【倉方俊輔の建築旅】進化する宮城県石巻市で旬な建築家に触れる旅

宮城県

2025.07.07

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【倉方俊輔の建築旅】進化する宮城県石巻市で旬な建築家に触れる旅

石巻市には、藤本壮介さんが設計した建築があります。大阪・関西万博の大屋根リングを手がけたことでも注目され、7月2日からは東京で個展が開催されます。ほか、隈研吾さんが設計した建築や、木造でありながらも洋風のデザインが散りばめられた建築など、訪れるべき理由が詰まっています。今回は、「マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設」「北上川・運河交流館」「旧観慶丸商店」の3つをご紹介しましょう。

目次

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外と中で違う顔を見せ、まるで家のようなあたたかさがある「マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設」(2021年)/藤本壮介

北上川の雄大さを間近に感じる「北上川・運河交流館」(1999年)/隈研吾

洋風のデザインが散りばめられ華やかな印象を与える「旧観慶丸商店」(1930年)

おわりに

外と中で違う顔を見せ、まるで家のようなあたたかさがある「マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設」(2021年)/藤本壮介

まるで家のような外観は白で統一されている

まるで家のような外観は白で統一されている

2021年に開館した「マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設」は、中心市街地から少し離れた場所にあります。その姿が遠くから見えてくると、「あれは何だろう?」と思うことでしょう。

まるで「お家」が並んでいるように見えます。子どもが描くような家に感じさせるのは、シンプルな線のみが使われているからかもしれません。窓は正方形で、屋根は一直線、そしてすべてが白く塗られています。

近づくと建物の大きさがリアルに感じられる

近づくと建物の大きさがリアルに感じられる

そのため、建物の大きさがよく分からなくなってきます。近づけば、正方形の窓が思ったよりも大きいことや、屋根の形が立体的で変化に富んでいることに気がつくでしょう。施設としては規模が大きいものの、ひとかたまりの巨大な建築には感じさせたくない、そんな設計者の思いが伝わってきます。

横に長く続く内部

横に長く続く内部

各部屋についているプレートが印象的

各部屋についているプレートが印象的

では、内部はどうなっているのでしょうか? 中央にある入口から中に入ると、天井の高いロビーが横方向に続いています。右手には1,258席の大ホールがあり、左手には302席の小ホール、さらに2階には市民が活動できる部屋がいくつも設けられ、左手に進んだ先には市民ギャラリー、そして石巻市博物館があります。

天井は高く開放的

天井は高く開放的

他にもカフェやキッズスペースなどがあり、壁から突き出したサインがどこに何があるのかを示してくれます。白い壁は外観と共通していますが、木材が使われたり、色が塗り分けられていたりと、外から想像していたよりも賑やかな雰囲気です。さまざまな活動がこの共通のロビーに溢れ出し、互いに繋がることが期待されるデザインです。

天井から吊るされた照明器具は横に長く続いている

天井から吊るされた照明器具は横に長く続いている

木の扉とガス灯を思わせるランプであたたかみを感じられる

木の扉とガス灯を思わせるランプであたたかみを感じられる

内部が少しレトロな感覚をまとっているのも、この建築の面白いところ。天井からは電球を連ねたような照明器具が吊り下がり、ガス灯を思わせるランプも付いています。素材感のある大ホールの木製扉や、巨大な棚のような壁面構成も、個人宅のインテリアを思わせるでしょう。しかし、縮尺を大きく変えることによって、やはり広々とした公共建築らしい空間が生まれています。

こうして見てみると、外観ではデザインの要素を限定し、内部にはさまざまな性質の素材を用いるという、内外が対照的な建築であることが分かります。その中で共通しているのは、皆の心の中にある「お家」のイメージと響き合うことです。実際の家の大きさを変化させたり、色を変えたりすることを通じて、特定の誰かではなく「みんな」の家が設計されています。

内部にはゆったりと過ごせる場所が散りばめられている

内部にはゆったりと過ごせる場所が散りばめられている

馴染みのある要素を巨大にしたり、素材を変えたりすることで、さまざまな人々が自由に連想し、思い思いに行動することを育む公共空間を生み出した点では、同じ藤本壮介さんが手がけた大阪・関西万博の大屋根リングと共通します。

この建築が、2011年の東日本大震災からの復興を象徴するものであることも、みんなの家としてのあり方に関わっています。すなわち、被災した市民会館や博物館の機能を併せ持つ施設として、津波が到達しなかった、市街地から少し離れた場所に計画されたのです。どこか馴染みがありながら、新しい形は山並みの中で際立ち、ここが安心して人間の未来を育む場所であることを告げています。

◆マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設
住所:宮城県石巻市開成1-8

北上川の雄大さを間近に感じる「北上川・運河交流館」(1999年)/隈研吾

北上川の前にあり、自然と調和する「北上川・運河交流館」

北上川の前にあり、自然と調和する「北上川・運河交流館」

内部が見えるよう、壁は一面ガラス張りとなっている

内部が見えるよう、壁は一面ガラス張りとなっている

続いては、石巻市の発展を支えてきた北上川沿いへと進み、「北上川・運河交流館」に向かいましょう。隈研吾さんの設計で1999年に開館した施設です。東日本大震災による損傷で休館していましたが、2022年にリニューアルオープンしました。

屋根は春になるとツツジが咲き誇る

屋根は春になるとツツジが咲き誇る

建築は、北上川の土手に埋め込まれたように位置しています。なだらかな屋根の上にはツツジが植えられ、その間に土手沿いの遊歩道から続く小道があります。小道を上がると、自然と眺めが開け、北上川の歴史を静かに考えられる場所となっています。足元には、間仕切りのない交流スペースと展示スペースが広がり、そこでは大きなガラス越しに川の雄大さを実感できます。

ここには、いわゆる建築らしいインパクトのある形や、凝った内部空間はありません。2000年を過ぎた頃から、隈研吾さんは「負ける建築」という言葉を編み出し、従来型の「強い」建築への違和感を分かりやすく表現するようになります。それと時を同じくして、木製のルーバーが設計作品のトレードマークとなり、社会に広まりました。

そして現在、隈研吾さんは、世界中から設計依頼が尽きない建築家の代表格といえるでしょう。北上川に静かに思いを馳せ、さりげなくステンレス製のルーバーで内外を繋げた小さな建築は、その後の作品とともに捉えると、さらに大きな見ごたえを感じさせます。

◆北上川・運河交流館
住所:宮城県石巻市穀町14-1
電話:0225-95-1111
開館時間:8:30~17:00
休館日:年末年始

洋風のデザインが散りばめられ華やかな印象を与える「旧観慶丸商店」(1930年)

石巻市で初めて百貨店として建てられた「旧観慶丸商店」

石巻市で初めて百貨店として建てられた「旧観慶丸商店」

さらに中心市街地にも、歴史を感じさせる建築が点在しています。その中でも、「旧観慶丸商店」はひときわ印象に残ります。この建物は、石巻で初めての百貨店として1930年に建設され、その後、約80年間にわたり陶器店として市民に親しまれてきました。

外観は洋風のデザインが施されている

外観は洋風のデザインが施されている

木造でありながら、外壁には多様なタイルが用いられています。スペイン瓦や丸窓、アーチ窓といった洋風のデザインが散りばめられ、目抜き通りの交差点で今も華やかな印象を街に与えています。丁寧に作られた木製のショーウィンドウも貴重なものです。

石巻の繁栄を象徴する存在として長年地域の人々に愛されてきたこの建物は、2013年に石巻市へ寄贈され、2015年には石巻市の有形文化財に指定されました。1階は文化交流スペースとして貸し出され、2階は石巻市博物館のサテライト展示スペースなどとして利用されています。

冒頭でご紹介した「マルホンまきあーとテラス 石巻市複合文化施設」内にある石巻市博物館と併せて、ぜひ訪れてください。館のコンセプトである「大河と海に育まれた石巻」を生きた人々の息吹に触れることができます。

◆旧観慶丸商店
住所:宮城県石巻市中央3-6-9
電話:0225-94-0191

おわりに

藤本壮介さんは、初めての大規模個展が東京の森美術館で開催されることでも注目を集めています。大阪・関西万博では大屋根リングだけではなく、隈研吾さんが設計した複数のパビリオンも見られます。今をときめく建築家の作品がある石巻市、ぜひ訪れてみてください。

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#宮城県 #建築旅 #倉方俊輔 #石巻市 #隈研吾 #藤本壮介

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建築史家 倉方俊輔

建築史家

倉方俊輔

1971年東京都生まれ。大阪公立大学教授。日本近現代の建築史の研究と並行して、建築の価値を社会に広く伝える活動を行なっている。著書に『京都 近現代建築ものがたり』(平凡社新書)、『東京レトロ建築さんぽ』(エクスナレッジ)など。Peatix「Kurakata Online」や「NHK文化センター」で、建築の見かたをやさしく学ベるオンライン講座も開講中。

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