2023/08/31
毎年5月11日から10月15日まで長良川で行われる「小瀬鵜飼(おぜうかい)」は、千有余年の歴史をもち、古くから伝承され続けてきた日本の伝統漁法です。その魅力は、素朴な情緒。鵜と漁師の共演が、幻想的な雰囲気を醸し出します。今回、岐阜県関市で「小瀬鵜飼」を見学したので、その様子を紹介します。
「鵜飼」は、訓練された鵜を使って鮎を捕る漁法の一つ。日本では古くから行われており、朝廷や幕府などの保護を受けてきた歴史があります。「小瀬鵜飼」の最大の醍醐味は、鵜舟を観覧船からつかず離れずの距離感で鑑賞できる「狩り下り」。漆黒の闇の中から鵜舟が篝火(かがりび)をたきながら「ホウ、ホウ」という掛け声と共にやってきます。周りが明るくなるのと同時に、対比で闇が深くなり、町中の鵜飼では味わえない幽玄な世界に。
現在は小瀬鵜飼の3人と、岐阜市の長良川鵜飼6人、計9人の鵜匠のみが「宮内庁式部職(くないちょうしきぶしょく)鵜匠」の名を受け、「御料鵜飼(ごりょううかい)」で捕れた鮎を皇室に納めています。9人の鵜匠のうちの一人、足立陽一郎さんが自宅で営む風情ある古民家「鵜の家 足立」は、築300余年の歴史があり、2006年に関市の有形文化財に登録されました。
宿泊したのは「関観光ホテル」。乗船場までは長良川沿いを歩きながら移動します。川のせせらぎを聞きながらの散歩は普段の生活では味わえないので、いい息抜きになりました。
10分程歩いて乗船場に到着。
乗船時間がくるまでは、川の流れる音を聞きながら待ちます。騒音がなく、空気もきれいで、まさに癒やし時間。自然と大きな深呼吸や伸びをするなど、リフレッシュモードに突入していました。
だんだんと日が暮れ、観覧船に乗って少し上流の長良川の川原までゆっくり移動。船の中には優しい風が吹いてきて、ひんやりと心地よいです。
鵜飼が始まる前に、鵜匠が観覧船のすぐ近くまで来て鵜飼の説明をしてくれます。「鵜は鮎を尻尾から飲み込むことはない」「野生のウミウは篝火を恐れて慣れるのに時間がかかる」など、鵜飼に興味が湧く話を聞かせていただきました。
鵜はおなかいっぱいの状態だと魚を追わなくなるため、シーズン中は朝から何も食べず空腹で漁にいきます。 日々おなかいっぱいになる仕事をしていると、たまには仕事をしなくてもエサをもらえる! というずる賢い鵜もいるそう(笑)。そんなときはちょっとエサを少なめにする、といったこともしているようです。
野生の鵜を購入するときは雄・雌関係なく2羽ずつ買い、ペアとして生活させます。この ペアのことを「カタライ」と言うのだとか。「カタライ」は終生変わらず、お互い死ぬまで相方として生きていきます。たまに、鵜飼中に逃げる鵜がいるそうですが、 「カタライ」と一緒に近づいていくと、戻ってくることもある、と話されていました。中には先に船が停まるところで待っている鵜もいる、とのこと。賢さが見られますね。
そんな話を聞いていると辺りは真っ暗。いよいよ鵜飼がスタートです!
川上から「ホウ、ホウ」という掛け声と共に、篝火に照らされながら鵜舟が下ってきました。 観覧船と平行して、鵜舟が漁を行う「狩り下り」の開始です。闇を切り裂くように燃える篝火の熱さを感じられるほどの距離で鵜匠たちの技が披露され、触れそうなところで川へ飛び込む勇ましい鵜たちが目に入ってきます。
そしてついに、鮎を捕まえた鵜の姿が見られました!! 感動のあまり「おぉぉ!!」と小さく拍手をしている自分がいました。篝火の明かりだけの世界は、とても情緒があって幻想的で、だからこそ鵜飼の世界にどっぷりつかれるんだと改めて思いました。
船を降りると、後片付けの様子を見ることができます。船に引き上げられても川に戻っていく鵜たちはちょっとした反抗期のようで、とてもかわいらしかったです。 人なれしているのか、近くに寄ってきてくれることもあるので、愛らしい姿がご覧になれますよ。
解散後は、間近で鵜の餌やりの様子を見学しました。これは鵜匠が「鵜匠や鵜のバックヤードを見て、もっと多くのことを知って、楽しんでもらいたい!」という思いから、乗船したお客さんを中心に招き入れているため。水浴びをしたり、濡れた羽を乾かすためバサバサしていたり、鵜たちの自由な姿がかわいらしいです(バックヤードの見学は不定期開催)。
一度は見たいと思っていた鵜飼。一千年余り続く歴史的ワンシーンが目の前で繰り広げられるぜいたくとすばらしさは、見に行く価値あり! ぜひ、「小瀬鵜飼」の世界を体感してみてください!
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