朝ドラ『ばけばけ』のルーツをたどる。青梅で生まれた『雪女』から始まった松江の旅
9月29日(月)から放送開始のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の主要人物である小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。彼の作品である『雪女」と聞くと、雪深い東北や信州を思い浮かべていた私。しかし、その舞台は、東京都青梅市なんです。島根県松江市に住んでいた八雲が、なぜ遠く離れたこの地を舞台に選んだのでしょうか? その謎を探るべく、青梅在住の旅色LIKESライター・じゅんが八雲ゆかりの地を巡る文化旅に行ってきました。
目次
『雪女』のアイディアは“調布村”からきた!?
『雪女』のルーツが青梅市にあると知ったのは、地元の商店街で行われた、小泉八雲のひ孫にあたる小泉 凡さんによる「雪女伝説と青梅」の講演会です。
ー「雪おんな」という奇妙な物語は、武蔵の国、西多摩郡、調布村のある百姓が、その土地に伝わる古い言い伝えとして私に語ってくれたものである……。ー
これは、八雲の代表作『KWAIDAN』の序文にある内容で、凡さんいわく、調布村は現在の青梅市にあたり、小泉家には調布村の出身である宗八と花の親子が使用人として働いていた記録が残っているそう。また市内にある青梅昭和レトロ商品博物館の2階には「雪女の部屋」があり『雪女』と青梅にまつわる資料が置かれています。そして多摩川に架かる調布橋には「雪おんな縁の地」の碑が立ち、その裏には八雲の肖像画と『KWAIDAN』の解説が書かれているんです。
◆青梅昭和レトロ商品博物館
住所:東京都青梅市住江町65
電話番号:0428-20-0234
営業時間:10:00~17:00
定休日:月~木曜日
入場料:大人350円、小中学生200円、未就学児無料
八雲が“オープンマインド”で見出した日本の魅力が残る松江の町並み
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は八雲と妻の小泉セツが過ごした松江が舞台。主人公のモデルは小泉八雲の妻・小泉セツです。二人の出会いは八雲が英語教師として松江に赴任したことから始まります。八雲の身の回りの世話をするため住込みで働いたのがセツで、養母が口承文学の伝承者だったこともあり、子どもの頃から物語好き。日本語が読めない彼に民話や怪談を語ります。その話をもとに松江の人々の生活や伝統文化、人情を織り交ぜ、八雲はさまざまな作品を創作。執筆した物語の中には、八雲の偏見のない精神(オープンマインド)で見た、日本人ですら気づかない日本の魅力が散りばめられています。そんな八雲とセツが暮らしていたのは松江城のお堀近くに並ぶ武家屋敷通り。現在も「小泉八雲記念館」や「小泉八雲旧居」などもあり、二人が過ごした時間を辿ることができます。
◆小泉八雲記念館
住所:島根県松江市奥谷町322
電話:0852-21-2147
営業時間:4月~9月9:00~18:00 ※最終受付17:30、10月~3月9:00~17:00 ※最終受付16:30
定休日:無休 ※館内メンテナンスのため、年数回の休館日あり
入場料:大人600円、小・中学生300円
八雲も注目! 長寿祈願のための大亀にまつわる伝承が残る「月照寺(げっしょうじ)」
八雲が一番好きな場所として語っていた月照寺は、松江藩主松平家の初代から9代までの藩主のお墓がある場所です。松江藩7代藩主・松平治郷(はるさと、号:不昧(ふまい)公)が、父・宗衍(むねのぶ)の長寿を願って建立した大亀の石像が有名で、その頭をなでると長生きできるといわれています。頭の高さは3メートルほどあり、手を伸ばさないと届かないくらいの大きさ。静けさと木々に囲まれた中でずっしりと構える大亀は、真夏でも暑さを忘れてしまう程の迫力です。この巨大な大亀にまつわる伝承は八雲が随筆した『知られざる日本の面影』にも登場しています。
ーある藩主が生前に愛した亀を偲んで建立された石像が、藩主の死後に夜な夜な暴れ出し、人を襲うようになったという話。困り果てた住職が深夜に説法をすると、大亀は涙を流し、「自分でもこの奇行を止められない。どうかお任せしたい」と語ったといいます。そこで藩主の功績を刻んだ石碑を大亀に背負わせ、この地に封じたと伝えられています。(月照寺HPより)ー
このほかにも大亀の怪談話は残っており松江の人々によって語り継がれています。八雲は日本のこのような不思議な物語や、それを大切に受け継いでいく人々の姿に、独自の魅力を感じたのかもしれません。
セツも八雲との縁を占った?「八重垣神社」
八重垣神社は縁結びの神様として知られ、境内奥にある「鏡の池」ではご縁を占うことができます。恋愛、結婚等の縁に限らず人間関係など、さまざまな縁や願い事について占えるため、地元はもちろん遠方からも多く訪れています。紙に硬貨をのせて池に浮かべ、沈むのに15分以内なら早いご縁、30分以上ならゆっくりのご縁。近くで沈むと身近な人、遠くなら遠方の人とご縁があると伝えられています。実際に挑戦してみると、静かな池の水面にそっと紙を置くと浮かび上がった文字は「氣力を持ち続けよ」。紙はほとんど動かず8分くらいで沈んでいきましたが、思い返せばいつ沈むのかばかりが気になり何を願ったのか覚えていません(笑)。セツもここで占ったと伝えられており、紙はなかなか沈まず遠く離れた池の端で沈んでいったのだそう。遠くの異国の地にいた八雲との縁を暗示していたのでしょうか。
八雲とセツも訪れた、えびす様を祀るノスタルジックな町・美保関(みほのせき)
松江市街地から車を約60分走らせ美保関へ。ここは、海を好んだ八雲もセツと一緒に訪れたという港町です。美保関には全国各地(3,385社)にある事代主神を祠る「えびす社」の総本宮・美保神社があります。古くから多くの伝統的な神事が受け継がれていて、毎日8時30分と15時30分にはお供えを捧げ、感謝を表す日々の祭典が行われています。鳥居の先に港が広がる風景は、港町ならではの光景が。また、神社と港のそばには昔の面影を残す建物がずらりと並んでいます。実はこれらの多くは、かつて宿屋を兼ねた廻船問屋(かいせんどんや)だったそう。江戸時代中期以降、北前船の寄港地でもあった美保関には、積み荷をスムーズに運ぶために整備された青石畳が敷かれ、この通りは神社への参拝道にもなっていました。神社から徒歩約5分の場所には、八雲が美保関を訪れた際に滞在した旅館「島屋」の跡地である小泉八雲記念公園もあるので、八雲とセツもこの辺りを散策していたかもしれませんね。
◆美保関神社
住所:島根県松江市美保関町美保関608
電話:0852-73-0506
さいごに
怪談や怖い話は苦手なのですが、『雪女』がきっかけで旅した松江は、私にとって特別な場所となりました。神社で自然に手を合わせる地元の方の姿。古くから伝わる伝統や文化を大切にする温かい心を知り、この町には八雲の作品に込められた日本の魅力が今も息づいていることを実感しました。 八雲が紡いだ物語が繋いでくれた、かけがえのないご縁。これからもこんな出会いを探しながら、旅をしてみたいです。














