日本屈指の火祭りの御神木伐り出しと麻釜のお菜洗い!秋の野沢温泉、伝統と野沢温泉村の冬支度
ふかいふかい

長野県

職場・同僚 / 40代 / 訪れた時期:10月

2026/11/06

日本屈指の火祭りの御神木伐り出しと麻釜のお菜洗い!秋の野沢温泉、伝統と野沢温泉村の冬支度

「食と水の循環」を巡る体験に続き、2日目のテーマは「伝統と冬支度」。
豪雪地帯である野沢温泉村にとって、秋は単なる行楽シーズンではありません。雪に閉ざされる長く厳しい冬を生き抜くため、そして村の絆を確かめ合うためのエネルギーが凝縮される、一年で最も熱を帯びた季節です。
日本全国で認知度を誇る火祭りの神聖な準備の幕開けとなる「御神木伐り出し」から、普段は観光客が立ち入れない「麻釜(おがま)」での伝統的なお菜洗いまで。観光旅行では決して見ることのできない、野沢温泉の暮らしと信仰の核心に迫るドキュメンタリーレポートをお届けします。

野沢には夏前にも来たばかり! それ以前にも何度か訪れたことがあり、野沢にハマりつつある私が紹介

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    ふかい旅色編集部

    旅色のチーフコンシェルジュ。旅色内はもちろん、テレビ番組などでも旅の情報を発信中! 最近は毎週のように全国各地を飛び回り、旅しながら仕事をしています。旅先で感じた素直な感想を紹介します。

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1. 冬の奇祭は秋に始まる。神聖なる「御神木伐り出し」と厄年の男たち

朝の澄んだ冷気が漂う中、特別な許可をいただき、御神木が伐り出される神聖な山へと向かいました。ここは観光の場ではなく、村人たちの魂がぶつかり合う神事の現場です

「野沢温泉の道祖神祭り」とは

野沢温泉の道祖神祭り

野沢温泉の道祖神祭り

毎年1月15日に行われる道祖神祭りは、国の重要無形民俗文化財にも指定されている日本屈指の奇祭です。高さ10メートルを超える巨大な木造の社殿を組み上げ、最後はその社殿を炎で焼き尽くす壮大な神事。その社殿を支える大黒柱となる巨木(御神木)を山から伐り倒すのが、この秋の神事です。

今回目の当たりにした「御神木伐り出し」とは

冬の本番に向けて、秋の10月に行われる極めて重要な神事が「御神木伐り出し」です。 火祭りのシンボルである巨大社殿を支える主柱には、山に自生する樹齢を重ねた立派なブナの巨木が使われます。山を知り尽くした役員や厄年の男たちが山深くまで入り、山の神に安全と祭りの無事を祈る神事を執り行った上で、神聖な木を選び出して伐採します。冬の火祭りに向けた長く熱い準備は、すべてこの秋の伐り出しから本格的に動き出すのです。

命がけ!火の攻防戦。主役は「厄年の男たち」

この祭りの背景には、村の男たちに課せられた過酷な通過儀礼とドラマがあります。祭りを仕切るのは、村の42歳の男たちを筆頭とした三学年トモダチショウと数え年25歳の村の男たち。年代ごとに“つなぎ”の色が異なり、それぞれの年代で名称があります。

上で社殿を守る「42歳(大厄)」

社殿の最上部に登り、「道祖神の歌」を歌いながら守ります。

身を挺して火を防ぐ「25歳」

社殿の足元に陣取り、スクラムを組んで社殿を取り囲むところへ松明を持った村人たちが次々と本気で火を放ちに来ます。25歳の若者たちは、火の粉を浴びながら、素手や松の枝で松明を叩き落とし、決死の覚悟で社殿を死守します。

予定調和のない本気の攻防戦

多少の火傷を負いながら社殿を守り抜くことで「厄を払う」。まさに男たちの命がけの儀式なのです。

山に響く重低音、そして「桁(けた)わり」の職人技

神事を前に、山の中には張り詰めた緊張感が漂っていました。

必要な木は計5本。十分な長さでなるべく真っ直ぐな木を事前に選定し、当日その御神木の伐り出しを行っていきます。

男たちの威勢のいい掛け声とともに、樹齢を重ねた巨大なブナの木が地響きを立てて倒れる瞬間は、息をのむほどの大迫力。冬の決戦に向け、男たちの腹が決まった瞬間を目の当たりにしました。

2.伝統と文化の継承が野沢の紐帯を生む

今回のこの神事に初めて参加させていただきましたが、あっという間に1本目が倒れたと思ったら、すぐ近くで今度は2本目も倒れていきます。
すごい手際の良さと連携。と感心していましたが、よく見てみるとそうじゃない人たちも。

それは25歳の年代たちです。この年代は神事に参加するのも初めて。当然子供のころから見ていた光景だとしても、実際に参加するのは初めてです。
最中では少し戸惑う場面も見られましたが、年上の年代が力強くサポートしてくれるのがこの神事の素晴らしいところです。

温かく見守り、時に力強くサポートする大きな背中がかっこいい

温かく見守り、時に力強くサポートする大きな背中がかっこいい

「俺らも同じようにそうしてもらったから。」と背中で熱く、優しく語ってくれました。

野沢コミュニティの強さと絆の深さを見た

こうした厳格な神事に一緒に取り組むことで、同年代はもちろんのこと、近い世代、離れた世代関係なく、強い繋がりと絆が生まれていきます。
離れて暮らしていても、地元の行事には欠かさず参加する人も多く、 他の町では見られない横と縦の繋がりが結ばれていきます。野沢の人たちの仲の良さは、小さな町だからということだけではなく、人と人とを繋ぐ伝統行事があるからこそだと、気付いた瞬間でもありました。

伐り出すだけでなく、「桁(けた)わり作業」まで

桁(けた)わり作業

桁(けた)わり作業

桁(けた)わり作業

桁(けた)わり作業

午後すべての御神木が伐り出されると、役場で「桁(けた)わり作業」も行われます。 驚くべきことに、あの巨大な社殿は釘やボルトを一本も使わず、木を組み縄で縛り、建てられます。職人たちが社殿の材料に墨を打ち、手作業で木を割り、加工していく伝統の技。世代を超えて技と魂が受け継がれている現場に、深いリスペクトの念が湧き上がりました。

3. 雪国の命を繋ぐ冬の主役!中尾畑で「野沢菜」の間引き収穫体験

山での男たちの熱量に圧倒された後は、村の穏やかな、けれど大切なひとつの冬支度へ。広大な野沢菜畑が広がる「中尾畑」へと足を運びました。

間引きを行うことで更なる立派な野沢菜へ

目の前に広がるのは、みずみずしい緑の絨毯。約30cmまで育った野沢菜が並んでいます。

地元の方にどういったものを間引けばよいのかを教わり、さっそく体験。収穫直後は野沢菜特有の爽やかな青い香りがふわっと立ち上ります。

豪雪を耐え抜くための「命の保存食」

数メートルもの雪に埋もれる野沢温泉の冬。かつて流通が発達していなかった時代、青菜が採れない冬の数ヶ月間、ビタミンやミネラルを補給できる野沢菜漬けは、まさに村人の命を繋ぐ貴重な保存食でした。「冬を迎える前に、畑に出て野沢菜を収穫し、樽いっぱいに漬け込む」。その何百年と続いてきた雪国の営みを、自らの手で追体験する時間となりました。

4. 暮らしの核心に触れる。天然記念物「麻釜」での特別なお菜洗い体験

収穫した大量の野沢菜を車に積み、向かったのは温泉街の中心にある「麻釜(おがま)」。村の天然記念物であり、今も村人の日常に息づく聖地です。

立ち上る湯気の中、聖域へ足を踏み入れる

麻釜

麻釜

麻釜は場所にもよりますが、90度近い高温泉が湧き出ていて、普段は地元住民以外立ち入り禁止となっています。

今回は特別に許可をいただき、そこにお邪魔させていただきましたが、そこには、長靴やエプロンを身につけた地元のお母ちゃんたちの姿も。大きな湯だまりに浸かり、その後、湧き水で次々と野菜などを洗っています。まさに町全体で共有する台所です。

お母ちゃんに教わる、究極のエコと生活の知恵

畑から運ばれてきた野沢菜を、ぬるめの温泉でジャブジャブと洗う「お菜洗い」。
「根元の土はこうやって指で落とすんだよ」「温泉で洗うと、アクが抜けて葉が柔らかくなって、色も鮮やかに漬かるんだよ」とお母ちゃんたち。手際よく泥を落とす熟練の手さばきに圧倒されつつ、隣で一緒に手を動かします。
冷たい土のついた野菜が、温泉によって生き生きと息を吹き返す。温泉を観光資源としてだけでなく、生活の熱源として無駄なく使い切る。これこそが、野沢温泉の人々が築き上げてきた究極の循環型ライフスタイルなのだと肌で感じました。

旅の思い出を自宅へ。「時漬け体験」

お菜洗い後は観光案内所の会議室へ移動し、麻釜で洗った野沢菜を使って、自分だけの「時漬け作り」に挑戦です。

野沢菜を均等な長さに切り、塩昆布やタカノツメなどの調味料とともによく揉み込んで袋に詰めていきます。重石をして味が馴染んでいく工程そのものを自宅へお持ち帰り。旅が終わった後も、自宅の食卓で野沢温泉の空気を味わえる、何より贅沢なお土産が完成しました。

2日後くらいにいただくのがおすすめのようです

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間引きした野沢菜を利用していますので、その点も素晴らしい体験でした。

5. 畑で味わう新米ランチと、自宅へ持ち帰る「時漬け体験」

心地よい疲労感とともに、作業を終えて待っていたのはご褒美のようなランチタイムです。

黄金色の畑でいただく、青空ローカルランチ

秋晴れの空の下、畑の真ん中で広げられたのは、この秋収穫されたばかりのピカピカの新米のおにぎりと、そして野沢温泉で獲れた新鮮な食材たち。
噛むほどに甘い新米と、シャキシャキとした食感の野菜。麻釜の湯気と土の香りを思い出せる最高のシチュエーションで味わう一口は、どんなご馳走よりも身体に染み渡る美味しさでした。

厳しくも温かい。冬を迎える野沢温泉村の営み

火祭りのために山へ入り、命がけで巨木を伐り倒す男たちの気迫。 麻釜の湯気の中で、笑い声を響かせながら家族のために野沢菜を洗うお母ちゃんたちの温もり。
この2日間で目にしたのは、外湯に入って温泉街をそぞろ歩くだけでは決して見ることのできない、「自然の厳しさと共生し、互いを支え合って生きる村の本当の姿」でした。
便利さが追求される現代において、人と人が固い絆で結ばれ、土地の恵みと伝統を真っ直ぐに受け継いでいく野沢温泉の人々の営み。その圧倒的な熱量に触れたいま、一面の銀世界に包まれる真冬の野沢温泉、そしてあの火祭りの夜に、どうしてもまた帰りたくなっています。
そんな私は少しでも「野沢人」になりつつあるのかな? と、ちょっと嬉しい気持ちで、この記事を書き終えました。

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