グーグーと鈴木家。“故郷”リゾナーレ八ヶ岳に20年通う家族の物語
「もう子どもが大きくなったから、家族旅行に行ってくれない」
思春期の子を持つ親の間でよく聞くフレーズだ。ここでいう家族旅行とは、観光をメインとした旅を指すことが多いだろう。実際「2025年版観光白書」によると、観光目的の国内旅行では、家族・親族での旅行が約半数を占めると伝えている。
今回は、家族の絆を確かめる“故郷”として、リゾナーレ八ヶ岳に20年間毎年リピートしているという鈴木さん一家に話を聞いた。家族旅行の意味だけではなく、家族の定義、人との付き合い方についてまで考えさせられる取材となった。
目次
リゾナーレ八ヶ岳との出会い
敷地内そのあちこちから南アルプスが見える
新宿から特急で2時間。小淵沢駅からバスで約5分の高原にたたずむ「リゾナーレ八ヶ岳」。星野リゾートが運営するリゾナーレブランドの第1号として開業したのは2001年のこと。敷地面積約76,836平方メートルを誇る施設内の大動脈が、建築家マリオ・ベリーニが設計した160メートル続く石畳の回廊、「ピーマン通り」。年間10を超えるイベントが開催され、毎年4月にはロスフラワーを敷き詰めた「花の回廊」が登場して春を演出する。
2月初旬、関東地方では雪が降るなか、埼玉県から車で鈴木さん一家がリゾナーレに来てくれた。
左から、鈴木博英さん、久美子さん、美英さん、美博さん、リゾナーレ八ヶ岳の増田さん
鈴木博英さんと久美子さんは1999年5月に軽井沢にある「軽井沢ホテルブレストンコート」で挙式をしている。以来、毎年結婚結記念日には訪れ、子どもたちも何回か泊まっていたという。
博英さん「ブレストンコートのレストランが小学生以下NGになったきっかけでリゾナーレ八ヶ岳に行って、そこから毎年訪れるようになりました。小さい頃はずっと子どもが中心で、滞在の半分ぐらいはプールやクッキーづくり、畑に行って。多いときは年に4回、四季を感じるように通っていました」
人見知りだった美博さん。小さい頃は無表情だったというのがウソのようによく笑う
美博さん「はじめは小学生1~2年生のときですね。いろんなアクティビティをやっていた記憶があります。学校の自由研究もここで作ったものを提出していました(笑)」
美英さん「私も小学生のとき、朝からみっちりアクティビティをしていたことを思い出します。「朝散歩」で初めて見る虫がいたり、そのあとの「空中散歩」がこわくて......」
全員「大泣き(笑)」
美博さん「あと、しおりもあったね」
久美子さん「そう。主人が旅のしおりをつくってたんですよ」博英さん「小学校のときに何回かですけどね。パワポに自由時間とか、自分たちで記入してもらったりして作って渡していました。予約しなきゃいけないアクティビティも結構あったんで、毎日のようにチェックしていました。すぐ埋まっちゃうんですよ(笑)」
博英さんがここまで家族旅行での“体験”に執心していたのには理由がある。
子どもの成長を見守ってくれる“故郷”
臨床検査技師の博英さん。リゾナーレの接客は患者と向き合うホスピタリティの勉強にもなったと言う
博英さん「私たち、故郷っていうのがないんですよ。私は両親を早く亡くしていて、妻は私たちが住んでいる埼玉に実家があるので。“帰省”にあこがれていました。はじめてこのホテルに泊まったときに、家族以外にも一緒に子どもの成長を見守ってくれる人がいるというのがわかって。ああこういうのいいなって、ありがたいって思いました」
美英さん、美博さんからもらった手紙をうれしそうに見せてくれたグーグーこと三枝さん。オンラインなのに明るさが伝わってきた
成長を見守ってくれた人のなかで鈴木家にとって家族のような存在が「グーグー」こと、三枝香織さん。2011~15年までリゾナーレ八ヶ岳でアクティビティ担当をしていた。グーグーは担当時の愛称だ。姉妹が小さいころのクッキー作りから始まって、収穫やピザ焼き体験などすべて担当。スキーレッスンでは「出会ったころは初心者に見えたのに、何年かして上級コースも滑れるようになりました」と成長を目の前で見続けてきた。訪れるたび声をかけてもらっているうちに、姉妹は毎回手紙を書くようになったという。グーグーの存在が「リゾナーレ八ヶ岳のスタッフ」から「親戚のお姉ちゃん」の様相を見せはじめた。
博英さん「みんなでアクティビティを熱心にやってたときは面白かったですね。子どもたちも楽しそうだし。尾白川に入ったり、近くの畑に行ってピザ作ったり、そういうのをグーグーが先導してやってくれるから」
美博さん「うん、楽しかった」
久美子さん「誰が手を切ったみたいな」
美英さん「カエルに初めて触ったとか」
博英さん「乗馬とか、子どもたちが大きくなっても楽しめるアクティビティがあるのがよかった」
家族の用事でそろわないタイミングもありましたか? と聞くと「20年間全員出席です(笑)」
古希祝いのスペシャルアクティビティ
三枝さん(写真右端)の鈴木家に寄り添う気持ちが写真からも感じられる
2014年11月に訪れた際、博英さんは久美子さんの父親の古希祝いをしたいと相談した。すると三枝さんは「鈴木さんはほとんどのプログラムを体験されているし、節目の大切な記念日だし、思い切って鈴木様専用のプログラムを作りたい!」と上司に相談してたった一回だけのアクティビティを実行した。
全員「あーー! 古希のお祝いしたね!」
博英さん「あれは特別にやっていただいたようで。「ハカセ」っていう方もいて、吐竜の滝とか、記念になりそうな場所をリサーチしてくれて。テーブルとかもわざわざ準備して、その場で炭酸のジュース作ってくれたりしていただきました」
たくさんの思い出とともに子どもたちは成長して、家族の“故郷帰り”は次第に変化をしてきたという。
子どもの成長と、愛しい距離
久美子さん「小さいときはずっと見てないといけなかったんですが、次第に敷地内を子どもたちだけで遊ぶようになって。「もう運転しないから飲んじゃおうか」って話していると、「じゃあBOOKS&CAFE行ってくるね」って2人で本を読んでたり、ピーマン通りを走ってたり」目を離しても、安心できる場所なんです。
小さいころの姉妹の遊び場だった「BOOKS&CAFE」絵本から哲学書まで約3,000冊がラインナップ
博英さん「大きくなってくると、年に1回はコース料理を食べさせたいなっていうのもありましたね。だからビュッフェ&グリルレストラン「YYgrill」(ワイワイグリル)だけじゃなく、メインダイニング「OTTO SETTE」(オットセッテ)にも行くようになりました。ホテル内に2つレストランがあるのがよかった。いつかOTTO SETTEに行きたいねって」
久美子さん「コース料理の体験は友達だけではなかなかできないし、自分たちが大人になったときにちゃんと振舞えるようになってほしいっていうのがありました。どこまで汲んでくれているかはわからないけど(笑)」
20歳のお祝いをしたOTTO SETTEで「ここがわたしのアナザースカイ!(笑)」
妹の美英さんは、昨年OTTO SETTEで20歳の誕生日ディナーを祝った。はじめてのワインもここで体験した。そのワインを選んだのが、三枝さんからバトンを渡されたレストラン責任者の増田さん。「年代を通してライフステージが違う中で利用していただいてる方がいらっしゃって、実際にサービスができているのが嬉しいです。美英さんが飲まれたワインを開けたときは嬉しかったですね」
増田さんは鈴木家に出会って「ゲストのライフステージに合わせたサービスをしたい」と確信したという
これからの家族旅行について、博英さんに聞いてみた。
博英さん「これまでの旅行ではコミュニケーションを一番大切にしてきました。家から外にでて、グーグーとか、いまは増田さんとかに会って話ができる、そういった“故郷”でのコミュニケーションって家の中でも他のホテルでもできない。だからチェックインの時も「子どもたちあっちいってていいよ」じゃなくて、一緒にいて会話することを気を付けていました。これからも家族のコミュニケーションを大切にしたいので、娘たちが結婚しても年に1回はリゾナーレ八ヶ岳にきたいなと思います。みんなで現地集合にして。単純にホテルに行ったから終わりではなく、顔見て一言挨拶だけでもできる人がいる場所に家族で行くのってすごくいいと思うんです。
これからもさまざまな「家族の風景」がリゾナーレ八ヶ岳で紡がれていく
おわりに
取材中、鈴木家から「グーグーがブレストンコートで挙げた結婚式に参列したんだよね」と聞いて耳を疑った。後ほど三枝さんに確認すると「結婚を機にリゾナーレ八ヶ岳を離れますとお伝えしたら、じゃあライスシャワーしに行くよって言ってくださって。せっかくなら、挙式にも参列してくださいってお願いしました」
博英さんは披露宴で挨拶までして、鈴木家は帰りに三枝さんのお父さんにお蕎麦をごちそうになったという。「グーグー」は本当の親戚のお姉ちゃんになっていたようだ。
冒頭で引用した「2025年版観光白書」では、「新たなニーズを踏まえた「帰省に近い感覚の旅」のような潜在需要を顕在化させること」が重要だと書かれていた。ニーズと言ってしまうと距離を感じてしまうが、鈴木さん一家が20年前から続けている“帰省”のことかと思うと、楽しそうだなと思えた。故郷のようなホテルを見つけたい、と素直に思えた。
◆リゾナーレ八ヶ岳
住所:山梨県北杜市小淵沢町129-1
電話:050-3134-8093(リゾナーレ予約センター)
アクセス:中央自動車道「小淵沢I.C.」より約5分、JR中央本線「小淵沢駅」より無料送迎バス約5分













