
2026/11/06
長野県・野沢温泉といえば、白銀のスキー場や、湯煙が立ち上るレトロな外湯めぐりなど「冬」のイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、実は「秋」こそ、最もエモーショナルな体験ができる季節なのです。今回の旅のテーマは「水と食の循環」。豊かな雪解け水を蓄えるブナの原生林を歩き、その水が育んだキノコを自ら収穫し、同じ森の湧水で醸されたクラフトジンとともに味わい尽くす──。野沢温泉の自然と人が織りなす、極上のローカルガストロノミー体験をレポートします。
この記事の目次
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野沢には夏前にも来たばかり! それ以前にも何度か訪れたことがあり、野沢にハマりつつある私が紹介
旅の始まりは、温泉街から長坂ゴンドラに乗って一気に標高を上げた「上ノ平高原」から。すべての美味しさの「源流」へと足を踏み入れます。

ゴンドラを降りて少し歩くと、そこには美しい「ブナの原生林」が広がっていました。ふかふかの土の感触と、木漏れ日が心地よい森の中を散策しながら、この森が持つ壮大なストーリーに耳を傾けます。

日本有数の豪雪地帯である野沢温泉。上ノ平に広がるのは、樹齢200年〜300年を超える巨木がそびえる「極相林」です。ブナは1本で年間約8トンもの水を蓄えると言われ、まさに天然の「緑のダム」として機能しています。
冬に降り積もった雪は、春になると解けて、このブナの森の土へと染み込んでいきます。そして、約20年〜50年という長い歳月をかけて地層でろ過され、清らかな湧水となって麓の村へと湧き出していきます。
これから私たちが口にするお米や野菜、秋のキノコ、そして地酒も、すべてはこの森が蓄えた恵みの水から生まれています。自然の恵みから広がる“循環の始まり”を、全身で体感する旅となりました。

「キッチンセアボス」のレストランで提供される一部メニューを持ち込めます
森の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んでお腹が空いてきたところで、ランチタイムへ。今回は、ただのランチではありません。なんと、長坂ゴンドラのキャビンを貸し切った、その名も「ゴンドランチ」です!
広々とした最新のゴンドラキャビンに乗り込むと、そこはプライベートダイニングに早変わり。窓の向こうには、色づき始めた秋の高原のパノラマビューが広がります。
変わりゆく風景の中で食事を楽しめるなんて、珍しい体験ですよね。

野沢菜とナッツのピッツァ
テーブルに並ぶのは、レストラン「キッチンセアボス」で提供されるメニュー! 地元名物の野沢菜を贅沢に使った「野沢菜とナッツのピッツァ」や、「ガーリックステーキライス」、「セアボスバーガー」などさまざま! 他にもスイーツはもちろん、アルコールも持ち込めます。
今回は人気の「ガーリックステーキライス」と「セアボスバーガー」をそれぞれいただきました。
移りゆく絶景を眺めながら、野沢温泉ならではの食材を味わう。受け身であるはずの移動時間をアクティビティへと変貌させる、なんとも贅沢な空中ランチでした。
しかも、専用リストバンドを着ければ、何度でもゴンドラを乗り降りできるとのこと! 上ノ平駅のピクニックガーデンでのんびり過ごしたり、空中散歩を心ゆくまで堪能したり、ぜひ思い思いの時間をお楽しみください。
ゴンドラを下りた後は、午後一番のアクティビティへ。地元の山を知り尽くし、キノコ狩りの名(迷)人の秋彦さんとともに、秋の味覚をハントするキノコ狩り体験ツアーに出発です。

とにかく、この名人がおもしろい! いわゆる(愛情込めて)田舎のおっちゃんなのですが、「いまのは冗談? それとも本気? 」と聞き手を惑わせるトーク、トークの間、まったく乱れない表情など、秋彦名人のお人柄に参加者の皆さんはすっかりファンになっていました。
名人はとにかくいろんなことを教えてくれます。山の生態系や「どれが食べられて、どれが毒キノコなのか」といったディープな知識を教わりながら、森の奥へと進みます。
倒木や落ち葉の陰にひっそりと顔を出している天然キノコを見つけた瞬間の喜びは、まるで宝探しのよう! と言いたかったのですが……この日はすぐに見つかりました。
秋彦名人によると、「キノコは、コースの通り沿いを歩いていれば見つけられる」とのことでした。

夏前にタケノコ狩りでこのエリアに訪れたときは、両脇の竹やぶに入り、必死でタケノコを探しましたが、今回は簡単に見つかるので拍子抜けです。
最初にキノコを見つけてから、1分後

大量のキノコが!
この時点で持ってきた籠の約半分が埋まってしまうほど。

しかし、その後もただひたすらにキノコを採り続ける私たち。

ついに怒る
「さすがに取り過ぎじゃー! 」と、怒られる私たち。気づけばこんなに籠一杯でした。


歩き疲れたのか、話疲れたのか、少しの休憩の間に名人はウトウト中。横から見ると寝姿まで、立派なキノコのようです。さて、名人を起こし、原木栽培の場所へ。

原木栽培でもキノコが大切に育てられていて、散策中には見られなかった品種も。
気付きましたか⁉ 休憩後は籠を新たに、また収穫。

そして、また秋彦さんに「もうその辺にしとけ! 」と言われながらも、こっそり収穫する女性陣。

ブナの森の豊かな水と土壌が育てた、肉厚で香りの強い秋のキノコたち。「自分で採ったキノコが、夕食のメインになる」と思うと、収穫する手にも熱が入ります。
キノコ狩りをしているのが気になるのは毒キノコではないか? ということ。今回は名人が同行してくれているので、すぐに判別してくれますが、自分でも判別できるようになりたいところ。
そこで、キノコの写真をスマホで撮って、Googleで検索してみました。

名人が話してくれたことと一致している!
キノコをたくさん収穫しましたが、その裏では「それ食べたら病院行き! 」と何度も言われました。

このキノコも立派ですが、食べてはいけないそうです。
皆さんも収穫体験をするのであれば、必ず名人のような詳しい方に確認してから食べるようにしてください。(くれぐれもネットで調べたからOKとしないように! )

あれ?誰か毒キノコをこっそりと持ち帰っている……。まさか誰かに⁉
夕暮れ時、宿にチェックインして浴衣に着替えたら、いよいよ夜の宴へ。旅のクライマックスとなる今宵の会場は、村のカルチャー発信地でもあるスタイリッシュなカフェ&レストラン「七良兵衛珈琲」です。
昼間に歩いたブナの森、そこで生まれた水、そして自ら採ったキノコが、ひとつのテーブルの上で見事に交差します。

料理の主役は、今日私たちが収穫したキノコをふんだんに使った「秋彦さんのキノコ鍋」。 スープを一口飲むと、多種多様なキノコから溶け出した複雑で強烈な旨味が口いっぱいに広がります。自分たちで山に入って収穫したという背景があるからこそ、その味わいもひとしお。その美味しさに感動して3杯もいただいてしまいました。
そして、この絶品キノコ鍋に合わせるのは、「野沢温泉蒸留所」が造る世界水準のクラフトジンです。

野沢温泉蒸留所 クラフトジン
実はこのジン、私たちが午前中に歩いたブナの森から湧き出た一番きれいな湧水を使って仕込まれたもの。

森のボタニカルな香りと澄み切った湧水のクリアな味わいが、キノコ鍋の大地の滋味と見事にマッチします。これぞまさに、野沢温泉でしか味わえない唯一無二のローカルペアリング!
本日収穫したキノコをふんだんに使用した料理を中心に提供されます。
料理は、どれも美味しかったのですが、おすすめはこちら
記事としては、ここでキノコを使用した料理を紹介するのが定石なのでしょうが、お店自慢の「日本酒を使ったレーズンバター」でいきます。日本酒もレーズンもバターも、そのどれもが絶妙なバランスで香り、味を引き立て合う。ついつい多めにいただきたくなってしまうメニューで、お土産で購入できるなら即買いの逸品でした。おすすめです。
最高のメニューとお酒を楽しんでいる間でしたが、夜風が心地よい秋の路地裏へ。わざわざ宴を抜けた理由は開催されていた「秋の路地裏収穫祭」に。
地元の店舗などが出店し、旬の食材などを使用ながら渾身のメニューを振舞ってくれます。とはいえ、宴会中に駆けつけたので、到着も遅くてどこも完売状態!
地元の方や観光客であっという間に売れ切れのようです。
おすすめはCafe STEPさんの「秋の味覚たっぷりタコス、仕出しナチョス」。

秋の味覚たっぷりタコス、仕出しナチョス」
温かな提灯の灯りと村の賑わいを感じながら、満ち足りた気分で旅の1日目を終えました。
樹齢300年のブナの森散策から始まり、ゴンドランチ、キノコ狩り、そして夜のキノコ鍋とクラフトジンへ。
振り返ってみると、この日体験したすべての出来事は、「野沢温泉の豊かな水」という一本の線で美しく繋がっていました。自然がもたらす恵み(水)が循環し、私たちの食卓へと届く。その過程を五感すべてで味わうことこそが、この土地が持つ最高のガストロノミー体験です。
「スキーや冬の温泉」だけではない、野沢温泉のもう一つの顔。実り豊かな秋の循環を巡る旅へ、あなたも出かけてみませんか?
野沢温泉でおすすめの宿泊施設
旅館さかや
野沢温泉 河一屋旅館
ホテル ハウスサンアントン

日本屈指の火祭りの御神木伐り出しと麻釜のお菜洗い!秋の野沢温泉、伝統と野沢温泉村の冬支度
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長野県にある野沢温泉といえば、どんな印象がありますか? 外湯めぐりやレトロな温泉街、そしてスキー場……。全国屈指の人気観光地として有名ですが、実は今、お決まりの観光ルートを巡るだけではない「暮らすように滞在する旅」が注目を集めています。 今回、久しぶりに現地を訪れ、町の方に案内していただくと、そこにはこれまでとまったく違う野沢温泉の姿がありました。日常の延長線上にあるような、温かくて深い旅の体験レポートをお届けします。
記事を読む▸樹齢300年の森と水の循環。秋の野沢温泉キノコ狩りと美酒のローカルガストロノミー
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記事企画・監修:旅色編集部 ふかい
ライター:旅色編集部 ふかい