで取り残されていた空き家を再生し、カフェやギャラリーなどを始め工房など入居者それぞれのクリエイティヴ空間として使われています。尾道駅裏から徒歩3分ほど歩いた場所にあります。
♦三軒屋アパートメント
住所:広島県尾道市三軒屋町3-26
世界的建築集団が手がけた複合施設「LOG」に宿泊
千光寺に向かう途中に建つ、鉄筋コンクリートの3階建てで、1階と2階にはカフェ、ギャラリー、3階に客室とライブラリー、そして宿泊者限定の屋上スペースとなっています。昭和30年代のアパートをリノベーションしたのは、世界的建築集団スタジオ・ムンバイ。設計から施工までを一貫して職人の手作業で行う独自スタイルで知られ、日本では「LOG」が初めて手がけた施設です。施設の門が解放されていれば誰でも自由に出入りができ、昭和の良き面影を残しながら、現代と融合したアート総合施設のよう。
インテリアやライトなどLOGの為にデザインされており、洗練された空間をつくりだしています。カフェでは軽食などが提供され、友達の家に遊びに来たような安心感。夕方からは宿泊者限定のお菓子がいただけて、訪れた人を楽しませてくれます。
客室に入る扉もスタイリッシュでありながら、どこかなつかしさを感じるつくり。室内は天井、壁、床に作家が手掛けた和紙が使われ、外の光がやわらかく注ぎます。窓を開け、ベッドに寝転がりながら尾道水道を眺められる贅沢。テレビはなく、静かに尾道の朝を待ちながら眠りにつきました。昭和のよき時代の雰囲気を残しつつも、現代のテイストに生まれ変わったLOG。作家の力を感じる姿は古くから知る人にもはじめて訪れた人にも良き存在であり、人々が集まる場所となっていました。
♦LOG
住所:広島県尾道市東土堂町11-12
電話:0948-24-6669
開門時間:7:00~日没まで
営業時間:SHOP 9:00~18:00、DINING 7:30~10:00(LO9:30)18:00~22:00(LO20:30)、GALLERY 9:00~18:00、Cafe&Bar Atmosphereカフェタイム 11:00~17:00
人々を魅了してやまない尾道の町並み
人々を惹きつけるのは古いものを「上書き」せずに、新しく生まれかわっているということではないでしょうか。年配の方には懐かしく、若い世代の方には新しく感じる。尾道を訪れたときに、若い世代の方を多く見かけました。そこにある、文化と生活を大切にする、尾道の歴史と再生力を感じた旅となりました。